ストーカートラブルに遭ったら絶対にやってはいけない5つのこと|早期・穏便に解決するために

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

 「別れた相手からしつこく連絡が来る」「行く先々で待ち伏せされている」「教えていないのに居場所を知られている」——。こうした行為に不安を感じながらも、「大げさにしたくない」「自分にも原因があるのかも」とためらい、一人で抱え込んでしまう方は少なくありません。
 しかし、ストーカー被害は、対応を誤ると加害者を刺激し、かえってエスカレートしてしまうという特徴があります。だからこそ、「何をするか」と同じくらい、「何をしてはいけないか」を知っておくことが、身の安全を守り、早期かつ穏便に解決するための鍵になります。
 この記事では、ストーカー被害の実情を整理したうえで、被害に遭ったときに絶対にやってはいけない5つのことを解説します。
 今まさに追いかけられている・危害を加えられそうなど、身の危険を感じる場合は、迷わず110番通報してください。
緊急ではないものの相談したい場合は、警察相談専用電話「#9110」も利用できます。

ストーカー被害の実情

ストーカー規制法とは——「つきまとい等」と「位置情報の無承諾取得」

 ストーカー行為は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」で規制されています。この法律は、1999年の桶川ストーカー殺人事件をきっかけに2000年に制定され、その後も痛ましい事件のたびに改正が重ねられてきました。
 規制の対象となるのは、恋愛感情や、それが満たされなかったことへの怨恨(えんこん)などの感情を満たす目的で、特定の相手やその関係者に対して行われる次の行為です。

  • つきまとい等:待ち伏せ・尾行、自宅や職場・学校での見張りや押し掛け、面会や交際の要求、無言電話、拒否しているのに繰り返される電話・メール・SNSメッセージ、汚物などの送付、名誉を害する事項の告知、性的羞恥心を害する行為 など
  • 位置情報の無承諾取得:相手の承諾なくGPS機器などで位置情報を取得したり、持ち物にGPS機器を取り付けたりする行為

 このうち位置情報に関する規制は、2021年(令和3年)の法改正で新たに追加されたものです。同じ改正で、「実際に相手が今いる場所」付近での見張り等や、拒まれたのに連続して手紙を送る行為も、規制対象に加わりました。
 また、2016年の改正では、SNSやメッセージアプリでの連続送信が対象に加えられ、ストーカー行為の処罰に被害者の告訴が不要(非親告罪)とされています。
 これらの行為が反復して行われると「ストーカー行為」となり、処罰の対象になります。

警告→禁止命令→刑事罰という「段階的」な仕組み

 ストーカー規制法は、被害の深刻度に応じて、警察の対応が段階的に強まる構造になっています。

  1. 警告:被害者の申し出により、警察が加害者に「つきまとい等をやめるように」と求める行政上の措置です。
  2. 禁止命令等:警告に従わない場合などに、公安委員会が発する、法的拘束力のある命令です。有効期間は原則1年で、延長も可能です。
  3. 刑事罰:ストーカー行為をした者は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、禁止命令に違反してストーカー行為をした者は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象となります。

 なお、待ち伏せや見張りといった行為が、住居侵入罪・脅迫罪・暴行罪・不同意わいせつ罪など、別の犯罪に該当することもあります。

統計が示す「決して他人事ではない」現実

 警察庁の統計によると、全国のストーカー事案の相談等件数は、令和6年(2024年)で19,567件と、依然として高い水準で推移しています。被害者の多くは女性で、公的統計では相談者のおおむね8割以上を占めるとされ、20代・30代が中心です。
 見過ごせないのは、ストーカー被害が重大な事件に発展しうるという点です。報道では、全国のストーカー相談のうち年2,000件以上が殺人・傷害・性犯罪などの事件に発展しているとされ、2026年には東京都豊島区の商業施設で、禁止命令を受けていた加害者が女性を殺害したと報じられた事件も起きています。
 こうした実情があるからこそ、「たいしたことない」と自己判断せず、早い段階で正しく動くことが何よりも大切です。

