【親子問題】被害届を出すと家族関係はどうなるのか|出す前に考えること
成人した子に首を絞められた直後は、怖さと同時に「通報したら子は逮捕されるのか」「家族がばらばらになるのではないか」という迷いが生じやすいものです。この記事では、首を絞める行為が法律上どのように扱われるのか、通報した後に逮捕に至るのはどのような場面か、そして逮捕の有無にかかわらず親が整えておきたいことを順に整理します。
本記事は、2025年6月施行の改正刑法(懲役・禁錮を「拘禁刑」に一本化)を反映した内容です。個別の事件で逮捕や処分がどうなるかは事情によって異なり、本記事は一般的な見通しをお伝えするものです。
首を絞められた直後に優先すること
最初に考えたいのは、手続よりも身の安全です。子が興奮したまま同じ空間にいる場合は、別の部屋や屋外、近隣の知人宅などへ離れ、危険が続いていると感じるときはためらわずに110番通報をしてください。通報の際は「首を絞められた」という事実と、子がいまどこにいるか、刃物などを持っていないかを簡潔に伝えると、警察が状況を判断しやすくなります。通報のタイミングや伝え方は【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかでも解説しています。
次に、医療機関の受診です。首は気道や太い血管が通る部位で、外から見える跡が薄くても、のどの痛み、声のかすれ、飲み込みにくさ、頭痛などが後から出てくることがあります。受診の際に「子に首を絞められた」と経緯を伝えておくと、診療録に記録が残り、後に診断書が必要になったときにも経緯との結びつきが分かりやすくなります。病院での伝え方は【親子問題】子の暴力でけがをした|病院で何をどう伝えるかで詳しく取り上げています。
首を絞める行為はどの罪にあたるのか
| 罪名 | おおまかな目安 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 暴行罪(刑法208条) | 首を絞めたが、けがに至らなかった場合 | 2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留または科料 |
| 傷害罪(刑法204条) | 首にあざや痛みが残るなど、体に変化が生じた場合 | 15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 殺人未遂罪(刑法199条・203条) | 絞め方の強さや時間、言動などから殺意があったと評価される場合 | 死刑、無期または5年以上の拘禁刑(未遂のため減軽されることがある) |
表のとおり、同じ「首を絞める」行為でも、結果と態様によって検討される罪名が変わります。けがの有無は傷害罪にあたるかどうかに関わり、意識が遠のくほど強く長く絞められた、「殺す」と言いながら絞められたといった事情があれば、殺人未遂として捜査されることもあります。どの罪名で扱うかは捜査機関が証拠をもとに判断するもので、被害を受けた親が決めるものではありません。
首への攻撃は、殴る・押すといった行為と比べて、短い時間で重大な結果につながりうる行為として受け止められる傾向があります。「跡が残っていないから大したことはない」と自分で線を引かず、起きたことをそのまま警察や医療機関に伝えることが大切です。
親子の間でも事件として扱われる
刑法には、親子など一定の親族の間で起きた窃盗や詐欺などの財産犯について刑を免除する特例(刑法244条など)がありますが、暴行や傷害といった体への攻撃にはこの特例は及びません。親子であることを理由に罪が成立しなくなったり、刑が軽くなったりする仕組みはなく、他人から首を絞められた場合と同じ枠組みで扱われます。詳しくは【親子問題】親子間の暴行・傷害は立件されるのか|特例が及ばない範囲をご覧ください。
また、暴行罪や傷害罪は、被害者からの告訴がなければ起訴できない「親告罪」ではありません。そのため、親が被害届を出していない段階でも、警察が事件として捜査を始めることがあります。一方で、過去に相談した際に「親子げんかでは動けない」と言われた経験がある方もいるでしょう。そうした対応の背景は【親子問題】「家庭の問題」と言われて警察が動かないのはなぜかで整理していますが、首を絞められたという申告は、警察としても軽く扱いにくい内容です。
通報したら子は逮捕されるのか
結論から言うと、通報すれば必ず逮捕されるわけではなく、逮捕されないとも言い切れません。逮捕するかどうかは、事件の重さに加えて、逃げたり証拠を隠したりするおそれがあるか、被害者にさらに危害を加えるおそれがあるかといった事情を、警察が総合的にみて判断します。
その場で逮捕される場面
警察官が駆けつけた時点で暴力が続いている、子がまだ興奮していて親への攻撃が再び起こりそうだ、首に明らかな跡があるといった状況では、現行犯として逮捕されることがあります。同居している親子の場合、加害者と被害者が同じ家に戻ることになるため、再び危害が加えられるおそれが重く見られやすい点も特徴です。
逮捕されずに捜査が進む場面
子がすでに落ち着いていて事実を認めている、けがが軽い、親が別の場所に避難できているといった事情があれば、その場では逮捕せず、後日、警察署で話を聞く「在宅」の形で捜査が進むこともあります。この場合も、捜査が終わるまでの間に暴力が繰り返されれば、改めて逮捕が検討されます。
