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倒産&破産を意識したら  その要領要点②

2014年6月28日 公開 / 2014年7月31日更新

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 退職 手続き退職金制度 導入


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私は、再生叶わず倒産&破産の意思を固められた企業につき弁護士に引継ぐまでのお手伝い(お世話係)を行うことが多々ありますので、多少弁護士について触れてみたいと思います。

皆同じ人間ですので、弁護士の先生方にも色々な方がおられます。失礼な表現で言いますと「ピンキリ」です。 「もちろん私たちコンサルタントも同じですのでご用心を!

先生方には法人の民事再生法・会社更生法等の大きな事案に取組む高名な先生、種々の手法(企業分割・事業譲渡等)と法律を駆使し企業再生を真剣に取り組んでいる先生、個人や中小企業の破産や個人版民事再生に特化されている先生、個人の消費者金融等の過払い返還請求・・・等々、特に区分されているわけではありませんが、ある程度専門化されています。また昨今ナンデモゴザレ式で多数の弁護士さんを抱えた総合法律事務所も多く見られます。

実際面ではその先生により異なります。一般人には全く理解できない法律用語でしゃべりまくる先生、丁寧な言い回しで理解させようと努められる先生・・・色々な先生がおられます。

私は複数の弁護士さんとお付合いさせて頂いておりますが、私が考える理想的な弁護士像は、法の番人みたいな偉ぶった(威張った)先生は御免です。人間性があり且つ事務的能力に長けた先生、物事の法的ポイントを即座に理解し淡々と処理して下さる先生が大好きです。また依頼者の切実な問題に「聞かなかった、知らなかったことにする。」として依頼者に阿吽の対応をしてくれるような先生が好きです。もちろん弁護士費用が安ければもっと最高です。

依頼者は双方互いにリスクを負った商行為に失敗しただけのことですので、負けは負けとして決して卑屈にならず堂々と問題解決に立ち向かってください。法律に疎いから弁護士に依頼し「弁護士費用を払った依頼者だ」という主体的な姿勢が肝要だと考えます。また弁護士さんはやはり一応は法の番人ですので、その立場もよく理解したうえで使い別けて付き合う必要があります。

以上のように生意気な弁護士談等をしていると、暇でつまらない弁護士に怒られますので、この辺で止めときます。

ー付記ー 債権者側からの見方:債務者が会社を単に投げ出す(事実上の倒産)のでなく、法的手段で確実に処理してくれることは債権者にとって有難いことなのです。何故なら債権者は税法上、堂々と貸倒損金として計上ができことにより、利益会社は法人税(約半分近く)が助かり、赤字会社は青色損金として将来(7年)の利益に備えることができるからです。

さて本題に入ります。(資産が清算経費や労務債権にも満たないギリギリ流動資産状況の場合)

=倒産&破産を決断し弁護士に依頼する時には=

1、会社の全体像を弁護士さんにまず理解させること

口頭だけでなく根拠(書類等・・)を示し説明することが肝要! 当然ですが弁護士さんは当事者の内容を何も知らない訳ですので、物事を急ぎ進めさせるためには如何に早く全体像を理解させるかに掛っています。

何故ならばその全体像を理解した上で、弁護士は全債権者並びに全売掛先顧客個々に対して内容証明で「受任通知」を、債権者等には更に+「債権届け」を送付します。一方で当該会社の事務所等には貼紙をして自分が債務者の代理人であることを表明します。

この段階で債務者に対する督促等の電話、訪問等の嫌がらせ(債務者にとっては嫌がらせと思うが、債権者は合非合法に拘わらず真剣です。 取立て商売の人は論外)は、原則として一切とまります。

また、売掛顧客についても自分の売掛金の差押え又は債権譲渡先等からの集金があっても巻込まれることを恐れ供託又は弁護士に相談してくれる方が多いので、一部債権者が利する偏頗弁済(偏った弁済)を防止することができるのです。

2、事前に根拠となる書類の作成

この作業が意外に大変なのです。

日頃から業務を仕切られ内容の全てを熟知されている社長さんならば何ら問題がありません。しかし他取締役や従業員に任せ切りの社長さんは大変です。個々の実務が分からない、また内々に打ち明け頼れる片腕がいないような場合にあっては、社長ご自身がやらなければならない幕引き最後の仕事になります。帳簿や書類の保管が分からない、コンピュータ管理では担当者のセキュリティが掛っていたり、開き方が分からなかったり、色々ですが、普段したことのないことを行うのですから戸惑いの連続です。

何せ、「社長と従業員であった筈の関係」が、突然「労働債権者と債務者の関係」に成り代わる訳ですので! 事前に悟られてはならないのです。

Ⅹdayを定めたら、その間に担当者の事務作業を盗み取りし全体の流れや書類の保管場所を把握したり・・・また金銭消費貸借契約書はどこ? リース契約書・売買契約書等の債権債務に関する契約書は? 賃金台帳や従業員名簿はどこにあるのか? 中には就業規則を知らない社長さんすらおられます。下準備としてやることは色々多くあります。そして、従業員退社後に本格的作業に入ることになります。

弁護士さんが「受任通知」をより早く発送できるかどうかはこれらの事前準備に掛っています。  



以下弁護士依頼時、当座必要な書類を列記します。

◆債権者一覧表(当該会社が有している債務明細の一覧 =科目毎で区分も可=)

債権者一覧表とは、直近のある時点を定め、その時点での債権者の社名・住所・電話番号・債権額を一覧にしたものです。

実際面では、社名(後カブか前カブか、略してないか等を注意)・住所・電話番号のミス記載、債権者のモレが多くあります。ミスやモレがあると弁護士事務所で作り直すことになり受任通知発送が遅れる原因となります。

納品書、請求書、契約書等をチェックした上で確実な書類の作成が肝要です。

①支払手形・買掛金・未払金等の一覧表

 会社によりソレゾレですが、100件位の債権者の確認作業になります。丁寧に作成されるように!

