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コラム
長寿は、社会問題?
2022年3月24日
本屋に立ち寄り、【週刊誌で「予言の書」と話題! 新型感染症ワクチン、治療薬の優先順位。生じ高齢化する日本の社会保障制度に切り込んだ問題作。】という帯に興味を持ち、楡 周平氏著『サリエルの命題』の文庫版を購入しました。
日本海の孤島で新型インフルエンザが発生し、島民全員が死亡。強毒性のウイルスは、アメリカの研究データが流出し人工的に作られた疑いが出て、テロという噂も。さらに変異ウイルスの発症者が本州で確認され、備蓄量が少ない治療薬の優先順位などの様々な問題に対応していく国、そして研修者たちの姿が描かれたものです。 この作品は、2019年6月に単行本が刊行されているので、コロナウイルス感染拡大が始まる前に書かれた作品であり、作者の鋭い先見性には驚かされます。
ウイルス感染への対処や、治療薬の優先順位などは、現実に行っている問題であり、リアル感をもって読み進めることができます。
また、日本の社会保障の観点からも現実の問題が指摘されています。こんな一説があります。
『おっしゃるように、今の高齢者は昔と比べて元気だし、若々しくも見えます。ですが、高齢者の大半は、現役時代の貯えも底を突き、生活の原資は年金だけ。外見はどうあれ、人間、歳を重ねれば体のどこかにガタがくる。時間に余裕がある高齢者は、何かと言えば病院に行く。そして医者は乞われるままに薬を出す。それが日本の医療です。それもこれも世界トップレベルの社会保障制度が整備されている日本なればこそ。しかし日本は、制度を支えていく生産年齢人口が年を経るごとに減少していく。その一方で、国の社会保障制度に頼って生きる高齢者は増加していく。日本にとっては大変深刻な問題ではありませんか。』とこの小説に登場する中国人の政府要人が指摘しています。そして、この要人は、重ねてこのように話をします。少子化は、正しい現象。問題は、長寿だと。この後もこの問題に対する中国政府要人の話を進んでいきます。
この一節を読んで感じること、確かに、長寿は悦ばしいことであることは、誰しもそう思うことなのでしょう。ただ、人間何時かは死ぬわけです。何時かはわからないから、不安にもなる。そして、なるべく死から遠ざかりたいと願うのでしょう。医療技術や社会保障制度の充実で、この願いはある程度叶えることは出来るようになっているのだろうとも感じます。極論を言えば、薬や治療漬けでも、死なないことは出来るのではないかとも思います。但し、それが幸せなことかどうかは、少し違うように思います。この小説の中でも、長寿と不老は別物だと指摘もされています。
終活を行うことも、この問題点の端緒から始まっているかもしれないと感じます。
『どう生き、どう死ぬか(どんな風に死ぬか)』は、人それぞれなのでしょうが、人はダンダンと老いていくことに間違いはないわけです。そのためには、終活を行うことで、終焉を考えて、今をどう生きるかを考えるという活動には、一人ひとりも問題だけでなく、社会にとっても意味があるように思います。
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