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コラム

素敵な組織 その1

2022年12月13日

テーマ:気づきの窓

コラムカテゴリ:ビジネス

 今まで仕事で数多くの企業と関わってきて、素晴らしい組織には二つの共通項があることが分かりました。一つは「しっかりした理念がある」、もう一つは「優れた仕組みがある」です。
 この二つを別の言葉で言い換えると次の四つに集約されます。

  1. 「存在価値がはっきりしている」
  2. 「従業員がイキイキしている」
  3. 「お客様が喜んでいる」
  4. 「成果を出している」です。

 ①の「存在価値がはっきりしている」という、何かあやふやなものが「理念」です。
 そして「従業員が生き生き…」「お客様が喜んで…」は仕組みで出来ます。それが相まって「成果」に繋がります。

 今回は一つ目の「理念」についてです。「理念」は、「ミッション(使命)」とか「ビジョン(将来像)」と言い換えができます。個人に置き換えると「志」とか「夢」です。
 皆さんが所属している組織の存在価値、つまり「理念」はしっかり明文化されていますか?「うちはこういうことを大切にしている」、それが「働く意味」になります。

 こんな有名なたとえ話があります。ヨーロッパの教会を建てる時の、石を削る職人の話です。ある人が歩いていると職人が石を削っていました。
 「何をしているんですか?」と聞くと、「石を削っているんだ。硬くて切れなくて何とかしてほしいよ、この石」と悪態をつく職人でした。
 しばらく行くとまた石削りの職人がいました。「何をしているんですか?」
 「町に教会を造るというから削っているんだ。大変だけど仕事だから仕方がないよ」と言う職人でした。
 そして、また歩いていると妙に楽しそうに仕事をしている職人がいました。「何をしているんですか?」
 「この町に教会が出来るんだ。僕はその石を削っている。教会が出来ると町の人の心の安らぎになる。そう思うとやり甲斐が出てくる。今きれいに削って磨いている。どうですか?これ」と言う。
 皆さん同じ石削りの職人です。どう捉えるかによってこんなに働き方が違ってきます。

 自動車教習所にはどんなイメージがありますか?「厳しい鬼教官がいる」「落とさないで早く卒業させてほしいところ」、かつてはこんなイメージだと思います。
 東京に武蔵境自動車教習所という教習所があります。そこの社長さんが「今、教習所は斜陽産業です」とおっしゃっていました。エリアの中で1校か2校毎年廃校していく、そんな業界だそうです。若者が減っていることもあるし、都会になればなるほど車離れもあります。
 それで武蔵境自動車教習所は「このままではマズい」ということで、理念というか考え方を変えました。「教習所は教育業ではなくサービス業である」としたんです。
 以前は、車に乗って待っているところに教官が乗ってきて「君、まだ卒業できないのか」「すみません、頑張ります」みたいな、そんな感じで教習が始まっていました。
 これがサービス業になるとどうなるか。きれいなロビーで待っていると教官が来ます。
 「5番でご予約の加藤様」
 「はい」
 「加藤様ですか。本日インストラクターを担当します田中です。それではまいりましょう」
 全然違います。理念が変わるとこれだけ現場が変わります。ほかにも待ち時間にドリンクが出てきたり、女性はネイルが無料でできたりします。「教えてやる」とふんぞり返っていては、とてもたどり着かない境地です。これで武蔵境自動車教習所はどんどんV字回復をしていきました。

 一方、南福岡自動車学校の場合は「学校」ということを再定義しました。
 皆さんも学生時代、楽しい思い出があると思います。でも自動車学校には普通、楽しい思い出はありません。「それじゃいけない」と考えました。
 生徒の多くは若者ですから、「運転技術以外にも人生の為になることを教えて楽しい学校にしよう」と考え、「感性あふれる人をつくる」をビジョンにしました。さらに、それを具体化するために考えたのが「愛あるおせっかい」でした。そして自動車学校に通うことが楽しくなるためのいろんな工夫をしたのです。
 たとえば、学科の講習は大事なことですが面白くありません。その授業をゲーム感覚で学べるようにしたり、クイズ形式にしたりしました。
 それから普通、学科はみんなバラバラで受講します。横のつながりはゼロです。でも、「学校って友だちができるのが普通だよね」ということでグループワークを取り入れました。そのことで生徒同士が仲良くなりました。
 卒業式では、突然の事故で母親を亡くした女性の物語のビデオを作って見せました。
 それを見ると、毎日いてくれるお母さんが「当たり前じゃない」と思えて、心から感謝の気持ちが湧いてきます。生徒の多くが親から自動車学校の料金を出してもらっています。そのビデオを見るとそのことも「当たり前じゃない」と気付いて、結構皆さん涙するそうです。
 その後、親に手紙を書く時間もあります。その手紙を後でスタッフが投函します。
 みんなすがすがしい気持ちで卒業していきます。まさに「感性あふれる人」をつくっています。その結果、卒業生が「あの自動車学校は最高だ」と後輩に伝えます。そうやって南福岡自動車学校もV字回復をしていきました。(続く)

この記事を書いたプロ

下裏祐司

事業と社員の成長を導く企業活性化コンサルティングのプロ

下裏祐司(株式会社飛泉)

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