タイプ別風邪の養生法「長引く咳編」~山梨 漢方 沢田屋薬局~
僕たちのもっとも身近な病気って何でしょうか?
おそらく多くの方が『風邪』と答えるでしょう。長い人生で一度も風邪をひくことがない方はほぼ0ではないかと思います(実際に死ぬまで風邪引かないひとっているんでしょうかね??)。
そんな身近な風邪ですが、昔から風邪はひきはじめの初期治療がとっても大切と言われています。
『ゾクッとしたら・・・』なんて風邪薬のCMがあるぐらいですよね。
そんな身近な風邪ですが漢方薬を服用する方も多いと思います。
一般の方が風邪の時に漢方薬を服用するメリットとして考えるのは次の物が多いのではないでしょうか?
・眠気が少ない
・副作用が少なそう、カラダに優しそう
・妊娠授乳中でも服用できそう
この3つがトップ3だと思います。
眠気が少ないのは事実で、市販の総合感冒薬と違い、眠気が出てしまう抗ヒスタミン剤が入っておらず添付文章(市販薬についてる服用の仕方、注意点などが書いてある物)にも『運転や機械の操作は避けてください』というような文言はありません。
副作用が少なそうというのはイメージ先行の部分があり、いつも困ることのひとつなのですが
『漢方薬はお茶のような物で薬じゃないから大丈夫ですよね?』
『漢方薬は副作用ってないんですよね』
ということをよく言われますがそんなことはありません。
漢方薬の添付文章にも副作用はいろいろと書いてあります。体調や併用する薬や持病の有無によっては注意が必要なので注意して服用してほしいと思います。
成分的に合成の化学薬品でなく、葉っぱや植物の根っこ、石、動物など自然にあるものが使われているのでカラダに優しいイメージがありますが、ぜひご注意ください。
妊娠中、授乳中の方に関しては処方薬や西洋薬の成分の総合感冒薬に比べると負担が少ないとは思いますが、できるだけ避けたほうが良いもの、比較的安心して服用できるものと種類も色々なので『漢方薬だから大丈夫』と自己判断で服用したりせず、きちんと専門家に相談して服用をするようにしましょう。
さて、一般的な鼻水、発熱、咳、喉の痛みなどの風邪のときに服用する漢方薬ですが大きく分けると2つに分けられます。
1つ目は『寒気のある風邪』
2つ目は『熱の風邪』
この3つです。
1つ目はカラダがゾクゾクした寒気がある、いわゆる悪寒というものがあり、汗が出にくく、節々が痛いと言うようなときです。
これは漢方では風寒邪と言って、カラダに寒気が入っている状態と考えます。
お風呂に入っても寒い、布団をかぶっても寒くて汗がでない、そんなときはカラダに『寒』の邪気が入っていると考えます。
このような時に使う代表が『葛根湯』や『麻黄湯』のようなカラダを温めて汗をだすことで寒邪を追い出す漢方です。
葛根湯や麻黄湯はすごく簡単に言うと、その人が持っている体力を使ってカラダの熱を高めてウイルスを退治するようなイメージの漢方薬です。
余談ですが、昔は風邪で病院を受診するとすぐに解熱剤を処方されましたが、今は38℃以上、や38.5℃を越えた時に、という頓服として処方されることが多くなりました。これはあまり初期の段階で熱を下げてしまうとウイルスが退治しきれずに長引いてしまうこともあるのでそのようにしている部分もあると思います。
発熱とはある意味『自然治癒力』の現れなんですよね。
さて、話に戻りますが、寒気がある時に漢方薬はいろいろありますし、厳密には色々使い分けがあるのですが一つの目安になると思います。
汗が出ていて、カラダがすごく弱っている方、病弱な方、カラダの弱い子供やお年寄り、妊婦さん、授乳中の方は熱を上げて体力を消耗する葛根湯や麻黄湯は避けて桂枝湯のようなマイルドな物が無難だと思います。
2つ目の『熱の風邪』の場合は銀翹散のようなカラダの熱を冷ます漢方薬です。
先ほどのカラダを温めてウイルスを退治するものと違い、すでに発熱をしていたり、喉が腫れて炎症をおこしているときで、寒気がしない時に使うことが基本です。
シンプルに考えるとすでに熱が高くて寒気もしなくて、炎症が起きて腫れている時にさらにカラダを温めたらどうなるでしょうか??
当然熱もさらにあがり、腫れていて熱をもっている患部は痛みを増すでしょう。
このように緊急事態に漢方を使用する場合は大きく分けると
『寒気がする状態か?』(温めるのか?)
『熱があり炎症がある状態か?』(冷ますのか?)
という見極めができればとりあえずの対応ができると思います。
昔から風邪を引いた時のイラストは
この2つが代表格ですよね。
上のイラストだと布団をかぶって温かい飲み物を飲ませる養生を昔からしますよね?
下のイラストの状態はどうでしょうか?
たぶん氷嚢や氷枕を使って頭を冷やす養生をしますよね?
このあたりの見極めなら多くの方ができると思いますし、大人なら自己判断も可能だと思いますので、専門の薬局などに相談して、自分や家族にあった
『寒気の風邪』『熱の風邪』用の漢方薬を常備しておくと初期の状態で風邪を退治する事も可能なので、ぜひ漢方薬を上手に使ってくださいね。
重ねてになりますが、決してどんなときでも『風邪だから葛根湯』にならないように気をつけましょうね。