【親子問題】ひとり親家庭で子の暴力を受けている、誰に頼ればいい?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

この記事は2026年11月時点の法令と制度をもとにしています。窓口の名称や受付時間、対象となる方の範囲は自治体によって異なりますので、実際に相談される際はお住まいの地域の窓口でご確認ください。


子から暴力を受けていても、ひとり親家庭では「一緒に受け止めてくれる大人がいない」という状態になりやすく、誰に何を話せばよいのか分からないまま時間が過ぎてしまうことがあります。この記事では、ひとり親の方が子の暴力に悩んでいるときに頼れる相手を、子の年齢や状況ごとに整理します。

ひとり親家庭で子の暴力が表に出にくい理由

 ふたり親の家庭であれば、もう一方の親が間に入る、別の部屋に逃がす、外に助けを求めるといった動きが取れる場面があります。ひとり親家庭では、暴力を受けている親自身が、仕事・家事・子の対応のすべてを担っていることが多く、相談に出向く時間や気持ちの余裕を確保しにくい傾向があります。

 また、ひとり親の方からは次のような声がよく聞かれます。

  • 自分の育て方が悪かったから子が荒れたのだと思ってしまう。
  • 離婚や死別の経緯を話さなければならないと思うと、相談に行くのが気が重い。
  • 子を警察に突き出すようなことをすれば、子の味方が誰もいなくなってしまう。
  • 仕事を休めば生活が立ち行かなくなるので、平日の窓口に行けない。


 いずれも自然な思いですが、こうした事情が重なるほど、暴力が家庭の中に閉じ込められ、長く続いてしまうおそれがあります。「ひとりで抱えている」という状態そのものが、相談をはじめる十分な理由になります。

身の危険を感じるときは、迷わず110番を

 殴る・蹴る・首を絞める、刃物を持ち出すといった行為があり、その場で身の危険を感じるときは、ためらわずに110番通報をしてください。親子の間のことであっても、暴行や傷害、脅迫は犯罪として扱われうるものであり、警察は事案の緊急性や重大性を見て対応を判断します。

 通報したからといって、必ず子が逮捕されるわけではありません。重大な事案でなければ、警察はまず事情を聴くなどしたうえで、その後の対応を判断するのが通常です。被害を受けた親の意向も考慮されますので、「通報すれば子の人生が終わってしまう」と思い込んで、安全の確保を後回しにしないことが大切です。

 その場での判断に迷うときは、次の記事もあわせてご覧ください。


 緊急ではないものの継続的に相談したい場合は、警察相談専用電話(#9110)や、最寄りの警察署の生活安全課への相談も考えられます。

子の年齢によって頼れる窓口は変わる

 子の暴力について相談する窓口は、子が18歳未満か18歳以上かで大きく変わります。また、暴力を受けている親が65歳以上であれば、高齢者を守るための仕組みも使えることがあります。

状況主な相談先相談の要点
子が18歳未満児童相談所、市区町村の子ども家庭相談窓口(東京都では子供家庭支援センター)子の問題行動として、親子双方への支援を検討してもらう
子が18歳以上警察、保健所・精神保健福祉センター、市区町村の福祉の総合窓口暴力への対応と、子の生活・医療面の支援を分けて相談する
親が65歳以上地域包括支援センター、市区町村の高齢者福祉担当高齢者虐待防止法に基づく対応を検討してもらう


子が18歳未満のとき

 子が18歳未満であれば、児童相談所や市区町村の子ども家庭相談の窓口が中心になります。これらの窓口は、子が被害を受けている場合だけでなく、子の暴力や非行といった問題行動についての相談も受け付けています。

 18歳未満の子に対しては、親に監護の責任がありますので、暴力から離れたいときにも、子をどこで誰が見守るかをあわせて考える必要があります。親だけで判断せず、早めに児童相談所などに状況を伝えておくことが、親子双方の安全につながります。

子が18歳以上のとき

 子が18歳以上になると、原則として児童相談所の対象からは外れます。暴力そのものへの対応は警察が中心になり、子にこころの不調や依存の問題がうかがわれる場合は、保健所や精神保健福祉センターが家族からの相談に応じています。働いていない・生活が立ち行かないといった事情があれば、市区町村の生活困窮者の相談窓口も使えます。

 警察に相談しても「家庭の問題」として扱われ、思うような対応が得られなかったという声も少なくありません。その理由と、相談の積み重ね方については次の記事で解説しています。


ひとり親だからこそ使える窓口もある

 ひとり親家庭には、ひとり親であることを前提にした相談の仕組みが用意されています。子の暴力そのものを解決する窓口ではありませんが、生活全体の相談相手として頼ることができます。

母子・父子自立支援員

 市区町村や福祉事務所には、母子・父子自立支援員が置かれており、ひとり親家庭の生活や仕事、子育ての悩みについて相談に応じています。子の暴力の問題を直接扱うわけではなくても、事情を知っている相談相手がいることで、ほかの窓口へのつなぎや手続の案内を受けやすくなります。父子家庭の方も対象です。

