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自主回収の報告義務化による変化と 正しい食品表示をするための取り組み (1)

2023年8月28日

テーマ:HACCP

コラムカテゴリ:ビジネス

はじめに

 食品衛生法等の一部改正が公布されてから、間もなく5年が経過しようとしている。
 改正の一つに、食品等の「自主回収(リコール) 情報」の行政への報告義務化があった。こちらは経過措置期間を経て2021年6月1日から完全施行となり、食品衛生法に違反するまたは違反する恐れがあるもの、食品表示法に違反するものの自主回収を行った場合、行政への届出が義務化された。
 私は現在、製麺メーカーのコンサルタントを行っているが、以前は卸売業者やスーパーのコンサルタントも行っており、 当時は100社近くの食品関連事業者と取引があり、多種多様な食品を扱っていた。
 今回は自主回収の報告義務化によって何が変わったのか、また自主回収になるような事態を防ぐため、卸売業者や製造業者として、どのような取り組みを行っているかについてご紹介したいと思う。

食品等の自主回収の報告義務化で何が変わったか

 食品等の「自主回収(リコール)情報」の行政への報告が義務化されたと聞いて、「もっと前から食品の自主回収制度ってなかったっけ?」と疑問に感じる方もいらっしゃるのではないだろうか。その認識の通りで、実は以前から同じような制度はあったのだ。
 旧制度では、各自治体の条例などで自主回収の届出について定められており、実は私も、スーパーのコンサルタントをしていた時に、自主回収に関わったことがある。当時は、所定のフォーマットが県のホームページに掲載されていて、自主回収することが決まったら、それを記入して書面で管轄の保健所へ提出するという流れだった。書類が受理されると、県のサイトに届出内容が掲載されて、 消費者へ自主回収情報が公開された。そして自主回収が終了したら、今度は自主回収終了の届出を書面にて管轄の保健所に提出し、それが受理され ると県のサイトから自主回収の情報が削除された。
もしかしたらこの時点で、旧制度での自主回収に携わったことがある方の中で、「これ違うので は?」という違和感や疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれない。それが正に、旧制度の課題だった。
 旧制度の自主回収の届出は、各自治体の条例などに沿って運用されていたため、どうしても地域差が生まれやすい状態だった。さらにすべての自治体で、食品の自主回収の届出について規定されていた訳ではなく、2018年の厚生労働省の報告資料によると、約20%の自治体では、自主回収の報告制度自体が定められていなかった。
 また他県で販売する商品があったり、県外から来るお客様が購入する可能性を考えたりすると、 県のサイトのように限定された中での情報公開で十分かと言えば疑問だった。新制度になったことで、これらの問題は大きく解決に向かったと思う。
 まず2021年6月1日から食品衛生申請等システムの運用が始まり、自主回収の届出がWEB上で可能となり、届出のフォーマットが全国で統一された。システムから登録された自主回収情報は、管轄の保健所、都道府県本庁から厚生労働省または消費者庁に報告されて、公開される。食品衛生申請等システムからの手続きが困難な場合は、書面による管轄の保健所への届出も可能となっているが、その場合は書面を受け取った保管所が入力し、国に対してオンラインで報告することになる。また自主回収情報については、ずっと掲載される訳ではなく、回収終了の報告がされて、その情報が公開されてから2週間経過すると情報が削除される。回収終了の報告は、食品衛生申請等システムから自主回収情報の修正を行い、「最終報告」の欄にチェックを入れて、回収が終了した年月日を入力することで行うことができる。
 さらに一つのサイトから、全国の自主回収情報を確認できるようになった。特に厚生労働省のホームページにある「公開回収事案検索」は、検索をかけることもできるため、届出年月日や健康への危険性の程度(CLASS I〜CLASS皿)や管轄保健所名などの条件で絞って情報を確認することができる。こちらは、食品衛生申請等システムからも開くことができるので、ぜひ一度ご覧いただければと思う。

この記事を書いたプロ

下裏祐司

事業と社員の成長を導く企業活性化コンサルティングのプロ

下裏祐司(株式会社飛泉)

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