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経営戦略コンサルタントを取り巻く現状について考察

2022年6月3日 公開 / 2022年6月14日更新

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 経営戦略

皆さま、こんにちは

コラム投稿2回目は、コンサルティングについてご興味ある読者のための第一弾として、経営戦略コンサルタントを取り巻く現状について考察したいと思います。

経営戦略コンサルタントに興味ある人のためのコラム紹介概要チャート-取り巻く現状について
情報化社会と言われ久しいですが、その情報が現代では飽和・氾濫し、様々な混乱を引き起こしているように見えます。多ければ良いというものではないはずですが、現状のネット社会がそれを推奨している以上、質の維持に努めつつ、自らも環境に適応・変化していく必要があります。

経営戦略の分野でも常に新しい情報が発信されており、課題解決のための手法が生まれています。市場需要がある限り、どんどん新しいやり方を発掘することがビジネスとして正しいのは確かですが、サービスを受けるお客様の視点、そして提供するコンサルタントの視点から考えますと、時に疑問を感じることもあります。

そのため、世の中の情勢に振り回されて大事な本質を見失わないよう、私の場合は基本を大事にしています。つまりお客様のビジネスニーズおよび課題を的確に把握した上で、財務モデルなどを活用しつつ、独自の洞察で戦略提案をしていきます。

コンサルタントという職業にご興味ある読者の方に、ご参考となる情報になっておりましたら幸いです。


1.『経営戦略』の定義

まず、『経営戦略』という言葉の定義から始めたいと思います。なぜ定義の確認が大事かと言いますと、様々な場面で『戦略』という表現が使われており、付加価値を提供するコンサルタントとして、読者およびお客様のニーズに合っているかどうか、自らの立ち位置を明確にしておくことが重要と考えるからです。

『経営戦略』とは、限りある経営資源(人、物、金、情報)を有効に活用し、競争環境の中で自らの経営目的・目標を達成するための方針・計画を策定するために必要なものです。

成長シナリオを描くためには、企業の強み・弱みなどを把握し、市場の機会・脅威などをリサーチします。その過程で見つけた検討事項に対し、優先順位を付けて分析・検証、そして組織改革や事業の方向性を迅速にかつダイナミックに意思決定していきます。激動の時代には特に、環境変化に合わせた経営戦略を構築、修正していくことが必要不可欠となっています。

2.ブームによる戦略ノウハウのコモディティ化

前段の定義に基づいて、経営戦略コンサルタントの現状についてお話します。私の経験および他のプロの方から以前聞いたお話を思い出しながらまとめたいと思います。

近年、『戦略コンサルタント』という言葉がネット上で散見されるようになりました。主に大手コンサルティングファームの年収の高さが目を引くからでしょう。様々な関連書籍も出版されており、経営戦略という分野がちょっとしたブームになっているようです。ノウハウのコモディティ化も進んでいます。

なぜそうなっているのか実態は分かりませんけれど、一応想像することは可能なので書いてみます。

一つ目の可能性として、今はどこも人材不足なので、コンサルティングファームが優秀な人材を集めるために、プロモーションを行っている場合です。例えば、有名大手で働くコンサルタントは、『高年収でかっこいい』というイメージが何となくありますよね。マーケティング戦略の一環なのかもしれません。

それに関連して二つ目の可能性として、書籍やネット等で戦略コンサルティングのノウハウを一部掲載することで、仕事の応募前に基本を学んでほしい、という業界の思惑もあるかもしれません。この場合、自分でお金と時間をかけて基礎知識を学んでもらう事になるため、ファームとしては新人の研修コストが節約できます。人材が資本のコンサルティングビジネスでは、一人前になるまでに何年もかかりますので、そのための研修費用を考えますと、理由としては十分理解できます。

最後に思いつく可能性として、特に大手の戦略コンサルティングファームでは人の入れ替わりが激しく、会社から独立したコンサルタントの方が『元○○コンサルタント』という肩書で、情報発信されているケースです。近年増えている感じがします。

他にも可能性があるかもしれませんが、検証できませんのでここで止めておきます。

そもそも、新たなスキルを学んで収入を増やすためには、そのマーケットに十分な需要が存在することが大前提になります。本コラムでは扱いませんが、後日経営戦略コンサルタントのニーズや需要についても考えてみようと思います。

他のスキル習得の場合でも同じでしょうが、1~2年学んだだけですぐに収入アップは期待できません。例外は常に存在しますけれど、そんなにおいしい話は普通ないと思ってください。

3.欧米と日本のコンサルティング産業の違い

次に、現在コンサルティング産業の中心は欧米です。新しい戦略ノウハウもアメリカ・イギリス・ドイツなどから生まれます。規模の大きさや将来のポテンシャルも考慮すれば、新興の中国・インド・ブラジルも含まれるでしょう。