親の意向はどう扱われるか
「処罰までは望まない」「家から離れてほしいだけ」といった親の気持ちは、警察や検察も聞き取り、判断の材料にします。ただし、親告罪ではないため、親の意向だけで捜査が止まるとは限りません。気持ちが揺れている場合も、起きた事実は正確に伝えたうえで、自分の希望は希望として分けて伝えるのがよいでしょう。被害届を出すかどうかの考え方は【親子問題】被害届を出すと家族関係はどうなるのか|出す前に考えることもあわせてご覧ください。
逮捕された場合のおおまかな流れ
- 逮捕から48時間以内に、警察が事件を検察官に送るかどうかを決めます。
- 送致を受けた検察官は、24時間以内に勾留を請求するか、釈放するかを決めます。
- 勾留が認められると原則10日間、延長されるとさらに最大10日間、身柄の拘束が続くことがあります。
- その後、検察官が起訴するか、不起訴とするかを決めます。
途中で釈放されることもあり、その場合、子が自宅に戻ってくる可能性があります。逮捕された直後は「これで一段落した」と感じやすいのですが、親にとっては、釈放や処分の後に子がどこで暮らすのかを考えておく期間でもあります。成人した子の刑事手続で親が関われる範囲は【親子問題】成人した子の刑事事件で親ができること・できないことで解説しています。
通報をためらうときに整理しておきたいこと
「逮捕されたら子の将来に響くのではないか」「親が通報したと知れば、余計に恨まれるのではないか」と考えて、通報や相談をためらう方は少なくありません。その気持ち自体は自然なものですが、首を絞められるという出来事は、次に同じことが起きた場合に取り返しがつかなくなるおそれを含んでいます。通報は子を罰するためだけのものではなく、親の命と体を守るための手段だと捉えてみてください。
すぐに通報する状況ではない場合でも、警察への相談記録を残しておくことには意味があります。相談の事実が記録に残っていれば、次に何か起きたときに、警察がそれまでの経緯を踏まえて対応しやすくなります。あわせて、日時・場所・何をされたか・そのときの言葉を手元のメモに残し、写真や受診記録とともに保管しておくと、後の手続で状況を説明しやすくなります。記録の残し方は【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録で詳しく取り上げています。
また、子が釈放されて戻ってくる場面や、通報したことで子の怒りが強まる場面に備えて、一時的に親が家を離れる選択肢も考えておくと安心です。避難先の考え方は【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択をご覧ください。
警察や行政だけでは届きにくい部分
親子の間の暴力には、夫婦や交際相手の間の暴力に使われるDV防止法の保護命令の仕組みが及びません。被害を受けた親が65歳以上の場合は、高齢者虐待防止法にもとづいて市町村や地域包括支援センターが関わる道があります(【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組み)。とはいえ、警察は事件の処理、行政は決められた制度の範囲での対応が中心となり、子が家を出て生活を立て直すところまでを継続して支える役割は担いにくいのが実情です。
当事務所では、弁護士が親の代理人として子と向き合い、親への暴力や金銭の要求を受け止める窓口になる一方で、民間の自立支援カウンセラーが住まい探しや仕事探し、日々の金銭管理など子の生活面を支える形で、チームとして対応しています。事案によっては警察と連携を取りながら、安全に配慮して自宅を訪問し、子と直接話をすることもあります。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
よくあるご質問
首に跡が残っていなくても、警察に相談してよいですか
相談して差し支えありません。跡が見えなくても首を絞められたという事実は暴行にあたりうるもので、後から症状が出ることもあります。相談と並行して受診しておくと、状況を説明する材料が増えます。
通報した後に「やはり処罰は望まない」と伝えたらどうなりますか
親の気持ちは判断の材料として考慮されますが、それだけで捜査や処分が決まるわけではありません。気持ちが変わった場合は、事実を撤回するのではなく、現在の希望として警察や検察に伝えることになります。
逮捕されなかった場合、子との同居を続けるしかありませんか
逮捕の有無と、同居を続けるかどうかは別の問題です。親が一時的に避難する、子に家を出てもらう方向で話し合うなど、刑事手続とは別に住まいを分ける道があります。
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ご相談について
成人した子に首を絞められたとき、通報して逮捕に至るかどうかは状況によって異なりますが、どの場合でも、まず親が安全な場所を確保し、起きたことを記録に残しておくことが、その後の選択肢を広げます。逮捕を望むかどうかに迷っている段階でも、親の安全と子の今後をどう両立させるかを一緒に考えることができます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


