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コラム

裁判官の劣化

2016年1月7日

コラムカテゴリ:法律関連

 年末年始に本を読んでいると、弁護士が書いた本に裁判官の劣化が著しいというくだりがあった。
 内容的には、交通事故についての記載であった。劣化(計算間違いや既払い金の控除についての基本的理念も理解していない)もそうであるが、保険会社寄り、自賠責の判断寄りの和解案や判決を書く裁判官が多いという記載であった。

 保険会社の方は資金が潤沢であり、一審で敗訴して控訴しなければと思った事件では、さらに医師の意見書を追加することも可能であるし、支払う金額が少額であれば自社が潤うから、力を入れて控訴理由を書いてくることになる。
 そうすると、一審判決で保険会社を真正面から敗訴させる判決を書くと、控訴審で覆る可能性があるため、勢い抑えた判決になりがちであるというのも一般論としても分かるところである。

 過去私が担当してきた交通事故被害案件では、保険会社の主張を蹴飛ばして、私の主張に沿った判決が出されることが割合多かったが、最近ではそうでもないこともまた事実である。
 人の身体の構造や、法的な物の考え方が変わった訳ではないことから、これは担当する裁判官の事件の見方によると思っている。
 これを劣化というのか何というのか分からないが、過去の私が勝訴した判決でも保険会社が控訴してきたかというと、必ずしもそうでもない。
 被害者からすれば、交通事故は通常一回切りである上、場合によれば被害は未来永劫続くこともあるのであるから、裁判官の当たりが悪かったでは済まされないと思っている。

 素因減額という、被害者の身体に疾患があり、それによって被害が拡大した場合に請求額が減らされるという概念があるのだが、それについても疾患とはいえないようなものについて、安易な素因減額がされるケースも散見されるし、自賠責の判断を覆すというケースも過去と比較するとかなり減った印象である。
 そして、控訴したとしても、控訴審の裁判官が必ずしもいい裁判官であるとは限らないから、被害者は泣く泣く和解に応じることも多いのである。
 私が読んだ本でも同様のことがか書かれていた。

 物事はどちらから光を当てるかで変わってくるが、被害者に対して非常に冷たいというか、保険会社寄りの裁判官に当たると、被害者は一生泣いて暮らすこともあり得るということを考えてもらいたいと思うのである(もちろん中には過剰な請求をしている悪質被害者がいることは否定しないが・・・)。

この記事を書いたプロ

中隆志

被害者救済に取り組む法律のプロ

中隆志(中隆志法律事務所)

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