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買主から見た決済場面・ある事例

2014年7月3日 公開 / 2014年7月31日更新

コラムカテゴリ:住宅・建物


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任意売却の決済は、一般の不動産売買と異なり売主と買主だけでなく抵当権者、差押権者等の方たちも同席します。また抵当権者等が複数の場合は、大勢の方々の見守るなかでの決済場面となることもあります。

それぞれの借金返済額及び経費につき債権者から予め承諾された配分内訳表に従って、売買代金のなかからそれぞれの債権者に支払い、引換えに抵当権者等からこれも予め司法書士においてチェック済みの担保抹消登記書類一式又は差押解除証書等の原本を売主(債務者)を経由し司法書士が受領するという方法を取ります。

買主が業者ならば既に熟知しているので問題は生じませんが、始めて大きな買物をされるエンドユーザーの買主さんの立場に立つと、大勢の関係者がいる決済現場に驚き不安を感じられる方も多々おられます。          従って買主側仲介業者としては買主に対し事前説明を行い、しっかりと理解させておくことが最も大切なことなのです。

先日、ある地方の物件売買でこのようなことがありました。

地方のためか、買主側の地元仲介業者さんは不慣れで、当該業者さんは売主(債務者)の個人情報保護を優先に考えられ、買主さんに対し充分な説明がなされていませんでした。また私としても遠方であるので当該業者と充分なコミュニケーションもできず、そのまま買主への融資先である中央労働金庫での決済場面に臨んでしまいました。

権利者は2者(国税と公庫)でありましたが、買主は売主以外の方も同席する場面に戸惑われたうえに、また私の思い込みから事前確認を怠ったために労働金庫が税納付機関でないことをその場で知り、急遽近くの銀行に代金の一部を現金で持ち運び納付すると言う本来やってはいけない行為もあって買主さんの不安は極に達してしまいました。

当然現金の移動には私以外に売主本人・買主側業者にも同行してもらいました。私としては買主さんの気持を安心させる意味合いで買主側業者に同行を願ったつもりでしたが、結果、買主さんを一人残し孤立させたこともいけなっかたようです。

一方、税務署は特別徴収課長立会いであったにも拘らず、同課長とは今日まで数度面談し、電話で何度もやり取りしていたにも拘らず、労金納付の不可のことを知らされていませんでした。またその場におられるので現金納付をお願いしましたが認めらない上に、現金移動にも同行しないという状況でした。仮に現金移動中に事故があったとしてもその責任は全て売主(納税者・実質私)にあるという同課長の姿勢は正に税務署マニュアル通りで、その立場を貫き通されたわけです。

「完全なる所有権の移転」を遂行すべく努力し何とか決済を終わらせ肩の荷を下ろしましたが、その場の咄嗟の判断とはいえ、現金移動という行ってはいけない行為を行い悔いが残りました。

また買主さんから見れば、自分のお金があちこちに振り回される状況に、不安を感じられることは当然であり、もっと慎重であるべきであったと、改めて反省と心構えにつき考えさせられました。

私として、決済終了後、売主、買主側業者にも同行願い、買主のご自宅を訪問、説明とお詫びを申し上げたことは言うまでもありません。本来買主さんにとって自宅購入は希望に満ち溢れたものであるべきなのに、嫌な想いを与え、その回復を願い取った行動でした。

一方売主さんにとっても、自らが窮地に陥った結果の望まない売却であったとしても買主が大切に使って下さる相手であれば少しは心が和みます。この両者の気持こそが大切であると私は思っています。

売主(債務者)視点に立つ行動を旨とする私として、今回は本当に反省点多く、買主心理に対する配慮を怠らないよう行動することの重要性を思い知らされた任意売却の現場でした。

記:大森孝成 

この記事を書いたプロ

大森孝成

債務者を救う事業再生・任意売却アドバイザー

大森孝成(合資会社大誠企画)

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