【親子問題】子がローンで車を買い、支払いを親に求めてくる|親に返済義務はあるのか
子の暴力やひきこもり、お金の無心といった問題が長く続くと、その対応をめぐって夫婦の考えが食い違い、離婚という言葉が頭に浮かぶことがあります。「この先も夫婦で続けていけるのか」と感じる一方で、離婚したら子はどちらが引き受けるのか、生活費は誰が出すのか、子が住んでいる家はどうなるのかが分からず、話を先へ進められないという方も少なくありません。
この記事では、子の問題がきっかけで夫婦が離婚を考えたときに、子の扱いが法律上どう整理されるのかを、子が18歳未満の場合と成人している場合に分けて説明します。あわせて、離婚の話し合いで決めておきたいことや、離婚の前に考えておきたい点も取り上げます。
この記事は、2026年4月1日に施行された改正民法(離婚後の親権、養育費、財産分与などの見直し)を前提に記載しています。個別の事情によって結論が変わることがあるため、具体的な対応は専門家にご確認ください。
離婚しても、親と子の関係は続く
夫婦が離婚すると、夫婦の間の法律関係は終わります。一方で、親と子の関係は離婚によって変わりません。子から見れば父も母も引き続き親であり、親子としての法律上の関係もそのまま残ります。
そのため、次の点は離婚の後も両親それぞれに残ります。
- 親と子が互いに扶養する義務(民法877条1項)。
- 子が両親それぞれの相続人になる立場。
- 子の問題について、親として関係機関などから連絡を受ける場面。
離婚は夫婦の関係を整理する手続であって、子の問題を片方の親から切り離す手続ではありません。この点を前提に置いておくと、離婚で何が変わり、何が変わらないのかを見通しやすくなります。
子が18歳未満か成人しているかで、決めることが変わる
成年年齢は18歳です。離婚の際に夫婦が決める事項は、子が18歳未満か18歳以上かで大きく異なります。
| 項目 | 子が18歳未満の場合 | 子が18歳以上の場合 |
|---|---|---|
| 親権者 | 離婚の際に定める必要がある | 定める必要はない |
| 子がどちらの親と暮らすか | 親権者・監護者を中心に夫婦で決める | 基本的に子自身が決める |
| 生活費の負担 | 養育費として取り決めるのが通常 | 自立できない事情があれば分担を取り決めることがある |
子が18歳未満の場合
未成年の子がいる夫婦が離婚するときは、親権者を定める必要があります。2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚後も父母の双方を親権者とする共同親権と、一方だけを親権者とする単独親権のどちらかを選べるようになりました。夫婦の話し合いで決まらないときは、家庭裁判所が子の利益の観点から定めます。子の心身に害が及ぶおそれがある場合や、一方の親が他方から暴力などを受けるおそれがある場合には、単独親権とされます。
子の暴力や非行が問題になっている家庭では、どちらの親が日常の世話を担うのか、学校や医療機関とのやり取りを誰が行うのかを具体的に決めておくことが大切です。養育費も同時に取り決めるのが通常です。改正法では、取り決めをしないまま離婚した場合でも、子を監護する親が他方の親に一定額の養育費(法定養育費)を請求できる仕組みが設けられました。
子が成人している場合
子が18歳以上であれば親権はすでに終わっているため、離婚の際に親権者を決める必要はありません。家庭内暴力やひきこもりの相談では、子が20代から50代であることも珍しくなく、この場合は「どちらの親が子を引き取るか」を法律上決める手続はありません。
ただし、成人していても、病気や障害などの事情で自分の力で生活できない子は「未成熟子」として扱われ、生活費の分担を夫婦で取り決めることがあります。養育費の終わりは年齢で一律に決まるものではなく、子が独立して生活できるようになった時点が目安とされています。離婚の時点で取り決めがなくても、成人した子自身が親に対して扶養料を求める手続をとることもあります。障害のある子をもつ親から「成人後も両親それぞれに扶養の義務が残るのか」「成人後のことを離婚の時点で取り決めておけるのか」といった相談が寄せられるのも、このためです。
成人した子に対して親がどこまで生活を支える義務を負うのかについては、【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで詳しく説明しています。
離婚の話し合いで、子について決めておきたいこと
成人した子について親権者を決める必要はないとはいえ、子の問題が離婚のきっかけになっている場合、子に関わる事柄を何も決めないまま離婚すると、後になって元夫婦の間で負担の押し付け合いが起きやすくなります。特に次の点は、話し合いの段階で整理しておくことをおすすめします。
- 子がどちらの親の家で暮らすのか、あるいは独立を目指すのか。
- 子の生活費や医療費を、どちらがどの程度負担するのか。
- 子が住んでいる自宅を、財産分与でどう扱うのか。
- 子から金銭を求められたときや問題が起きたときに、どちらが窓口になるのか。
- 親が亡くなった後の子の生活に、それぞれがどう備えるのか。
子がどちらの親と暮らすか
成人した子がどこに住むかは、本来は子自身が決めることです。夫婦の間で「子は母親の家で暮らす」と取り決めても、子がその通りにするとは限りません。実際には、自宅に残った親のもとに子が住み続け、家を出た親は子と離れて暮らすという形になりやすい傾向があります。
自宅に残る親が、子の暴力や金銭の要求に一人で向き合うことになる場合は、離婚の前にその負担を見積もっておく必要があります。同居を続けることが難しいときには、子に家を出てもらうことを考える場面もあります。この点は【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しで解説しています。
生活費や医療費の分担
自立が難しい成人の子の生活費は、扶養の問題として、両親の収入や資産、子の状態などをもとに分担を考えます。離婚した後も両親それぞれに扶養の義務が残るため、子と同居しない親であっても、事情によっては分担を求められることがあります。
