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鈴木一正

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鈴木一正(すずきかずまさ) / 経営コンサルタント

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コラム

三越式といふ一種の新空気を作り、千有余名の店員をして此空気に接触し之を呼吸せしめたい~三越の古典に学ぶ その10~

2024年3月12日

テーマ:経営

コラムカテゴリ:ビジネス

どんな店舗でも、その店独特の雰囲気というものがある。「この店はお客様を大切にしているんだろうな」とか、その逆に「この店はお客様に関心がないのかもしれない…」などなど、店内を歩いているとなんとなく伝わってくる。これは、日頃からのマネジメントはもちろんだが、従業員のロイヤルティ、従業員同士のコミュニケーションの充実度などが影響していると思う。日比翁助専務はこうした点を重視していた。

三越式空気

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○店員の不断の活動力の源泉
◎私は三越式空気を作り度し
私が三越呉服店を経営するに就ては三越式といふ一種の新空気を作り、千有余名の店員をして此空気に接触し之を呼吸せしめたいと思ふて居る。恰度日本と云ふ国に来れば何よりも先づ忠君愛国の磅礴して人を襲ふが如く、三越に来た店員は三越の一種の空気に触れて自然に強制せられず、大奮闘をせねばならぬ様に仕向けたいと希望し且つ努力して居る。

幸にして千有余名の店員は私が微意を了解してくれ、協心戮力し、一団となつて奮闘して呉れる。多数の中には或は一二の不満足なものがないとも限らぬ。併し私の眼中には全店員が一団となつて其の業務に愉快に奮闘しつつあると映じて居る・私は平素之を目撃し多大の感謝を以て彼等に接しつつある。

◎店員は一分間も油断する勿れ
店の開閉時間は季節によって多少の相違はあるが、店員は遅くとも午前七時または七時半までには出勤せねばならぬ。而して閉店は午後五時に戸を鎖す…その頃には前に入店になつた方は一時間位ご覧になるから全くお客の立ち去られるのは六時過ぎとなる。其後店を片付けて掃除を了て店員が愈々帰るのは午後七時にはなるであらう。退出には女店員を先にし、十五分間を隔てて男店員に退出させる。

賞味の勤務時間は約十時間で、普通の小売店員に比すれば短いけれども、此間は殆ど全く立ち詰めで一分間と雖も身体に隙の出来ることはない。お客は後から後からと続々と詰めかけてくる。直接に此客に接して居るものは身体を休める遑もなく、よし又客に接せぬものでも常に客の眼に曝されて居り又重役以下の監視を受けつつ、あると云ふは…は店内の展望は自由自在である、一隅にあつても全体が見透かされる。故に前面に客が見えなくとも、店員は何処から客は重役以下の監視を受けて居るか分からぬ。横から見て居よう、後から見ても居るかも知れぬ。上から覗いて居らぬとも限らぬ。故に一分間と雖も惰容を示したり、一ヶ所に集つて空談に耽つたりすることが出来ぬ。又実際彼等が売り場に控えて居る時は恰も戦場に敵を控へて居る如く、常に気をつけの態度で少しも隙を見せぬ。私はこの点に就ては我店員ながらも深く感謝して居る。

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販売員というのはずっと立ちっぱなしで、さらにずっとお客様と相対しているので結構疲れるものだ。だから、緊張感を継続するには高いモチベーションが求められる。日比翁助専務は、このモチベーションの醸成に向けて様々な施策を打っているが、三越が実現しようとするデパートメントストアの社会的使命をさまざまな機会を通して従業員に伝えていることも影響していたのではないか。
単なるサービスの質をマネジメントするということだけでなく、従業員が主体的に使命を果たそうとする意識付けが重要であることを理解していたと思う。

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