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沖田将人

動物診療のプロ

沖田将人(おきだまさと) / 獣医師

アレス動物医療センター

コラム

春は散歩もご用心

2014年4月28日 公開 / 2015年8月13日更新

テーマ:動物の病気

コラムカテゴリ:医療・病院

 ゴールデンウィークが近づいてくると、増えてくる病気があります。
 それは農薬中毒。

 もちろん地域にもよるのでしょうが、北陸などはゴールデンウィーク前後に田畑の作業が本格化してくるのか、除草剤や殺鼠剤、殺虫剤などの使用頻度が増してくるのかもしれません。

 特に怖いのが殺鼠剤です。
そもそも殺鼠剤はネズミ(哺乳類)を殺すための薬ですから、犬が食べれば当たり前のように命に関わります。
 直接殺鼠剤を食べなくとも、殺鼠剤を食べたネズミやもぐらを食べて、猫が中毒を起こすこともあります。

 殺鼠剤にも色々種類がありますが、富山県でよく使われているのはワルファリンという薬とタリウムという薬です。

 ワルファリンはピンク色など派手な色の商品が多く、飼い主さんも犬がそれを飲み込んだことに気づきやすいという利点があります。
また胃洗浄、点滴、投薬などの処置が早ければ助けられることが多いです。

 ただ気をつけなければいけないのは、たとえワルファリンでも飲み込んでから1時間以内でないと、胃洗浄などの処置が間に合わなくなり、何の症状もないとただ様子を見ていると、症状が出始めた頃にはもう手遅れ、ということもあります。
 中毒は必ずしも食べてすぐ症状が出るわけではなく、症状が出てから助けるのでは遅いのです。
けして様子を見てはいけません。
 すぐに動物病院に連れて行ってあげる必要があります。

 それでもワルファリンに関しては、飼い主さんが直ぐに病院に連れてきてくれれば、助けてあげられることのほうが多いのですが(よほど大量に飲み込まない限りは)、もう一つのタリウムは非常に強烈です。

 タリウムは灰色から黒の砂利状の形状で、一見すると毒物に見えません。
 また、食べてから症状が出るのに2,3日かかり、様子を見てしまう飼い主さんが非常に多いです。
 致死量も非常に低く【少量で死に至る】、人間でも1g程度食べればもうほぼ助けるのは困難という非常に危険な薬です。
 ですから小型犬などはほんの一舐めでもう危険な量なのです。

 恥ずかしながら、私はこのタリウム中毒を発症した犬、猫を今までただの一度も助けられたことがありません。
 ほんとうに強い薬なのです。

 万一飲み込んでしまったら、すぐ動物病院へ、と言いたいところですが、それでも助けられるかわからないくらい強い毒物です。
 散歩には良いシーズンなのでしょうが、今の時期、できれば田畑のそばに散歩に行くのは極力避け、ワンちゃんオッケーの公園などに連れ出してあげたほうが安全なのかもしれませんね。

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沖田将人

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沖田将人(アレス動物医療センター)

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