“FIRMSconsulting”の現パートナーで、過去にはマッキンゼーとも深い関わりのあったマイケルさんという方が研修動画の一つで話していた記憶があるのですが、1980年代頃までは、日本は世界のコンサルティング業界をリードしていたとの事でした。日本生まれの経営戦略アプローチもあったようです。マッキンゼーの元日本支社長だった大前研一氏のお話もされており、そのお話しぶりから氏を尊敬されている印象を受けました。

私が10代(1990年代)の頃に『企業参謀』という書籍で初めて大前氏のお名前を見ましたが、世界的に有名な方とは当時全く知りませんでした。彼のエピソードは、同じく元マッキンゼーのパートナーだったビルさん(“FIRMSconsulting”の現パートナー)という方も、書籍『MARKETING SAVES THE WORLD』の中で少し触れられています。利便性(Convenience)と時間(Time)の重要性について、ビジネス視点で熱心に語られていたそうです。ご興味ありましたら読んでみてください。

残念ながら、今の日本は欧米のコンサルタントの間ではほとんど話題に上りません。お客様(クライアント)が期待する成果を出さなくてはならない以上、成長国や成長産業に人・物・金、そして話題(情報)が集まるのはある意味仕方がないと思います。

他に、正確なデータは無いので概算になりますが、人口比を考慮してもアメリカと日本ではコンサルティングの市場規模に3倍の差があると考えられています。つまり、仮に同じ人口だった場合、それでもアメリカの方が3倍大きい市場規模を持っているという意味です。

自分はオーストラリアで20代を過ごしましたが、その当時はあまり意識していませんでしたけれど、今思うと景気は良くて、コンサルティングビジネスも活発に行われていたと思います。

例えば、2000年代のオーストラリアは、携帯電話でのコンテンツビジネス市場が急激に伸びており、その頃知り合いだった会社の経営者の方も頻繁にセミナーに参加したり、専門のコンサルタントに相談しながら、テレビを中心にメディア広告を出して売上を増やしておりました。その時のセミナー参加費用は、一回で40万円くらいかかったとお聞きしました。当時びっくりしたことを覚えています。その体験から、欧米ではコンサルティング業が日本よりも活発で市場規模が大きいという仮説は、自分も正しいと感じます。

このように、欧米諸国が右肩上がりで経済成長してきたのも、知識やノウハウの点で、コンサルタントが一定の貢献をしてきたと考えられます。もしくは、経済成長しているからこそ、それらの国でコンサルタントの需要が増えたとも考えられます。ニワトリが先か卵が先かは分かりませんが、少なくともコンサルタントが活発に活動している国または市場では、経済も発展していると考えて良いと思います。

もしこの仮説が正しければ、日本もコンサルティングサービスの品質が向上する事で、潜在需要を欧米レベルまで喚起できる可能性はあります。その結果として、日本全体が活性化し、経済が上向きに転じることを期待したいです。

4.戦略系と会計系のコンサルティングファームの違い

次に、主に大手のコンサルティングファームでのお話となりますが、この業界は戦略系と会計系に大きく分類することが可能なので、その違いをお話しておきます。後のコラムでお客様(クライアント)のニーズや需要、そして必要となるスキルを論じる際に、ファームの違いを知っておくことも重要と考えるからです。

ただし、ほとんどの会社は株式を公開しておらず、財務情報がないので、あくまで私の個人的見解および推論での説明となります。間違った内容が含まれておりましたら申し訳ございません。

戦略系のファームは名前の通り、経営戦略に特化していることが多いです。そのため、現場のオペレーションには直接関わりません。“Consultant”の定義は英語で“a person who provides expert advice professionally”、つまり日本語だと『プロとして専門のアドバイスを提供する人』となりますので、定義に準じるならば、現場の仕事には関わらない戦略系ファームの方が、本来の意味でコンサルティング会社と言えるかもしれません。ただし、社外のプロフェッショナルに自社の経営戦略策定のみを相談・依頼する企業は限られるため、市場需要は会計系のファームと比べるとかなり少ないと考えられます。少数精鋭のため企業規模は小さいところが多く、コンサルタントの個人的資質や能力が、その会社の経営を左右する傾向にあります。そのため、人材育成はマンツーマンが主体となり、一人前になるまで時間がかかります。例えば、マッキンゼーやBCGがそうだと言われています。

