記録の整理

中隆志

中隆志

 だいたい年始には記録の整理をする。
弁護士は事件終了から3年で記録の保管義務を免れるのだが、一応5年近くは置いている。
 事件が終わると依頼者に全て記録を返却するので、過去の記録はないと豪語していたベテラン弁護士がいるが、私の解釈では、依頼者に返却したからといって保管義務を免れるものではないと思う。
 事件が終わって終了記録の棚に移動する際預かった原本は返却するが、事件記録じたいはこちらも保管していないと関係者からの問い合わせにも答えられない。
 破産事件などの多重債務事件は3年も経てば不要になることが多いので、事務員に任せて、破産事件だと債権者一覧表と破産決定・免責決定を除いて業者に依頼してシュレッダーをかける。債務整理案件だと合意書である。
 一般事件はその事件ごとに内容が違うので、年始に古いものは自分で整理している。
 普通の事件だと、和解調書や判決、依頼者への送金の控え等の金銭関係などを置いておく。かなり経過しても突然火を噴き出そうな事件や思い入れが強い事件などはそのまま置いておく。
 初日と昨日である程度整理したが、整理しながら申し訳ないが全く依頼者のことを思い出せない事件もある一方で、ひどく印象に残っている事件もあり懐かしい。
 とはいいながら忘れている過去の依頼者は会うと思い出すものなのだが。
 いい解決が出来た事件は整理しながらも明るい気持ちになるが、あまりいい解決が出来なかった事件は整理しながら暗い気分になる。

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