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谷光高

ゴルフの楽しさを多くの人に伝えるゴルフ場経営者

谷光高(たにみつたか) / ゴルフ場経営者

新有馬開発株式会社(有馬カンツリー倶楽部)

コラム

日本のゴルフ場で「1ホール2グリーン」が必要だった理由

2015年1月4日 公開 / 2019年1月2日更新

テーマ:ゴルフの歴史やエピソード

コラムカテゴリ:趣味

日本では、季節あるいは整備上の都合によって使い分けをするために、1つのホールに 2 つのパッティンググリーンを設けているコースが数多くあります。
一般的にピンフラッグのあるパッティンググリーンを「メイングリーン」といい、ピンフラッグがなく使用していない方のパッティンググリーンのことを「サブ(予備)グリーン」といいます。

この「1ホール2グリーン」は海外ではあまり見られません。
なぜ、日本では「2グリーン」が必要だったのでしょうか?
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止む形無しに生まれた「1ホール2グリーン」

日本における「1ホール2グリーン」元年は、今から80年前の1935年(昭和10年)と言われています。この年、霞ヶ関カンツリー倶楽部西コースに「メイングリーン」を暖地型日本芝のコウライシバとし、第2グリーンを寒地型西洋芝のベントグラスとしたのが日本で最初と言われています。

この日本で最初の「1ホール2グリーン」は止む形無しに生まれました。

1932年(昭和7年)、日本で初めて36ホールズを持つゴルフ場となる霞ヶ関カンツリー倶楽部西コース、そして廣野ゴルフ倶楽部や東京ゴルフ倶楽部朝霞コースなど西洋芝ベントグラスのパッティンググリーンを有するという日本に新しいゴルフコースが次々に誕生し、ゴルファーがそれまで見たこともなかったエバーグリーン(※ベントグラスは冬芝のために冬期でも枯れ芝とならず、緑の芝を維持します)の鮮やかな緑を喜びました。しかし、その喜びも束の間、同年8月の記録的な猛暑により、オープンしたばかりの寒地型芝であるベントグラスのパッティンググリーンは全滅と言ってもいいぐらいの大被害を受けました。

ベントグラスを「1ホール2グリーン」で活かす

高温多湿な日本の気候では、ベントグラスの品種改良が進み、生育管理、灌漑設備や排水工法など管理技術が格段に進歩した現在でも、ベントグラスなど寒地型西洋芝の「夏越し」は、グリーンキーパーにとって最も困難な作業です。
これらの技術が確立されていない80年前では寒地型西洋芝を通年維持させることは“不可能”と言っても過言ではなかったでしょう。

猛暑による大被害を受け、日本でのベントグラスによる「1ホール1グリーン」は“不可能”という観念が一般論となり、廣野ゴルフ倶楽部などでは、コウライシバのグリーンに変更せざるを得なくなりました。

しかし、霞ヶ関カンツリー倶楽部では西コースを閉鎖し、コウライシバの第2グリーンを造成する計画に踏み切りました。これはあくまで仮の姿でしたが、ともかく早くプレーができる状態にしたかったのです。
そして1935年に日本で最初のコウライシバとベントグラスの「1ホール2グリーン」が完成しました。これにより、高温期はコウライシバの「メイングリーン」を使用し、コウライシバが枯れ芝となる低温期はベントグラスの「サブグリーン」を使用するという「1ホール2グリーン」の利用法が確立しました。
さらに1937年には同倶楽部東コースでも第2グリーンが完成し、36ホールのすべてが「1ホール2グリーン」となりました。

これ以後、新たに造られたゴルフ場では、2種類の芝種を利用した「1ホール2グリーン」が主流となっていきます。日本の多くの人々にとっては、日本の気候に合わせた「1ホール2グリーン」が、日本の伝統的なゴルフ場の姿だと考えられるようになりました。
芝生の種類と特性はこちらのコラムでも

再びベントグラスによる「1ホール1グリーン」の時代へ

1980年代になって、再びベントグラスの「1ホール1グリーン」の時代がやってきます。
欧米で「1ホール1グリーン」が主流であり、それに負けじと日本でもエバーグリーンやコースの戦略性、そしてパッティングクオリティーなどゴルフプレーの観点からベントグラスの「1ホール1グリーン」が待望されるようになりました。
経済好況もあって、ゴルフ場開発や管理技術などの研究に投資が進み、ベントグラスの品種改良と管理技術の向上や管理機械が発展し、待望のベントグラスの「1ホール1グリーン」が叶うようになりました。

これにより、「1ホール2グリーン」を「1ホール1グリーン」に変える(戻す)ケースが一気に加速していきます。

ベントグラスのパッティンググリーンでは、グリーンスピードを求めるために、より低刈りに耐える品種の開発が必要となり、現在では3mm以下の刈り高にも耐えうる品種が一般的となっています。また、それに追従するように刈込機械の進化もあり、その他の管理技術の向上も合わせて、通年を通して9フィート前後、また特別な場合は12フィート以上のグリーンスピードが叶うようになりました。さらに高温の気象条件にも耐え得る品種の開発も進み、通年を通して安定したグリーンコンディションを維持できるようになってきています。

しかし、ベントグラスによる「1ホール1グリーン」について“不可能”だったものが、品種改良、管理技術の向上によって、ようやく“可能”となったに過ぎません。
年々、地球温暖化による異常気象が進み、気象変動が目まぐるしく、決して1年を通じて、楽にベントグラスが維持できるようになったわけではありません。

ゴルフコースを管理する“グリーンキーパー”の知識力、観察力、経験値などを最大限に発揮して、将来を事前に察知し対応していくという『人間力』がいまだパッティンググリーンの維持管理には最重要であるということは「1ホール2グリーン」だった昔も今も変わってはいません。

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