無理をすることは美徳じゃない〜不調の時は休む勇気も必要
2025年10月、大阪大学名誉教授の坂口志文（さかぐち・しもん）先生が、「ノーベル生理学・医学賞」を受賞されました。
受賞理由は皆さんご存知の
制御性T細胞（Treg：ティーレグ）
という特別な免疫細胞を発見したこと。超簡単にご説明すると、この細胞は、私たちの免疫にとって“ブレーキ”のような存在です。
Treg（ティーレグ）ってなに？
私たちの体には、外から入ってきたウイルスや細菌をやっつける「免疫の戦士（T細胞）」がたくさんいます。
けれど、その戦いが激しすぎると“敵”だけでなく“自分自身”まで傷つけてしまうことがあります。
ウルトラマンが街まで破壊しちゃう、という感じでしょうか？
自分の免疫が自分を攻撃しちゃう代表的な病気が
関節リウマチや1型糖尿病などで一般的には「自己免疫疾患」と言われています。
そこで登場するのが坂口先生が研究した
「制御性T細胞（Treg）」このティーレグは、暴走しがちな免疫をなだめ「もうそのくらいで大丈夫だよ」とブレーキをかけてくれる細胞です。
ウルトラマンが怪獣を倒すためとはいえ、暴れすぎないように、落ち着かせてくれるような役割です。
つまりTregは、免疫のバランスを保つ司令塔 のような役割をしているのです。
これからの医療にどう活かされる？
坂口先生の発見は、「免疫＝攻撃」だけではなく「免疫＝調和」という新しい視点を生みました。
この考え方は今、いろいろな分野の医療に応用され始めています。
自己免疫疾患（リウマチ・潰瘍性大腸炎など）の治療
臓器移植後の拒絶反応の抑制
がん免疫療法での副作用軽減
アレルギー体質の改善 など
「免疫を上げる」ではなく、“整える”ことこそ健康のカギだと、多くの研究者が注目しています。
漢方でも陰陽のバランスを大事にしますが、免疫もやっぱりバランスなんです。
Tregを元気に働かせるためにできること
実はこのティーレグ、生活習慣のちょっとした工夫でも元気に働いてくれます。坂口先生も、論文や講演で日々の生活の中のご自愛を紹介されています。
その中でも特に大切なのが
「腸・自律神経・ストレス」
この3つだとおっしゃっています。
① 腸を整える
腸内の“善玉菌”は、Tregの活性をサポートします。特に「酪酸菌（らくさんきん）」が大切だということがわかっています。
おすすめはやっぱり
発酵食品（味噌・納豆・お漬物など）
それと
水溶性食物繊維（主に海藻類＆野菜の一部）
を意識して摂るだけでも、Tregが働きやすい環境になります。漢方でも免疫に関わることは現代人の胃腸である「脾胃」
そしてもう一つが
『肺大腸』
五臓六腑でもここがもっとも免疫系とつながっていることを考えると昔から胃腸と免疫はつながっていると知っていたのでしょうね。
現代生理学と中医学が重なっていますね。
② リラックスする
腸活の次はストレスケアです。
動物はストレスや緊張が続くと、交感神経が優位になり、
免疫は顆粒球が優位となり“戦闘モード”に入りやすくなります。
ゆったりとした呼吸、音楽、深呼吸、温かいお風呂などで副交感神経を優位にすると、バランスを取るTregが活性化しやすくなります。
漢方ではこれを「気の巡りを整える」と言い気持ちの滞り（気滞）をゆるめることで免疫にも心にも良いと考えます。
ストレスで交感神経が優位になると胃腸の動きも悪くなるので、先程の腸活にも大きなマイナスなので、このあたりもつながりを感じますね。
できるだけ生活の中で良い香りのもの
柑橘類、ハーブ類、香味野菜なども活用しましょう。
深呼吸、ゆっくりぬるめのお風呂に入浴する、ということもおすすめです。
③ 睡眠と休息を大切に
夜の眠りは、Tregを増やす時間。寝不足は自律神経を見出し、免疫のバランスも崩し、炎症やアレルギーを悪化させる
まさに百害あって一利なしです。
できるだけその日のうち、「23時までに寝る」「スマホは寝る1時間前にオフ」
ストレスケアでお伝えした副交感神経を優位にするご自愛など小さな工夫が、免疫のリズムを整えてくれます。
漢方的養生でも睡眠は最重要ご自愛です。
夜は陰の時間。陰は体の力を蓄えて、整えて、日中活動をしっかりできるようにする時間なので、睡眠時間の確保の優先順位をしっかり上げておきましょうね。
④ 温めて巡らせる
Tregがしっかり働くには、体内の巡りが良いことも大切です。冷えや滞りは免疫力を下げる原因にもなります。日常の食生活で冷たいものを控えることはもちろんですが
生姜やねぎ、シナモンなど「温性」の食材を積極的に温かいお茶、味噌汁などで取ったり
これからの季節は特に『3首』
首、手首、足首を冷やさない服装を心がけましょう。
低体温も免疫バランスの乱れの原因となりますので、日頃からしっかり運動も行い、筋力をしっかり維持しましょう。
今回の坂口先生のTreg（ティーレグ）の発見は「人の体には、もともと“調和しようとする力”が備わっている」という事実を教えてくれました。
中医学では何千年も前から「陰陽のバランス」「気血水の調和」を大切にしてきたことを考えると昔の人もエビデンスという形ではっきり証明はしてきませんでしたが、大切なことはよく理解していことがわかり
個人的には改めて中医学のすごさを感じました。
西洋医学でも東洋医学でも、目指しているのは同じで、やっぱり
カラダを“ととのえる力”
これが大事だと痛感しました。
これからインフルエンザや新型コロナなどもまた流行する季節。
日頃からのご自愛で、ぜひ皆さんの『整える力』高めておいて
どんな病気にも対応できる力、病気になっても治す力、再び病気にならない力をしっかり備えておきましょうね。
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