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鈴木恵美

表面化する問題から悩みの本質に迫る心理カウンセラー

鈴木恵美(すずきえみ) / 公認心理師

Pure Bliss(ピュア ブリス)

コラム

合否だけにフォーカスしない大切さ

2018年7月21日 公開 / 2018年7月22日更新

テーマ:受験生を持つ親のストレス

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

志望校に落ちてしまった時、親が落ち込んでいると子どもは、しっかり立ち直ることができません。
受験で得た経験が糧となり、その先の人生を主体的に生きる力が身に付いているはずです。
合否の結果よりも、子どもの努力と挑戦の過程を認めましょう。

不合格になった時こそ 子どもへの配慮が大切

~自己肯定感を低下させないために、親は普段以上に自らの言動に配慮をしましょう~

「不合格」の通知を目にしたときは、親子共に大きなショックを受けることでしょう。
これまでの数年間の努力が無駄になってしまったかのように感じてしまい、頭が真っ白になることも。
大人でも辛い経験なのに、人生経験の浅い子どもにとって「不合格」は、初めての挫折になるかもしれません。

ある教育関連のサイトが行った、中学高校受験をした子どもの保護者を対象にしたアンケート調査によると、不合格になっても落ち込まない子が半分程度存在するという結果に。
第一志望校に落ちたとしても、第二・三志望校に合格していれば楽観的でいられる子どもが半数程度は存在します。
第一志望が実力以上のチャレンジ校で、そこに不合格になった場合は、受かれば儲けもの、くらいの気持ちで挑戦するので、そう大きなダメージを受けない場合もあるようです。

このように、チャンスが一度きりの緊張感が漂う受験であっても、大きく落ち込まない子どもが半数程度存在するという事実には、救われる思いがいたします。

しかし問題なのは、不合格になって落ち込む残りの半分の子どもの存在です。
第一志望の学校に落ちて気持ちを切り替えられない子どもは、入学してからも表情が暗いまま。
自尊感情が傷ついたままの状態で、「すべり止め」と自らが位置づけた学校で、気持ちの晴れぬまま新生活を送る子が毎年一定数存在します。

この年齢の子どもは、まだ社会経験が少ないために、自分の価値をはかる判断材料がごくわずかです。

そのため、塾や学校、親という小さな世界の中だけでの評価を、自分の価値を表す絶対的なものとして捉えてしまうのです。

そして、
 
不合格=負け組=価値のない人間
 
という、マイナスの自己イメージを自ら植え付けてしまうのです。

子どもがショックを受けたまま、なかなか立ち直れずにいる状況の背景には、実は親の方がショックを引きずり落ち込んだまま、という問題背景が存在している事があります。

口には出さなくても親が落胆していれば、子どもは、「親を落ち込ませているのは、不合格になった自分のせいだ」と感じます。
そして、その思いが子どもの自己肯定感を低下させてしまうのです。

すべり止めの学校に入ってからも、自分が来るべきところではなかったという思いを抱えたまま過ごしますので、勉強にも部活動にも身が入らず何事にも消極的な態度をとるようになります。
せっかく数年という貴重な時間を費やした受験も、こうなってしまっては、意味がありません。

合否も大切ですが、受験そのものを子どもの生活の糧にし、後で振り返った時に、大切な経験だったと思えるようにするためには、親の「肯定的な態度」が欠かせません。

親は、自分が子どもに与える心的な影響力の大きさをしっかりと自覚し、言葉だけでなく態度にも気を配りましょう。

子どもが不合格になった時の接し方
(事前に行うイメージング・対応方法)

やりたいことを全て後回しにして、受験勉強に打ち込んできた我が子。
その背中を見守ってきたからこそ、不合格になってしまった時にどんな言葉をかけて良いものか考えあぐねてしまいます。

子ども以上に落ち込んでしまう親もいますので、その感情のままで子どもをどんなふうに励ましてよいものか、いい判断ができないのは理解ができます。

しかし、親の気持ちの切り替えこそが、子どもの心の回復のスピードを左右すると言っても過言では無いことを知っておいてください。
考えたくもないかとは思いますが、
もしもの時に、どんな言葉をかけるのか、
どう振る舞うか。。。
予め想定し、イメージを固めておくことをお勧めします。

