読書日記「百年の孤独」
司馬遼太郎の竜馬がゆくを読んでいると、岩崎弥太郎の話が出てくる。
岩崎弥太郎は、いわずとしれた三菱財閥の創始者であり、明治維新のどさくさの中、土佐藩の借金を背負わされた代わりに土佐藩の資産を個人的に譲渡を受けて、その資産を元に三菱財閥を大きくしたことはあまりにも有名である。
岩崎弥太郎は、若い頃入牢していたことがあり、そのときに同じ牢に入っていた某という人物から算術と簿記の知識を教えて貰った。
そのときに、弥太郎はそのときは礼をする何ものも持たなかった為、他日自分がこの知識を元に栄達した場合、長持の中に金を入れて差し上げるという話をしていたということである。
後にこの某は落剥し、明治維新後に三菱財閥の創始者の岩崎弥太郎がそのときの教え子であるということを知り、周囲の人に牢での話をしたところ、周囲の人はみな、「そのときの約束を元に金をもらいにいくべきだ」という趣旨を述べたが、その某は、「俺を物乞いにする気か」と一括して一顧だにしなかったという。
もっとも、この某の死亡後、その子孫に三菱財閥は多くの金員を送ったということである。
私は、この某のような人物が好きである。人が栄達した途端にすりよるような真似はすべきではないと思う。
いい事件(弁護士にとって楽でお金が儲かる事件)にだけ力を注ぎ、お金にならない小さい事件には手を抜く弁護士もいるが、そのような志ではありたくないものである。前にも書いたが、私はボスからどのような事件でもなんとかならないかと考えるべきだという姿勢を学んだ(実践できているかは常に自省しているが)。
その意味で、私は自分の名前に「志」がついていることに感謝している(つけたのはあの父親だが)。そのため、名前の「志」の字を他の字と間違えられるとむかっとする。これは余談。