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従業員に顧客志向を根付かせ組織を成長させる経営コンサルタント

伊東久(いとうひさし) / 経営コンサルタント

株式会社おもてなし経営研究所

コラム

「利益至上主義」からの脱却【Part2】

2020年8月15日 公開 / 2021年7月14日更新

テーマ:組織活性化プログラムのご案内

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 人事評価制度組織開発人事制度 設計

 2020年8月14日付け日経新聞の朝刊に、「人事評価で脱『売上至上』」との記事がありました。内容は、セブンーイレブン・ジャパンが評価制度について、「今までの成果の達成度合いの人事評価を70%から30%に減らし、プロセス評価を70%に高めた」という内容でありました。この評価制度、多くの企業で管理職ほど結果を重視していますが、本音と建て前がいつも交錯する課題でもあります。このセブンイレブンの事例を以前から私はおすすめしていますが、建て前ではプロセス評価の重視でも、本音は「結果が全て」という現場風土が残っていると、大きな失敗が待ち構えています。

利益至上主義の罠

 私が営業の管理職をしていたころの失敗談は、コラム「利益至上主義」VS「仕事成果主義」で書いていますのでこちらもご覧ください。
今回はPart2として「利益至上主義からの脱却」編をお送りします。

 売上ありきで仕事を求めすぎると、売上が伸び悩んでいることに対し、目先の数字を追いかけることが始まります。「とにかく売る!」という行動が個人成績主義になっていきます。その結果、「自分だけが成績を上げる」というやり方になり、職場の雰囲気が悪くなっていきます。上司の指導は結果だけを求めるので、「なんとかしろ!」という言葉だけの指示が多くなりがちです。この指示を受けた部下は、「なんとか数字をつくる」と走りまわるわけです。

 実はここに無理な要求や不正という罠が潜んでいます。上司は結果だけを評価するので、プロセスは見え難くなります。結果的に教育が疎かになり、不正の温床が減らないのです。顧客にも無理な要求をしてしまいがちになり、顧客満足度が低下していきます。結果的に継続的な売上につながらないという悪循環になります。おわかりでしょうが、この「なんとか数字をつくる」という行動の中には、プロセス評価の元になるネタが出てこないのです。要するにプロセスは後書きのつじつま合わせになるのです。記事にある、「セブンーイレブンがオーナーとの関係が悪化したことを受け」というのも頷けます。
 
 私が営業部長時代、営業担当者は成果の評価が40%、プロセスの評価が60%と、プロセス重視で評価をしていました。しかし、その上司(私は)は成果80%という評価システムなわけです。従って、「なんとかしろ」という言葉が優先してしまい、そのやり方は部下に任せてしまう不整合が起きてしまうのです。管理職になるほど結果だけを問われるという評価システムは、現実的に機能していないことになります。
これが、利益至上主義の罠です。

利益至上主義からの脱却

 では、どうすればプロセス評価が活きてくるようになるか、チーム協働という観点でお伝えします。

 コンピテンシー評価というものをご存じでしょうか?日本語にすると「行動特性」と言えますが、本人の持っている能力が行動に出ているかを評価するものです。このコンピテンシー評価を丁寧に部下にあてはめ、普段の仕事ぶりを診断しながら、適時評価していくやり方です。しかも、上司と部下の1対1ではなく、チーム内のディスカッション形式で行うと良いでしょう。チームとしての目標をしっかりと認識し、その中でどういう戦略を打っていくかの議論を活発に行っていくなかで、適所で上司が仕事のアドバイスをしていく方法です。いろいろなアイデアが出やすくなります。そのアイデアに対し「根拠は?」と上司が質問していきます。その根拠を伝えられるようになるには、能力に応じた行動に基づいていなければなりません。この連続した質問と答えの応酬の中にコンピテンシーを高める指導が溢れています。

 この話し合いを継続することがプロセス評価です。
 

上司は答えを持たない

 忍耐力というと、何か古い言葉に聞こえますが、実はこの忍耐力が部下を成長させるうえで大きな力になるのです。どうしても経験の中で「売り方」の答えを持っている上司は、部下に答えを与えすぎてしまいます。その答えが尽きると「なんとかしろ!」と激を飛ばします。激を飛ばす理由は、過去「なんとかした」経験からです。しかし、チームディスカッションの中で答えを導き出す方法なら、1人で悩むよりも答えが出やすくなります。また、アイデアも出やすいので、上司はあまり答えを出す必要がありません。
 「上司は答えを持たない=持っていても出さずに耐える」ことが、部下の成長を促すことになります。私が営業担当だったころ、私を一番育ててくれた上司は、このやり方でした。まさにコーチングの原点ともいえるでしょう。

 プロセス評価重視の成功は、上司が部下の能力を見極め、行動特性を発揮させることにあります。それには、チーム協働で目標達成する意欲と、ゴールに導くためのアイデアを部下から導き出すことです。そこにプロセスが潜んでいます。

 現場と管理者がチグハグにならないよう進めないと、プロセス評価重視の人事評価制度は上手く回りません。
 私どもの「おもてなし経営クリエイション・アカデミー」では、人事評価制度のコンサルティングを行っています。特にコンピテンシー評価を重視し、行動に照らし合わせた評価の仕方についてもアドバイスします。

 詳しくはこちらをご覧ください。⇒おもてなし経営クリエイション・アカデミー

 また、組織活性化プログラムとして「管理職養成プログラム”サーバントリーダーへの道”」
や、「活きた人事評価制度」もご用意しています。

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