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谷光高

ゴルフの楽しさを多くの人に伝えるゴルフ場経営者

谷光高(たにみつたか) / ゴルフ場経営者

新有馬開発株式会社(有馬カンツリー倶楽部)

コラム

戦前にもあった『でかカップ』論争

2018年9月8日 公開 / 2022年10月19日更新

テーマ:ゴルフの歴史やエピソード

コラムカテゴリ:趣味

でかカップゴルフ


現在、アコーディアゴルフさんが積極的にイベントされている『でかカップゴルフ』。
でかカップゴルフサイトはこちら→https://www.accordiagolf.com/dekacup/



通常カップの約4倍、直径15インチ(約381mm)の「でか カップ」を18ホール全てのグリーンで使用する「でかカップゴルフデー」。2016年6月から全国に開催地を増やして展開されています。「 ゴルフ初心者の方がラクにプレーでき、ベストスコア更新が狙えるのはもちろん、経験者・上級者ゴルファーにも、いつもとは一味違った新感覚のゴルフを楽しんでいただいています」というものです。



2016年度に開催されたイベントでは、「初めて100を切りました!楽しかったです」、「もう少しでホールインワンでした。次は狙いたいです!」、「もっと頻繁に開催してほしい」、「友達にもすすめたい」など、ご参加いただいたお客様から大変好評なご意見をいただいているそうです。

賛否両論があるとは思いますが、ホールインしやすいのは間違いないので好スコアは期待できます。初心者や初級者には良いイベントですよね。


1930年代に論争となった「でかカップ」問題


この「でかカップ」、今から約85年前に「今の穴(ホール)が小さすぎるから、これを約倍の8インチ(203.24mm)にしよう」とUSGAに声を上げたプロゴルファーがいました。

当時のホールの直径は、現在と同じ4.25インチ(108mm)、これでは小さすぎるという意見。

当時の言い方で、この「爆弾動議」を提出したのは、プロゴルファーとして史上初の「キャリア・グランドスラム」を達成した名選手 のジーン・サラゼン 。



ジーン・サラゼン(Gene Sarazen、1902年2月27日 - 1999年5月13日)はアメリカ・ニューヨーク州出身のプロゴルファー。1920年代から1930年代にかけて活躍し、PGAツアー39勝、うちメジャー7勝、世界殿堂にも名を連ねています。

1935年4月8日の第2回マスターズ最終日15番ホール(パー5)での残り235ヤードの第2打を4番ウッドで打って大逆転優勝に繋がるアルバトロス(ダブルイーグル)をスコアしたスーパーショットが特に有名で、コースレイアウトが変わった今日も15番ホールグリーンとフェアウェイをつなぐ橋にはサラゼンブリッジと呼ばれています。試合後、このミラクルセカンドショットに対して、サラゼンは「ショットそのものよりも、このショットを打つために費やした膨大な練習量を誇りに思う」とコメントしています。(※Wikipedia参考)



また英国リンクスコースのバンカーを攻略するために「サンドウェッジ」を発明したことでも知られています。



このような世界を代表するプロゴルファーが、「穴が小さすぎるから約倍のサイズに大きくしよう」という意見を提出したのは驚きです。

このユーモラスな爆弾動議、結果としては一蹴された形で終わりましたが、一部の人たちには肯定されて賛否両論が応酬されたそうです。当時の記述では、「この案が、ゴルフの機構と相容れざる宿命であったにせよ、すべてのゴルファーの心の隅に、こびりついている悩みの一端を、率直にぶちまけたところにこの案の捨て難い良さがある」とあります。

今も昔も考えることは同じなのだと、現在の「でかカップ」につながる系譜を見たような気がしました。


「でかカップ」をプロの試合に


しかし、動議を提出したサラゼン自身は少し違ったようです。

「私からすると、ゴルフは今や全く生気のない退屈なゲームでしかない」として提唱の冒頭に大見えを切って出ました。

「見給え、上手なプレーヤーは、2打を以てグリーンに乗せ、さらに2パットを以てパー4を得る。だがもし、我々がこれをしばしば1パットで沈めたら、ゴルフはプレーヤー自体にも、また観衆にも更に遥かに面白味が増すだろう。この効果は、まず第一に一流のプレーヤーによって享受せられるはずである」

さらに「例えば」として、「一流プレーヤーとアベレージプレーヤーが一緒にプレーしたとして、常識から言えば、後者がピンから20~25フィートのところへボールを寄せれば、前者は更に近くの12~15フィートに持っていくとみて差し支えない。しかしその結果は二人とも、やはり2パットを要するのである。そこでもしこの場合にホールが大きければ、アベレージプレーヤーのパットが依然2つを要するのに反して、一流プレーヤーは1パットで沈めることが可能となる」


これがサラゼンの考える理由です。

ホールを大きくすれば、まず真っ先に得をするのはアベレージゴルファーだろうと誰もが思うところを、逆にそうではないと主張したところにこの案の面白さがありました。

彼の説ではゴルフを決定するのは“第2打”であり、相当の距離からでは、いかに名手といえども12~15フィートのところにつけるのは至難の業。さらにこの距離を必ず1パットで成し遂げるのは至難中の難事というのです。このことから見れば、ホールが8インチになったところでアベレージゴルファーが、これ以上に利益を受けるとは考えられないというのです。

却下の理由


言うまでのなく、これは単にテクニカルの話しであって、これだけでは収まりません。ホールの大きさだけの問題では終らず、これに派生するその他の事象も検討しなければならず、この案の重要性もそこにあれば、またこの案が葬り去られたポイントもそこにあったようです。

ホールの拡大によってゴルフゲームのパット数が減少するとなると、たしかにスコアは良くなります。するとコース設計側としてはグリーンを大きくしたり、バンカーやその他のハザードをぐっとピンに近づけて難易度を上げることが予期されます。こうした結果、ゲーム自体をいたずらに複雑化するに過ぎないということです。


ホール拡大で考えられる利点のひとつに、ゴルフゲームが長い時間を費やすのは主としてショート・ゲームに手間がかかるからで、ホールが大きくなることによって、これが多少でも緩和されるだろうという意見がでました。しかし、この意見は相対的な理由から却下されてしまいました。

つまり、遅いプレーヤーの時間を浪費する原因は、ふた通りあって、第一はチップにしてもラン・アップにしても、ボールの転がる地表の状態を綿密に調べ上げることと、第二に微妙なショットを行うに際して自己の心理条件を整える努力をすることにあるということです。

ところがホールを拡大してもこのことが緩和されるかというと決してそうではないとされました。ホールが多きなれば、それだけチャンスの範囲も広がります。より遠い場所からホールの正しい位置とか、地表の精密な観察が必要とされるはずです。

今日でもピンから50ヤード以内は行きつ戻りつするのが通り相場。それがホールが8インチになったとなると、80ヤードから100ヤードの距離を行ったり来たりすることになります。それではたまったものではありません。時間を短縮するどころか、時間がますます長くなるというのが却下理由のひとつとなりました。



・・・・・・・

そして現代のでかカップゴルフ。これは倍ではなく4倍のサイズ。

ジーン・サラゼンはこの大きなカップを見て、「これはいいな!プロの試合でやってみよう!」と思ってくれるでしょうか。


◆参考文献

「ゴルフ三昧」近藤高男著:日本ゴルフドム社(昭和13年1月発刊)

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