女性相談支援センター・女性相談支援員

 2024年4月に施行された困難な問題を抱える女性への支援に関する法律により、各都道府県の女性相談支援センターや、市区町村の女性相談支援員が、家庭の状況などから困難を抱える女性の相談に応じる体制が整えられました。自治体によっては、同居する家族との関係の悩みも相談内容として案内しています。

 母親が子の暴力から一時的に離れる必要がある場合、避難先についての相談を受けてもらえることがあります。ただし、利用できる支援の範囲は事案や自治体によって異なりますので、まずは電話で状況を伝え、どのような対応ができるかを確かめるとよいでしょう。

市区町村の福祉の総合窓口

 生活費の問題、子の就労、親の体調など、複数の困りごとが重なっている場合は、市区町村の福祉の総合窓口に相談すると、関係する部署をまとめて調整してもらえることがあります。


元配偶者や親族に頼るかどうか

 ひとり親の方の中には、離婚した元配偶者に子の状況を伝えるべきか迷う方もいます。子が18歳未満であれば、元配偶者も親であることに変わりはなく、子の引き取りや一時的な預け先として協力を求められる場面もあります。一方で、元配偶者との関係が悪い場合や、元配偶者からの暴力が離婚の理由だった場合には、連絡を取ること自体が新たな負担になるおそれがあります。

 祖父母やきょうだいなど親族に頼る場合も、暴力がその人たちに向かうことがないかを考えておく必要があります。協力を求める相手と、何をどこまで頼むのかを、あらかじめ整理しておくと安心です。


どの窓口でも役に立つ記録の残し方

 どの窓口に相談する場合でも、いつ、どのような暴力があったのかが具体的に伝わるほど、相手は状況を判断しやすくなります。ひとり親家庭では、暴力を目撃した第三者がいないことも多いため、親自身の記録が大切な手がかりになります。

  • 暴力があった日時・場所・内容を、その日のうちにメモしておくこと。
  • けがをした場合は医療機関を受診し、子から暴力を受けたことを伝えること。
  • 壊された物や、けがの写真を撮っておくこと。
  • 警察や行政に相談した日と、担当者の名前・対応内容を控えておくこと。


 記録は、後に被害届を出すかどうか、子に家を出てもらうかどうかといった判断の場面でも意味を持ちます。


一時的に親が家を離れるという選択

 暴力が続いているときは、親が一時的に家を出て、子と距離を取ることも選択肢の一つです。子を残して家を出ることに罪悪感を覚える方もいますが、心身に問題のない成人の子であれば、親が自分の身を守るために離れることが直ちに法的な問題になる場面は限られると考えられます。

 ただし、子が18歳未満である場合や、子に病気や障害があり自分で生活することが難しい場合は事情が異なります。家を離れる前に、児童相談所や保健所、弁護士などに相談し、子の生活をどう確保するかをあわせて検討しておくことが大切です。


弁護士に頼れること

 警察は事件への対応、行政は制度に沿った支援が中心になるため、それぞれの家庭の事情に合わせて継続的に関わり続けることは難しい面があります。弁護士は、親の代理人として子との間に入り、親に代わって子と話し合う窓口になることができます。

 ひとり親家庭では、子からの要求や暴言を受け止める相手が親ひとりに集中しがちです。代理人が窓口となることで、親が子と直接やり取りしなくてよい状態をつくり、その間に生活を立て直す時間を確保しやすくなります。

 当事務所では、弁護士が親の代理人として子と向き合い、民間の自立支援カウンセラーが子の住まい探しや仕事探し、日々の生活の相談を支えるという形で、親と子それぞれの自立を目指す取り組みを続けています。暴力の傾向がある事案では、必要に応じて警察と連携しながら、安全に配慮して対応を進めます。


親自身が休める手配も忘れずに

 ひとり親の方は、子の問題に向き合いながら仕事も続けなければならないことが多く、気づかないうちに心身が限界に近づいていることがあります。親が倒れてしまえば、子の問題に対応できる人もいなくなってしまいます。

 同じ悩みを持つ家族が集まる家族会に参加する、職場に事情の一部を伝えて勤務の配慮を求めるなど、親自身が支えを得る手立ても考えておきましょう。


まとめ


  • 身の危険を感じるときは、親子の間のことであっても110番通報をためらわないでください。
  • 子が18歳未満なら児童相談所や子ども家庭相談の窓口、18歳以上なら警察や保健所などが主な相談先になります。
  • 母子・父子自立支援員や女性相談支援センターなど、ひとり親家庭や女性を対象にした窓口も頼ることができます。
  • 暴力の日時や内容、相談した経過を記録しておくと、どの窓口でも状況が伝わりやすくなります。
  • 弁護士は親の代理人として子との間に入り、親が直接やり取りしなくてよい状態をつくることができます。


 ひとり親家庭で子の暴力を受けていると、相談できる相手がいないと感じやすいものですが、実際には年齢や状況に応じて頼れる窓口がいくつもあります。ひとつの窓口で解決しなくても、複数の相談先を組み合わせることで、少しずつ状況を動かせることがあります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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