一方、会計系のファームは、経営戦略から現場のオペレーションまでをトータルでサポートする企業が多いようです。幅広いお客様のニーズに応えられるため、各ニーズに対するコンサルタントの市場需要は大きいと考えられます。その分、沢山の専門人材を抱えていますので、会社の規模も大きくなり、人件費も高くなる傾向にあります。よって、利益率は戦略系のファームより一般的に高くないと推測します。コンサルタントの個人的資質や能力も重要ですが、事業の性質上マンパワーが必要なので、チームワークを重視し、高い水準でバランスの取れた人材を数多く採用し、育てることが、企業経営を左右すると考えられます。そのため、人材育成は企業研修とマンツーマンのハイブリットで進めます。例えば、アクセンチュアやデロイトトーマツがそうだと言われています。

ちなみに、私はどちらかと言えば戦略系に区分されるかと思います。もちろん、会社の成長を目的として財務分析もサポートしていますので、会計系の一面も持っていますが、全体で考えますとやはり前者だと思います。これは、フリーのコンサルタントとして仕事をする以上、お客様の視点から『独自性』や『差別化』が重要となるためです。個人的資質や能力の発揮が大前提となります。当然、お客様がサービス内容をご理解しやすいよう『見える化』する事も重要ですが、それは会計系(というか財務)のスキルで実現されています。一人で仕事をするので、サポート範囲は用途で絞るようにしています。将来人を雇う余裕が出来た場合は、会計系(財務)の知識を組み合わせながら、戦略系ファームの方針を軸に事業を拡げていくと思います。

5.職業としてのネガティブなイメージについて

最後に、『経営コンサルタント』というワードに関連して、ネットでネガティブなキーワードをいくつか見つけましたので、その点について自分の考えを書いておきたいと思います。

いくつかピックアップしますと、「怪しい」「いらない」「意味ない」「うさんくさい」「口だけ」「使えない」など、経営コンサルタントに対するマイナスな評価またはイメージがいろいろありました。これを見てちょっとショックを受けましたが、私も会社で働いていた時に何人もの社外コンサルタントの方と一緒に仕事をした経験がありますので、たまにそういう方がいらっしゃる事は知っています。

過去にある経営者とお会いした際、自分がコンサルタントと名乗ったところ、先方がひどく感情を害された事がありました。その方とは一緒に仕事をした事がないので不思議でしたが、過去に出会ったコンサルタントに良い思い出がなかったのかなと思います。

どの業界でも同じでしょうが、人の性格や能力はピンキリです。ただコンサルタントの場合、成果の多くを個人の資質・能力・性格(相性)などに依存するので、評価の振り幅が大きいのだろうと思います。

職業としてコンサルタントを選択する人の動機はそれぞれでしょうが、私が一つだけ言えることは、コンサルティングはお客様のビジネスをサポートする仕事だという事です。自分が主役になってバリバリ活躍したい方は、コンサルタントになるよりも、自ら独自の事業を立ち上げて経営者になった方がやりがいもあるでしょうし、適材適所な感じがします。

さらに、労働集約型で規模の経済を活かしにくい特徴がありますので、お金を効率的に稼ぐ目的には適しません。仮に大手のコンサルティング会社に就職しても、状況はほとんど変わりません。なぜならば、いくら高年収でも多くの人は数年で辞めることになるからです。私の共著者の中にも元マッキンゼーコンサルタントの方がいらっしゃいますが、辞めた事情は分かりませんけれど、おそらくそこで働き続けることが本当に大変だったのだと思います。マイケルさんも動画でお話されていましたが、朝から晩まで厳しいスケジュールの中、成果を出し続けなければならないようです。

スキル習得にかけた費用や時間に加え、職業としての安定性(または持続可能性)の観点から、得られるリターンは多くの人が考えている程大きくはありません。ファームで働くにしても、フリーで独立するにしても、形はどうあれコンサルタントとして働き続けるには、例えば人助けをしたいなど、個人の信念または社会的使命などの何らかの志が必ず必要になります。

お客様のニーズを第一に考えて成果物を提供し、業界全体の評判が向上していく事を心から願っています。過去の個人的経験談も交えて書きました。

6.取り巻く現状のまとめ

以上となります。今回は経営戦略コンサルタントを取り巻く現状について書いてみました。

まずは、本コラムの内容が読者の期待に沿っているかどうか、『経営戦略』の定義確認から始めました。そして、戦略コンサルタントが一種のブームになっており、ノウハウが本やネットで多数紹介されてコモディティ化していることを書きました。欧米と日本のコンサルティング産業の違い、そして戦略系と会計系の会社があることをご紹介しました。最後に、業界全体のイメージ向上を願い、コンサルティングというお仕事について自分の考えをまとめました。

今後はここで書かれた内容をベースに、経営戦略コンサルタントのニーズや需要、必要なスキルについても論じていきたいと思います。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

ホームページでは本コラムの小話もご紹介していますので、よろしければそちらもご覧ください。

この記事を書いたプロ

味水隆廣

分析と英語を得意とするビジネス戦略のプロ

味水隆廣(漸コンサルティング)

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