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鈴木恵美

表面化する問題から悩みの本質に迫る心理カウンセラー

鈴木恵美(すずきえみ) / 公認心理師

Pure Bliss(ピュア ブリス)

コラム

子どもの受験でさまざまな悩みを抱える親(母親)の心

2018年7月18日 公開 / 2018年7月20日更新

テーマ:受験生を持つ親のストレス

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

受験は子どもにとってはもちろん、親にとっても様々なストレスをもたらします。
ストレスを感じるのは先が見えない不安があるから。
不安の基を絶つためには、自分の軸を持つことが大切です。

次の3点を心掛けましょう。
・家庭の教育方針の確立
・親子それぞれの価値観の認識と信頼関係の構築
・合格だけにこだわらず、その過程で身に付くさまざまな力にも価値を見出すこと

子どもの不安と親の不安

幼稚園、小学校時代は、人間形成の土台を培う大切な時期です。

幼稚園、小学校の受験の場合では志望校選びは親の役目となります。
受験の準備段階ともいえる志望校選びの段階で、すぐに悩みが始まります。
自分の子どもの資質や家庭の教育観と、志望する先の教育理念とがあっているのかということから鑑みて、受験する幼稚園、小学校を選ばなくてはなりません。

まずは、将来子どもにどんな人間に成長して欲しいのかを熟考し、他の人に説明できるくらいに明確な「家庭の教育方針」を確立しましょう。

年齢が低い子どもの考査は、学力重視の内容ではなく、
主に、
「基本的な生活習慣が身についているか」
「家庭の教育に対する考え方」
を子どもを通して問われる内容になります。

子どもは小さいほど、親の言動の影響を受けます。
そのため、子どもと接する時間が長い母親は、生活態度全般が問われる事になるのです。

子どもの見本になる様な生活を常に心掛けなくてはなりませんので、母親のストレスは計り知れないものになります。
生まれたその日から、一日24時間、子どもの世話に追われ、その上今度は、受験のためにしっかりとした
 「規則正しい生活」
 「見本となる言葉遣い」
 「立ち居振る舞い」 を心掛けて過ごす日々になるのですから、
気の休まる暇は有りません。
ストレスを抱えて当然の環境です。
だからと言って、その矛先が子どもに向かってしまっては本末転倒。

そうならないためには、
 「周りに惑わされない」 
 「しっかりとした目的意識を持つ」
 「子どもを信じ見守る姿勢を貫く」

これらを心掛けることが出来れば、子どもは安心して母親をモデリングし、無理に教え込まなくても好ましい生活態度が身に付くでしょう。

つまり、受験のために子どもを操作しようとするのではなく、まずは親が自分の生活態度、言動、立ち居振る舞いを見なおし、心の軸をしっかりと持って生活をする事。

それが、幼稚園、小学校受験の場合の合格への近道になるのです。

また、子どもが自分の意志よりも、
親の顔色を見て、親の意向をくみ取っていないかも、
よく観察しましょう。

子どもの意志を尊重した意見のすり合わせが大切(中学・高校受験編)

では、中学、高校受験では何が大事になってくるのでしょうか。

幼稚園、小学校受験であれば、親御さんが志望校選びをしますが、中学、高校受験となるとそうもいきません。

子ども本人の考えや価値観が出来る年齢でもあります。
しっかりとした意志も出てきますので、親子の意見のすり合わせにも神経を使う時期に入ります。
 
親の価値観を押し付けず、子どもの意見を聞き入れ尊重する気持ちの余裕と、より良き方向に子どもを促せる信頼関係を構築しましょう。

合格発表の瞬間まで不安とともに過ごす受験生

受験勉強の間には、成績が思うように上がらず、自分のやり方が正しいのかどうか悩むこともあるでしょう。

年齢が上がるにつれ、勉強法、自分の成績の順位や偏差値、友人の志望校の偏差値や知名度を気にするようにもなります。友人と比較をすることでプレッシャーを感じるようになっていくのです。

また、勉強に時間を取られることで友人と過ごす時間も減る上に、志望校のランクの違いや塾の成績によるクラス分けによって、仲の良い友達でも間柄がギクシャクしてしまうことすらあります。
こうしたことも相まって、受験生は不安とストレスを増幅させてしまうのです。 
 
不安は何も受験勉強に関わることだけではないのです。
日々のストレスからしっかり眠ることが出来ず、体調を崩し、心身に不調が現れる子どもも一定数います。
普段は朗らかな優しい子でも、受験期にはイラつきがちで家族に反抗的な態度をとることもしばしば見受けられます。

このように、希望する学校へ入学できるかどうかを決める受験は、子どもにとって人生初の試練と言っても過言ではないのです。
努力だけでは乗り越えられないかもしれないというプレッシャーは精神的に子どもを追い込み、不安にさせます。

合格発表のその瞬間まで、受験生は常に不安と共にあるのです。

子どもを信じて適度な距離を保つことが大切

子どもと接する時間の長い母親は、ついつい口うるさく干渉してしまいがちです。
子どもがスマホばかり見ていれば、「勉強は?」「それで合格できるの?」と文句の一つも言いたくなります。
今後の人生を左右するかもしれないことですから、親だって心配なのはもっともです。