②借入金・リースの一覧表

 まず連帯保証人をチェック! 

社歴ある企業ですと過去の契約内容を忘れている、契約書が手元にない、無くしていることも多々あります。(この場合は相手金融機関に悟られぬ段階、悟られぬ様に保証の事実関係を要確認) また保証人ご自身が保証したこと自体を忘れている、相続したこと忘れている等、色々あります。

 金銭消費貸借契約書、リース契約書をよく確認し事実関係の把握が重要です。

 担保不動産が個人所有の場合、会社経営に関わっていない所有者も連帯保証人(金融機関の契約書自体に担保提供者&連帯保証人をプリントされているので遂サイン)として名前を連ねているケースがほとんどです。更に相続後の不動産を担保提供しているケースでは共有者(持ち分所有者・ex兄弟姉妹等・・・)全員が署名押印している可能性が大きいのです。この場合本人に知らされず父親等が代筆していることもありますので、筆跡確認も大事な要素となります。何故ならば代筆で、且つ本人に保証の自覚がなければ無効主張が可能なので。

※付記 保証には物上保証・保証・連帯保証があります。物上保証は提供した担保不動産の範囲内のみの保証ですが、連帯保証は債務者(ex会社)の債務全部を保証することになります。また保証と連帯保証の違いは保証は債務者の債務が確定した後の残債務保証ですが、連帯保証の場合は債務者と同列で、債権者は債務者&連帯保証人のどちらからも全部弁済を受けることができるのです。

注)これから自己不動産を担保提供される方は絶対に書式に勝手にプリントされている連帯保証人を物上保証人に書換えてサインすることが肝要です。また現在金融機関には本人確認が法的に義務付けられているので、代筆等のいい加減な契約は規制されている。

3、租税債務(消費税・労働保険・社会保険・固定資産税等の滞納金)の一覧表

 租税債務は優先債権ですので、この数字の把握が重要!

 ギリギリ資産のときは、優先度において同じの清算経費や労働債権(特に予告手当)において売掛金をどちらが先に押さえるかが大きなポイントになります。売掛金の明細を一早く知っているのは当然、社長さんです。 前月記載のブログの要点を確認の上、次善策をとって下さい。

4、労働債権の一覧表

 前月ブログで記載の通り未払賃金&退職金約80%は労働者健康福祉機構の立替制度で従業員個々に支払われますが予告手当が対象外ですので、予告手当(賃金30日分)につき売掛金から確保させることが重要!

なお、解雇通達後、従業員個々に対して雇用保険取得のため必要な「雇用被保険者離職証明書」の交付を要しますが、この段階では労働債権者と言えども自分らの問題ですので元従業員の協力のもとに速やかに作成して下さい。

5、売掛債権の一覧表

 この表についても、社名・住所・電話番号・金額のミス記載を注意すること言うまでもありませんが、特に締め日、支払い日、現金か振込みか、振込みの場合は振込先の金融機関がどこなのかを把握することが重要です!

そのポイントと見方は前月記載のブログに記載した通りです。

いずれにしてもギリギリ資産の場合は売掛金が租税債務と取り合いになりますので、充分策を練ってことに対処することが、重要要件となります。そして倒産時は事前に社長ご自身が売掛回収見込額と清算費用や労働債権(特に予告手当)の数字の目安をつけ行動することが最も重要なことになります。





ー付記ー(私のこと) 24年前の昭和60年11月2日私は会社を倒産させました。社員の有志が社員主導による再建を希望したので、私はこの計画が成立するように法的措置ではない任意での整理を考えました。社員が依頼した一部有力債権者の協力を側面的にお願いしたりしましたが、その行為がかえって他の債権者の誤解を招き不成立となりました。よって咄嗟の判断で自己破産を決断しました。しかしこの時間差のために弁護士さん提出の破産資料の作成が後手に回り一時会社は無法地帯と化しました。 勿論近くの交番に身辺保護を願い出ましたが民事不介入の原則のもと無駄でした。当時はまだ暴力団排除の法律が無いときの話です。

仕方なく夜中、弁護士了解の下、正にコソ泥(笑)のように事務所内をウロウロ!屋探して必要書類を小ホテルの一室(借りた隠れ家)へ持ち出し約1週間、雲隠れ状態で作業しました。私を心配し力を貸してくれた経理部長(恩人! 今でもお付き合いしている)のお陰でどうにかやり遂げることができました。この隠れ屋で作成し投函した「詫び状」は私の戒めとして今でも大切に保管しています。

記:大森孝成

この記事を書いたプロ

大森孝成

債務者を救う事業再生・任意売却アドバイザー

大森孝成(合資会社大誠企画)

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