不合格という現実を前に、親も感情的になっていますから、適切な言動をとれない事は容易に想像がつきます。
そういった状況下で瞬時に感情をコントロールするのは、容易なことではありませんので、そうなってから考えるのでは遅すぎます。
予め想定しておいた言葉がけや態度をそのまま実践できるように、事前にイメージングし、準備をしておくことはとても有用です。

そして、時間が経つにつれ、これまでの生活について「もっとこうしておけばよかった」と後悔する気持ちが次々と湧いてきます。

もっと早い時期にお稽古事を辞めさせておけば・・・
もっと勉強時間を確保させておけば・・・
もっと実績のある塾に通わせていれば・・・
もっとしっかり体調管理をしていたら・・・

後悔の念は尽きることなく湧いてきます。
しかし、冷静に考えてください。

それらは、今から変えられることでしょうか。

間違っても、「どうせ落ちるのなら受験しなければ良かった」などと言ってはいけません。
受験を否定することは、子どもの努力を無駄だったと見なすのと同じです。

大人でも受験するとなれば、生半可なプレッシャーでは済まないはずです。
にもかかわらず、子どもは人生経験が少ない中、逃げ出さずに受験に立ち向かったのです。

ですから、子どもの努力不足を責めないでください。

また、子どもの成長や伸びる時期には個人差があります。
幼稚園受験では思うような結果を掴めなかったとしても、小学受験や、中学・高校受験では本来の能力を発揮できることもあります。

子どもの成長は、長期的なスパンで見守りましょう。

いずれにしても、もうどうにもならないことであれば、現状を受け入れ、前を向くしかありません。
第一志望の学校に受からなくても、第二・三志望の学校に合格したのであれば手放しで喜びましょう。

そして、「すべり止め」という言葉を使う事にも、疑問を持ちましょう。

「合格したら通いたい」 そう思えた学校だからこそ志望校に選び、受験料を払って試験を受けたのではありませんか。

まちがっても、入学式の日に暗い顔をしないでください。
子どもの同級生が第一志望の学校に入ったことを知って複雑な心境になったとしても、人は人。
親が他人をうらやんでいたり、いつまでも悔やんでいたりしていては、子どもも気持ちの切り替えができなくなります。

受験して良かったと思えるように

不合格になったとしても、子どもが頑張った経験は残ります。
これからの人生でその経験が力を発揮する時が、必ず訪れます。

親のかかわり方次第で、「受験して良かった」と受けとめられるようになれるのです。

あれこれ悔やむより先にするべきことは、
これまでの努力と頑張りと挑戦を褒めること。

子どもには、親に認められたいという気持ちがあります。

不合格になったことよりも、親が悲しむことの方が辛い、と思う子どもは決して少なくありません。

子どもは自分の気持ちに向き合うよりも先に、
 親がどんな顔をしているか
 どんな気持ちでいるのか
 悲しい顔をしていないか
これらが気になり、親の様子を確認するもの、と思っておいてください。

親が子どもの幸せを願うように、子どもも親の期待に応えたいのです。
子どもは親が喜ぶ顔を見たいのです。

受験しない子どもよりも、多くの時間をかけて難関に挑戦した子どもは、それだけで立派です。
努力の過程を認めてあげましょう。

そして、不要な劣等感を持たせないように最大限の配慮をしましょう。

子どもでもあっても、プライドはあります。
友達との間で合否が分かれれば、悔しい思いも経験します。

そんな時は、そっと寄り添い、不合格は人生の失敗ではないことを伝えてください。
艱難辛苦を乗り越えての到達点です。
どんな結果であろうとも、失敗ではありません。

受験をすることで、高い目標を設定し、高みを目指して挑戦をしたのです。
受験勉強を通じて、学力と集中力は飛躍的に上がったのではないでしょうか。
精神面だって鍛えられたはずです。

友人が遊んでいる時も勉強し、寝不足も乗り越えました。
流行りのゲームや遊び、ドラマの話題についていけなくて、寂しい思いをしたこともあるでしょう。

一番大事なことは、どこに入るかではなく、そこで何をするか、何を身に付けるかです。

「受験して良かった」と思える日を迎えられるように、
 どんな人間になって欲しくて受験をさせるのか
 どんな自分になりたくて受験をするのか 
親子でよく考えておきましょう。

自分を律し、目標に向かって頑張る力があることは、受験の準備期間を通して証明されたのです。

親はこれまで通り、子どもを認め、新生活を見守っていきましょう。

合格したから偉い、という「条件付きの承認」では無く、「無条件で」子どもを愛してあげてください。

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