【親子問題】シェアハウスで暮らすことは、子の自立に向いている?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

子が家を出て暮らすことを考え始めたとき、一人暮らしの代わりにシェアハウスを候補に挙げるご家庭があります。初期費用を抑えやすく、家具や家電がそろっていて、ほかの入居者もいるため、いきなり一人で暮らすよりも安心できそうに見えるからです。一方で、シェアハウスに住めばそれだけで生活の力が身につくわけではなく、契約の形や子の状態によっては、かえって負担が大きくなることもあります。この記事では、シェアハウスが子の自立に向いている場面と慎重に考えたい場面、契約の前に確かめておきたい点、入居後の親の関わり方を整理します。

本記事でいう「シェアハウス」は、入居者がそれぞれ個室を借り、台所や浴室などを共用する住まいを指します。運営の形や契約の内容は物件ごとに大きく異なるため、実際の判断は個々の契約書をもとに行う必要があります。


シェアハウスが候補に挙がる理由

 親子問題のご相談では、同居を続けるうちに親子の距離が近くなりすぎ、お互いに身動きがとれなくなっている例が少なくありません。こうした場合、子が家を出て暮らすことは、関係を立て直すきっかけの一つになり得ます。
 その住まいとしてシェアハウスが挙がる理由は、主に次のような点にあります。

  • 家具や家電が備え付けられている物件が多く、入居時の費用を抑えやすいです。
  • 共用部の清掃やゴミ出しのルールがあり、生活の枠組みがある程度用意されています。
  • ほかの入居者や管理人がいるため、完全に一人きりになることを避けられます。
  • 短い期間から契約できる物件もあり、まず試してみる住まいとして使いやすい面があります。


 また、NPO法人などが、家庭や施設を離れた若者の生活の力を育てる目的でシェアハウスを運営する取り組みも、各地で報じられています。共同生活を通じて家事や金銭管理を学ぶ場として、シェアハウスという形が注目されていることがうかがえます。

住まいの形だけで自立が進むわけではない

 当事務所が親子問題で考える「自立」は、仕事や公的な制度を含めて収入を得る手段を確保し、支出を管理しながら、自分の生活を維持していける状態を指します。シェアハウスは、その練習の場になる可能性がある一方で、住まいを変えただけで仕事や金銭管理の力が身につくわけではありません。
 一般的な一人暮らしと比べると、次のような違いがあります。

観点シェアハウス一般的な一人暮らし
初期費用抑えやすい物件が多い敷金・礼金・家具家電などがかかりやすい
家事共用部のルールはあるが、料理などは本人次第すべて自分で行う必要がある
人との関わり日常的にほかの入居者と接する自分から関わらない限り少ない
孤立のしにくさ周囲の目がある程度ある異変に気づかれにくいことがある
起きやすいトラブル共用部の使い方・騒音・入居者間の摩擦近隣や管理会社との関係が中心
契約期間短期の契約や更新のない契約もある2年程度の普通借家契約が多い


 表のとおり、シェアハウスには一人きりになりにくいという利点がある反面、他人と生活空間を分け合う負担もあります。どちらが向いているかは、子の性格や今の生活の状態によって変わります。

向いている場面・慎重に考えたい場面


向いていると考えられる場面


  • 他人と同じ空間で過ごすことに強い抵抗がなく、あいさつ程度の関わりが負担にならない場合です。
  • アルバイトや就労などで、家賃の一部でも自分で払える見通しがある場合です。
  • 一人暮らしへの不安が大きく、まずは周囲に人がいる環境で生活に慣れたい場合です。
  • 生活のリズムがある程度整っており、共用部のルールを守れそうな場合です。


慎重に考えたい場面


  • 人と顔を合わせることに強い負担を感じ、台所や浴室などの共用部を使えなくなるおそれがある場合です。
  • 気持ちが高ぶると大声を出したり物に当たったりする傾向があり、入居者とのトラブルにつながりやすい場合です。
  • 金銭管理が難しく、家賃の滞納から短い期間で退去を求められるおそれがある場合です。
  • 通院や服薬が欠かせず、体調の変化に周囲が気づきにくい環境では不安が残る場合です。


 慎重に考えたい場面に当てはまっても、シェアハウスを選べないということではありません。生活を見守る支援者が付く、管理人が常駐する物件を選ぶなど、環境の組み合わせによって負担を減らせることもあります。

契約の前に確かめておきたいこと

 シェアハウスの契約は、物件によって形がさまざまです。トラブルが起きたときに誰が責任を負うのかは、契約の内容によって大きく変わります。

誰が契約者になるのか

 子本人が契約者になるのか、親が契約者になって子を住まわせるのかで、後の責任の範囲が変わります。親の名義で契約すると、家賃の滞納や設備の損傷について、親が貸主に対して責任を負う立場になります。子が自分の名前で契約し、家賃を自分で払う形のほうが、自立の練習という目的には近いといえます。
 親が保証人になる場合、個人が継続的な取引の保証(根保証)を引き受けるときは、保証の上限額である極度額を定めなければ効力が生じないとされています(民法465条の2)。保証を引き受ける前に、上限額と保証の範囲を確かめておくことが大切です。

