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猪野由紀夫

介護福祉事業の利益拡大を応援する経営コンサルタント

猪野由紀夫(いのゆきお) / 税理士

DCC株式会社

コラム

介護事業の人員、設備、運営基準とは

2019年8月30日 公開 / 2020年1月22日更新

テーマ:介護

コラムカテゴリ:ビジネス

 介護事業の立ち上げには、指定基準を把握し、要件を満たしておく必要があります。指定喜寿には「①人員基準」「②設備基準」「③運営基準」があります。今回は「指定居宅サービス事業の基準」について解説します。

<指定居宅サービス事業>
はじめに「指定居宅サービス事業」の種類について確認しておきましょう。
まず、「訪問サービス」があります。「訪問」、つまり利用者の自宅に「行く」サービスですが、これには、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導があります。

次に「通所サービス」。「通所」、つまり、利用者が「来る」ということです。これには、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)があります。

そして「短期入所サービス等」。つまり「泊まる」サービスです。これには、短期入所生活介護、短期入所療養介護があり、また、特定施設入居者生活介護、そのほか福祉用具貸与、特定福祉用具販売があります。

介護事業の新規立ち上げを考えている方は、「介護サービス事業がそれぞれの目的を達成するために必要な最低限度の基準」=「指定基準」を把握しておくことが大切になります。

指定基準には「①人員基準」「②設備基準」「③運営基準」があり、3つの指定基準をすべて満たす必要があります。


人員基準とは
人員基準については上記で確認したサービスごとに違いがあります。ここでは比較的参入しやすい訪問介護について見てみましょう。

まず、3つの職種に定められた人員を配置するよう求められています。その3つの職種とは、1管理者、2サービス提供責任者、3訪問介護員(ヘルパー)です。

「1管理者」については、その役割として「事業所の従業者および業務の管理を、一元的に行い、従業者に規定を遵守させるために必要な指揮命令を行う」とされています。
管理者は1名以上必要で、常勤であり、原則として専ら当該訪問介護事業所の管理業務に従事する人でなければなりません。管理者とサービス提供者の兼務は可能です。

「2サービス提供責任者」とは、ヘルパーの指導、育成などを行う、いわばヘルパーのまとめ役です。
介護福祉士の資格取得者、実務者研修修了者、ヘルパー1級を取得した者、介護職員基礎研修を修了した者、介護福祉士、実務者研修を修了者、初任者研修を修了し、実務経験3年以上ある人。
この資格要件のいずれかに該当する人を1名配置することになります。

「3訪問介護員(ヘルパー)」の資格要件は、介護福祉士、訪問介護員養成研修1級または2級課程修了者(ヘルパー1級・2級免許保有者)、または介護職員基礎研修課程を修了した者であり、常勤換算方法で2.5人以上配置すること、とされています。

「常勤換算方法」とは、ごく簡略に言えば、その事業所でいつも働いている人の平均人数を求める計算方法です。

計算式は「常勤換算人数=常勤職員の人数+(非常勤職員の勤務時間の合計÷常勤職員が勤務するべき時間)」です。

設備基準
まず、事業所については事務スペースと相談スペースが必要です。

事務スペースについては、デイケアなどの施設のように広さ◯㎡が必要という規定はありません。ただし、従業員の机、利用者の個人情報書類を保管する書庫など、通常の事務が行える広さが必要です。

事務スペースは専用の区画を確保するよう求められています。ただ、間仕切りで区切るなどして訪問介護事業を行う区画が特定されていれば、専用の区画として認められます。

相談スペースについても専用の相談室を設けることが望ましいとされていますが、プライバシーを確保するようパーテーションなどで対応することも可能です。

また、衛生設備として、手指を洗浄するための洗面台など、また感染症予防に必要な手指の殺菌剤の設置などが必要です。

運営基準
運営基準は、利用者への説明やサービス提供の記録など事業を進めるうえで定められた基準です。この運営基準も提供するサービスごとに細かく、多岐にわたって定められています。訪問介護の例をいくつか挙げてみましょう。

・「説明」
訪問介護の提供にあたっては、懇切丁寧に行うことを旨とし、利用者またはその家族に対し、サービスの提供方法等について、分かりやすく説明を行う。

・「計画作成」
利用者の日常生活全般の状況および希望を踏まえて、指定訪問介護の目標、当該目標を達成するための具体的なサービス内容等を記載した訪問介護計画を作成する。

・「介護等の総合的な提供」
入浴、排せつ、食事等の介護または調理、洗濯、掃除等の家事を常に総合的に提供するものとし、介護等のうち特定の援助に偏ってはならない。

・「守秘」
業務上知り得た利用者・家族の秘密を漏らしてはならない。

・「記録」
利用者に対する指定訪問介護の提供に関する各種記録を整備し、その完結の日から5年間保存しなければならない。

なお、「指定居宅サービス事業の基準」は人員基準など自治体によって異なる場合があります。
各都道府県のwebサイト、あるいは、直接担当部署に確認してください。

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猪野由紀夫

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