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鈴木恵美

表面化する問題から悩みの本質に迫る心理カウンセラー

鈴木恵美(すずきえみ) / 公認心理師

Pure Bliss(ピュア ブリス)

コラム

「自己投影」と「過干渉」は負のスパイラルを生む

2018年7月31日

テーマ:受験生を持つ親のストレス

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

子離れできていない親は、自分の希望や理想、叶えられなかった夢を子どもに投影してしまいがちです。
自分の価値観を子どもに押し付け、過度に干渉することは、子どもの自立を遅らせてしまいます。
「自己投影」「過干渉」は、親子関係で衝突が起きる原因の一つなのです。

自己投影と過干渉とは

子離れできない親の特徴として、「自己投影」と「過干渉」が挙げられます。
母親の場合、娘に対して女性としての自己を投影する傾向がある一方で、異性である男の子に対しては、よく分からない部分があるため、自分とは別の人間として距離を保つことができます。そのかわり、自分の描く理想の男性像に当てはめて育てようとする傾向がみられる場合もあります。

仮に、母親が子どもを産んでから、本意ではなく子育て中心の生活を送ったとします。
仕事を辞めたり、フルタイムの仕事を続けられなくなったり、また、出世コースから外れてしまったことを悔やむという経験をしたとします。
すると、未練や悔しさが、いつしか子どもへの期待へとすり替わる、という状況に陥ることがあります。
自分が突き進めなかった、仕事に没頭しキャリアを積む女性像を、何も分からないうちから子どもに押し付けてしまうのです。

同性の娘に対しては自分が経験し成長してきた過程だから全てを理解できると思い込みがち。
自分自身と娘を重ね合わせ、やりたくてもできなかったことを娘の人生を通して叶えようとして自己投影してしまうのです。母親は、かつて自分が諦めた生き方を無意識のうちに娘を通じてやり直したいという願望をもち、その願望を元に突き動かされていることに気が付いていないのが恐ろしいところです。

自分の子どもであれば、親の気持ちを汲んでくれ、大人になっても側にいてくれるだろうという思惑もあるでしょう。
子どもの輝かしい未来を夢見て、期待をかけるのは子を持つ親として自然な感情です。
自分が叶えられなかったような人生を歩む娘、自分の理想の男性像に近い大人に成長した息子を自慢に思うのは、悪い事ではありません。

ですが、何事においても行き過ぎは禁物です。

自己投影と過干渉には気を付け、自分と子どもは、別人格だと言うことをしっかりと認識しましょう。

反抗期はチャンス! 過干渉は生き辛さにつながる

自分の夢を子どもに託して押し付けてしまうことは、誰しもやってしまいがちです。
ですが、血を分けた自分の子どもであっても、別人格、別の人間です。
親が子どもに自分の叶えられなかった夢や希望、理想や価値観を押し付ける行為は、それらを押し付けられる側の子どもにとってはどうなのでしょう。

子どもに限らず誰しもが、人に認められたいという自己承認欲求をもっています。
子どもが自分の気持ちよりも親の期待に応えようと、無理をしてしまうのはごく自然な心理なのです。
ですので、過剰な期待は子どもの人生を奪ってしまうことになりかねないのだ、としっかりと認識することが大事。

親が子どもに期待をしたり、自分たちの理想を託すことを一概に否定はしませんが、やることなすことすべてに干渉されることで、いつしか子どもは自分で考えることをやめてしまいかねません。 
自分が何をしたいかよりも、親が何を望んでいるかばかり気にするような思考にシフトしてしまうことへの危機感を持つこと。

親の「過干渉」は、子どもの主体性を奪い、生き辛さへと繋げてしまう可能性がある事を覚えてきましょう。

素直で可愛かった子どもにも、思春期になると反抗期が訪れます。
反抗期は、子どもが親から自立するための大切な時期。

成長への大きなチャンスです。

しかし、過干渉な親が陥りがちなのは、反抗期の訪れを「よくないこと」「残念なこと」として捉えがちなこと。

もしも、このチャンスを生かせず、子どもが過干渉の親元で監視され続けていると、自分自身で考え、意思決定する主体性が育ち難くなってしまいます。
一方親も、終始子どもを監視している過干渉の状態では、かなりのエネルギーを消耗してしまいます。