【親子問題】家を借りる際の保証人・保証会社の問題|無職の子のために親が引き受ける前に

契約期間と更新の有無

 シェアハウスでは、更新のない定期建物賃貸借(借地借家法38条)が使われることもあります。この場合、期間が満了すると契約が終わり、住み続けるには改めて契約を結ぶ必要があります。しばらく住めると考えていたのに、次の住まいを急いで探すことにならないよう、期間と再契約の条件を確認しておきます。

入居者ごとの個別契約かどうか

 運営会社が入居者一人ひとりと契約する形のほか、複数人で一軒家を借りて分け合う形もあります。後者では、ほかの入居者が払わなかった家賃を残った人が負担せざるを得なくなる場合があると、弁護士が解説している例もあります。同じ解説では、トラブルを防ぐために規約やルールを定めた書面が欠かせないとも指摘されています。共用部の使い方や退去時の取り決めが書面になっているかどうかは、物件を選ぶ際の目安の一つになります。

「自立支援」をうたう施設型のシェアハウス

 自立支援を目的とした寮やシェアハウスの中には、親が契約し、高額な費用を支払う形のものもあります。過去には、本人の同意なく施設に連れて行ったとして運営業者に賠償を命じた判決や、親が多額の費用を支払った後に業者が破産したことが報じられた例もあります。
 契約するのが親で、支援を受けるのが子という構造には特有のリスクがあります。本人の意思、費用と解約の条件、実際に誰が支援を担うのかを、事前に確かめておくことが欠かせません。

【親子問題】民間の自立支援施設を選ぶ前に確認すべきこと|契約・担い手・解約・本人の意思

入居した後の親の関わり方

 入居後に、家賃の滞納や共用部の使い方、騒音などをめぐって、運営会社から連絡が来ることがあります。親が契約者や保証人になっていなければ、トラブルの当事者はあくまで子本人です。親がすぐに代わりに謝ったり支払ったりすると、子が自分で対処する機会を失うことにもなりかねません。
 ただし、子が契約の内容を理解しないまま退去を迫られている、本来の範囲を超える費用を請求されているといった場合には、早めに第三者を入れて整理したほうがよいこともあります。退去時の原状回復について、通常の使用による傷みや経年による変化は借主の負担に含まれないのが原則です(民法621条)。
 また、入居後の連絡の頻度や方法をあらかじめ決めておくと、干渉しすぎることを避けながら、異変にも気づきやすくなります。

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シェアハウスを最初の一歩にするための準備

 シェアハウスを自立に向けた住まいとして使うなら、入居の前に次の点を親子で、あるいは支援者を交えて決めておくと、その後の見通しが立てやすくなります。

  1. 物件の見学には子本人が行き、自分で住む場所を選びます。
  2. 家賃や生活費を親がどこまで、いつまで負担するかを決めて伝えます。
  3. 契約者と保証人を誰にするかを決め、契約書を本人と一緒に確認します。
  4. 困ったときに子がまず相談する先(管理人や支援者など)を決めておきます。
  5. シェアハウスの次にどこで暮らすか、おおまかな目安を話し合っておきます。


 親からの経済的な援助は、期間と金額をあらかじめ区切っておくと、子にとっても次の目標が見えやすくなります。援助を続けるうちに終わりの時期が曖昧になると、住まいが変わっても親子の依存関係が形を変えて残ってしまうおそれがあります。

当事務所の取り組み

 当事務所では、子の暴力や金銭の要求、ひきこもりなどに悩む親御さんの代理人として弁護士が介入し、民間の自立支援カウンセラーとチームを組んで対応しています。弁護士は親御さんへの攻撃や過度な要求を受け止める窓口となり、カウンセラーは家探しや仕事探し、生活保護の申請のサポート、日々の金銭管理など、子の生活の基盤づくりを支えます。
 家を出た後も、少なくとも半年程度をサポートの期間として考え、収入を得る手段の確保や支出の管理を一緒に進めていきます。どのような住まいが合うかは子の状態や家庭の事情によって異なるため、ご事情を伺ったうえで方針を決めています。

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まとめ

 シェアハウスは、条件が合えば自立に向けた最初の住まいとして役立つ一方、住まいを変えるだけで課題が解決するわけではありません。子が他人との共同生活に耐えられそうか、誰の名義でどのような契約を結ぶのか、家を出た後に誰がどのように支えるのかをあわせて考えることが、シェアハウスを自立の一歩として生かすうえで大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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