しかし、不安なのはお子さんも同じということ。
受験を控え、勉強しなくても構わないと考えているお子さんはいません。

親に口を挟まれることは、子どもにとってプレッシャーでしかないのです。
日々繰り返される干渉は、やる気を削いでしまうこともあるので気を付けましょう。

親は子どもの、反抗的な態度に過度に反応したり、干渉するのではなく、子どもを信じて見守る寛大な姿勢に徹しましょう。

お子さんを信頼し、見守ることに徹するように心がけてください。
そして、努力している点や伸びている所は、積極的に褒めてあげましょう。

適度な距離感が良好な信頼関係をつくります。

受験では金銭的な負担も親の不安要素に

このようなメンタル的な不安だけでなく、金銭な負担の大きさも、親の不安要素として無視できない一つでもあります。

受験塾の費用や、受験日間近になると開催される志望校別の合格対策講座代など、受験勉強そのものにかかる費用も大きなものですが、幼稚園・小学校・中学受験などではその他に、面接用のお受験向けのスーツやくつ、着替えやスリッパ、受験票等をスムーズに出し入れできるお受験用のバッグも必要になります。

それらを一式買い揃えるとなると数十万円と高額になりがちです。
それに加え、一校数万円の受験料も、併願する学校の数だけ増えていきます。
こんなつもりではなかったと慌てる事になる前に、予め試算し予算に含めておきましょう。

メンタル面、金銭面で生じる不安を事前に想定しておくことで、訳もなく襲ってくる不安を軽減し対処もできるでしょう。

受験で身に付く『グリット』と『主体性』

受験をすると決めたからには、合格を勝ち取りたいと思うのは当然のこと。

しかし、合否にかかわらず「受験して良かった」と思えるようにするために、
合格することだけに囚われず、受験という経験から学べることにも意識を向け、価値を見出しましょう。

受験を乗り越えることで、親も子も大きく成長できます。
この先子どもの人生には、いくつもの高い壁が待ち受けています。
壁にぶつかるたびに、受験での経験を生かし自分が持てる力の最大限を使って立ち向かおうとするでしょう。

合否にかかわらず、「やりきった」という達成感が得られれば、それだけでも受験した価値があると言っても過言ではありません。

最後までやり遂げること。
やり遂げた達成感を得る事。
これらを体験出来れば、人生をより良く生き抜くための力を手に入れたようなものです。

目標を設定し、そこへ向かって継続して努力をし、
やり遂げる能力を『グリット』といいます。

困難や問題にぶつかっても
「諦めずに最後までやり抜く力」
これを『グリット』といい、「才能」や「努力」に続く『第三の成功因子』といわれ、日本語では「根気」「勇気」という意味があります。

人生で成功するための秘訣は、時間をかけてこそ習得できるものであり、「IQテストでは測れないものの中にこそあるのではないか」という考えあります。

その考えがきっかけで、心理学者のアンジェラ・リ・ダックワース氏が調査研究した結果明らかになった、 
・物事に対する情熱
・目的を達成するために長い時間、
 継続的に粘り強く努力する力
・物事を最後までやり遂げる力
  は、成功者が共通して持つ能力でもあるのです。

これが『グリット』です。

『グリット』は、基本的には生まれ持った才能・知能とは関連性がないので、先天的な才能・知能を測る方法として用いられることはありません。

失敗を恐れず、積極的にさまざまな事に挑戦し、失敗の中から学ぶこと。
失敗を生かして次に進む事で成功を掴めると信じる力が、成功へと導いてくれるのです。

1ヶ月、1年、2年という長期的な視点で計画を立て最後までやり遂げる力や、思うように成績が伸びなければ見直しをして修正を加える柔軟性、自ら計画し、自分から動くという主体的な力は、受験にも必要です。

受験を通じて、子どもの『グリット』と『主体性』が育まれると言えるでしょう。

親が与えるべきは、「不安」ではなく「安心」

受験の主役はあくまで子どもです。
とはいえ、親が口を出し過ぎたり、成績の変動に本人以上に一喜一憂したり、言い過ぎた、と後で自分を責め、後悔することもあるでしょう。

それも、子を思う親だからこそ。
親と子どもと衝突することも含めて受験である。
意見のぶつかり合いが子どもの精神的な成長に繋がる、と思えば、少し気がラクになるかもしれません。

子どもは親の過干渉に憤り、親と衝突することによって、受験を「自分自身の課題」として捉え直すようになるかもしれません。

このように、受験には「自立心」や「主体性」が育まれる面もあるのです。

子どもなりに精神的な重圧と戦い、自分なりの努力や決断をし、実行をしていくこと。
こうして身に付いた課題への取り組み方や勉強の習慣は、進学先の学校生活でもきっと役立つはずです。

親も、子どもを見守るだけではなく、共に努力をします。
子どもと志望校の見学に行ったり、受験情報を調べたり、食事に気を使い、健康管理をしたりと、サポートに尽力されているのではないでしょうか。

自主性や主体性を育てるためにも、最終的な決断や行動は子ども自身がするべきです。
しかし、陰ながら支える親のサポートは子どもの「安心」につながり推進力となっていきます。
家族が子どもを支え見守ることで、「安心」して勉強に打ち込めるのです。

親が子どもにあれこれ世話をしてあげられるのは一時です。
最初から完璧に対応できる親もいません。
叱り過ぎたり、反抗されたり・・・
失敗と挫折が親子を成長させていくのです。

もしも、望むような結果が出せなかったとしても、
これまでの経過や努力や意欲を認めてあげましょう。
親があからさまに落ち込み叱責しては、親子関係にも亀裂が入りかねません。

受験という試練を通じ、親と子の絆が深まり成長していくことができれば、受験は大変意味深いものとなるでしょう。

この記事を書いたプロ

鈴木恵美

表面化する問題から悩みの本質に迫る心理カウンセラー

鈴木恵美(Pure Bliss(ピュア ブリス))

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