何とか反抗期を乗り越えたとしても、過干渉の影響は子どもの人生に深く残ります。
「自分が本当にやりたいこと」が分からずに、他人の価値観を気にしてしか生きられないというのは、親との距離が近すぎる人に共通する悩みです。

「過干渉」は親子両者に生き辛さを生じさせてしまうのです。

反抗期は、順調に成長している証。

親離れ、子離れするチャンスである反抗期は、「成長へのチャンス」と前向きに捉えましょう。

子どもも大切 自分も大切

男女平等といえども、実際のところ子どもと接する時間が多いのは母親です。
母親の子どもとのかかわり方が、子どもの成長に大きく影響します。

母性信仰は根強く世間に浸透しています。
ひとたび子どもが生まれて母となれば、自分のことは我慢して何をおいても子どもを最優先するべきだという論調が、いまだにまだ優勢です。
確かに、子どもは大切です。
だからと言って子どもが常に最優先で、母親だけが我慢をすればいいのでしょうか。

子どもと同じように、自分のことも大切にしましょう。
自分をおろそかにしてばかりいては、報われない自分の願望を他人に投影したくなるのも仕方ありません。
たいてい、親のフラストレーションの矛先は、親と一体化した子どもに向けられるのです。
諦めざるを得なかった親の人生を、「子どものため」という大義名分のもとで、無意識に子どもに投影して人生を操ろうとしてしまいます。
それで、お互いに幸せだと言えるでしょうか。

子どもが幼く二人三脚で歩んでいけるうちは、いいでしょう。
ですが、いつか子どもは親から離れていく時が訪れるのです。
 
親の期待に応え続けることができなくなった時
やらされてきたものが自分のしたいことではないと気が付いた時
子どもの心は親の元から離れていきます。

子どもが自分の力で歩んでいこうとする際に、それを喜ばしいこととして認めてあげられれば良いのですが、母親信仰により我慢を強いられてきた場合、そう上手くはいきません。

「時間とお金と、自分のすべてを犠牲にして子どものために尽くしてきたのに」と、不満が爆発するのが目に見えています。
「親に反抗する親不孝者」とばかりに責め立ててれば、親子関係が破綻してしまうことにもなりかねません。

かつて、親の自己犠牲は、誉めそやされる世間体の良いものでした。
ですが、たとえどんな時代であっても、母親が自分の人生の全てを投げ打ってまで子どもに過度に時間をかけ、期待するのは不自然です。

自分の人生を全うできないのに、子どもを通して自己実現しようというのは、どちらにとっても良い結果にはつながらないでしょう。

親も子どもも幸せになるための親子関係の構築には、いくつか心がけておきたいポイントがあります。

まずは、
◆過度な母子密着の育児から抜け出すこと。

子どもが集団生活を始める年齢になっても母親と子どもだけの空間での密室育児の状態が長いのであれば、夫や友達、保育士など信頼のおける第三者に育児を任せる時間をもってください。
愛着形成はとても大切ですが、なにごとにも適切な距離感やバランスが重要です。

次に、
◆子どもと自分は別の人間、別の人格であることを再認識しましょう。

自分の子どもであっても、性格や趣味嗜好は異なります。
自分と違う選択をしても、否定せずに尊重しましょう。
親と子の価値観がいっしょである必要はないのです。

最後に最も大切なのは、
◆自分の望みは自分自身で叶えること。

子どもは親の所有物ではありません。
他人を完璧にコントロールすることもできません。
子どものせいで自分の人生を犠牲にしたと悔やむことがないよう、意識的に自分の時間を持つことが大切です。

多少、育児や家事の手を抜いたとしても、自立的な良好な親子関係の構築とそれぞれの人生をより良いものにすることが最も大切です。

それを実現できていると実感できるに勝る幸せはありません。

親も子どももお互いにより良い人生を送れるように、自分にとって何が大切なのか意識をし、できることから始めましょう。

この記事を書いたプロ

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