金額や支払い方法を離婚の際に取り決めておけば、後の紛争を減らすことにつながります。取り決めは口約束にせず、離婚協議書や公正証書、調停調書などの書面に残しておくのが望ましいでしょう。もっとも、子の状態や両親の収入が変われば見直しが必要になることもあり、将来の状況をすべて固定できるわけではありません。
子が住んでいる自宅の扱い
婚姻中に夫婦が協力して得た自宅は、名義がどちらであっても、原則として財産分与の対象になります。改正民法では、離婚後に財産分与を請求できる期間が2年から5年に延びました。
子が住んでいる自宅を夫婦の一方が取得する場合、その親が子との同居を引き受けることになりやすい点に注意が必要です。反対に、自宅を売却して代金を分ける場合は、子が転居しなければならなくなります。子がすぐに住まいを移せる状況にない場合は、売却の時期や子の転居先の確保もあわせて考えておく必要があります。
子のために支払ってきたお金
子の借金の肩代わりや、子にせがまれて渡したお金が多額にのぼっている家庭もあります。婚姻中に夫婦の財産から支払ったお金はすでに使われているため、財産分与の場面で取り戻すことは一般に難しいと考えられます。ただし、夫婦の一方が他方に知らせずに多額の預金を子に渡していた場合など、事情によっては財産分与の中でどう考慮するかが問題になることもあります。
子の問題は、離婚の理由として認められるのか
夫婦が話し合いで離婚に合意すれば、離婚届を出すことで協議離婚が成立し、離婚の理由は問われません。家庭裁判所の調停でも、合意ができれば離婚は成立します。
これに対し、一方が離婚に応じず裁判になった場合は、民法が定める離婚の原因があるかどうかが判断されます。子への対応をめぐる意見の違いは、それだけで「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると判断されることは多くありません。ただ、その対立をきっかけに夫婦の信頼関係が失われて長期間の別居が続いている場合や、配偶者からの暴力や暴言がある場合などには、ほかの事情とあわせて婚姻関係が破綻していると判断されることがあります。
子をかばう親と、子に厳しく向き合おうとする親とで方針が分かれる場面については、【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときもあわせてご覧ください。
離婚の前に考えておきたいこと
子の問題を理由とする離婚は、夫婦の関係を整理するうえでの一つの選択肢です。ただし、離婚によって子の問題そのものが解決するとは限らない点には注意が必要です。
負担が一方の親に集中するおそれ
離婚後に子と同居を続ける親は、それまで夫婦で分け合っていた子への対応を一人で担うことになります。子の暴力や金銭の要求がある場合、その矛先が同居する親に向かいやすくなるおそれもあります。離婚後の生活の見通しを立てる際には、同居する親の安全や、相談できる先を確保しておくことが欠かせません。
子の受け止め方への配慮
子が「親の離婚は自分のせいだ」と受け止めたり、反対に一方の親を強く責めたりして、状態が不安定になることもあります。離婚を子に伝える時期や伝え方、伝える役割をどちらが担うかを、夫婦の間で事前に話し合っておくとよいでしょう。
まず別居という形をとる選択
すぐに離婚まで決めきれない場合は、まず別居して距離を置くという選択もあります。別居中も夫婦である以上、収入の多い側が少ない側に生活費(婚姻費用)を分担する義務があり、その中には自立していない子の生活費も含まれます。
子の暴力から身を守るために一方の親が家を離れることを考えている場合は、【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択も参考にしてください。配偶者にも子の暴力が及んでいる場合の対応は、【親子問題】きょうだいや配偶者にも暴力が及んでいる場合で説明しています。
離婚した後に子の問題が起きたとき
離婚した後も、子の問題が続くことは珍しくありません。子から金銭を求められたときに応じるかどうかは、それぞれの親が判断することです。一方の親が応じ続けていると、子がもう一方の親にも同じ要求を向けることがあるため、離婚の後も最低限の情報を共有できる関係を保っておくと、対応をそろえやすくなります。
ただし、元配偶者との関係によっては、連絡を取ること自体が負担になる場合もあります。離婚した相手にどこまで子のことを伝えるべきかについては、【親子問題】離婚した元配偶者に子の問題を伝えるべきか|伝える場面・伝えない場面をご覧ください。
また、親が亡くなった後に子の生活をどう支えるかも、離婚した両親がそれぞれ考えておく必要があります。離婚した元配偶者は相続人になりませんが、子は両親それぞれの相続人になります。この点は【親子問題】親亡き後問題|子の生活をどう設計しておくかで取り上げています。
子の問題そのものへの対応も、あわせて検討する
子の問題を抱えたまま離婚を考える場合、離婚の条件と子への対応を切り分けて考えることが難しく、話し合いが進まなくなることがあります。弁護士に相談することで、離婚の手続や財産分与、子の生活費の分担といった法律上の論点を一つずつ整理できます。
当事務所では、子の暴力やお金の無心に悩む親の代理人として子との間に入り、自立支援カウンセラーと連携しながら子の独立を支える取り組みを行っています。離婚を決める前に、子の問題そのものへの対応を検討したいという場合もご相談ください。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応で紹介しています。
子の問題で夫婦が離婚を考えるときは、離婚によって変わることと変わらないことを分けたうえで、子の住まいや生活費、自宅の扱いを具体的に話し合っておくことが、離婚後の負担を減らすことにつながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