ストーカー被害で絶対にやってはいけない5つのこと

1. 自分一人で、相手と直接やり取りして解決しようとする

 もっとも避けたいのが、加害者本人と直接連絡を取り、話し合いや説得で解決しようとすることです。
 「きちんと話せば分かってくれるかも」「復縁を断れば諦めるはず」と考えて連絡すると、相手はそれを**「まだ関係が続いている」「反応してくれた」という誤ったサイン**と受け取り、行為が強まることがあります。ストーカー加害者の思考は、被害者側の常識とは異なることが多く、善意の対応が逆効果になりがちです。
 やり取りは、警察や弁護士といった第三者を通じて行うのが安全です。特に弁護士が代理人として間に入れば、あなた自身が矢面に立たずに、相手への働きかけを進めることができます。

2. 相手を刺激するような対応をする

 感情的な反応や、相手を追い詰めるような行動も、状況を悪化させることがあります。

  • 急に強く責めたり、怒鳴ったりすると、逆上を招くおそれがあります。
  • SNSで加害者を名指しで告発・晒すことは、相手を強く刺激し、報復のきっかけになりかねません。
  • 共通の知人など第三者に説得を頼むと、その協力者にまで危害が及ぶリスクがあります。

 一方で、これまで応じていた連絡を、自己判断で突然すべて断つことが刺激になる場合もあります。「どのタイミングで、どのように距離を取るか」は、リスクを見極めながら慎重に判断すべきであり、だからこそ専門家に相談しながら進めることが重要です。

3. 証拠を捨てる・消す

 「思い出したくない」「気持ち悪いから消したい」という気持ちは自然なものですが、証拠を消してしまうことは、後の対応を大きく不利にします。
 警察に警告や禁止命令を求めるにも、加害者を処罰するにも、「いつ・誰から・どのような行為をされたか」を示す客観的な証拠が欠かせません。実際に、相談のときには被害を裏づけるLINEやメールを削除してしまっていて、「男女間のもつれ」として扱われ、思うように動いてもらえなかった、という例もあります。
 次のようなものは、消さずに保存してください。

  • LINE・メール・SNSのメッセージ、着信履歴(無言電話は日時を記録)
  • 送られてきた手紙・贈り物・不快なもの
  • 待ち伏せや見張りの様子(写真・動画・日時のメモ)
  • 被害の経緯を時系列でまとめたメモ

4. 「そのうち収まるだろう」と放置・我慢する

 被害を軽く見て、様子見のまま放置することも危険です。
 ストーカー行為は、時間の経過とともにエスカレートし、重大な事件に発展することがあります。前述のとおり、相談件数のうち相当数が実際の犯罪に至っています。「まだ被害と呼べるほどではない」と感じる段階でも、記録を残し、相談先を確保しておくことが、被害の拡大を防ぎます。
 なお、金銭や男女間のトラブルと見なされると、警察がすぐには動きにくい(民事不介入)場合もあります。しかし、それは「相談しても無駄」という意味ではありません。早い段階で相談し、証拠を整えておくことで、いざというときに警察や司法が動きやすくなります。

5. 自分の居場所・行動の情報を無防備に出す

 最後に、自分の情報の管理です。加害者に居場所や行動を把握されると、被害はより深刻になります。

  • SNSに、現在地が分かる写真や投稿をしない:背景の建物、レシート、日常の投稿などから居場所を特定されることがあります。
  • 住民票などの「閲覧制限(支援措置)」を活用する:警察や配偶者暴力相談支援センターなどに相談のうえ手続きをすることで、加害者が住民票などから住所を調べることを防げます。引っ越しを予定している場合は、転居前に相談しておくのが安全です。
  • 引っ越しや連絡先の変更だけで「解決した」と思い込まない:居場所を突き止められれば被害は再発しえます。安全確保と並行して、根本的な解決に向けた相談を進めてください。

実際に起こっているケース

 以下は、公的機関の公表資料や一般的な相談傾向をもとに整理した典型例です(特定の事案を再現したものではありません)。

  • 元交際相手からの連絡型:別れた後、復縁を求めて昼夜を問わず何十回も電話やメッセージが届き、職場の前で待ち伏せされる。
  • 位置情報の無断取得型:車や持ち物に無断でGPS機器を取り付けられ、行動を把握される。
  • エスカレート型:最初は連絡だけだったものが、自宅への押し掛け、汚物の送付、危害をほのめかす言動へと発展していく。

 いずれの類型でも共通するのは、早い段階での相談と証拠の確保が、その後の展開を大きく左右するという点です。

早期かつ穏便に解決するために——弁護士にできること

 ストーカー被害は、対応が早いほど穏便に収まりやすい類型です。弁護士が関わることで、次のような対応が可能になります。

  • 警察への相談に同行する:どんな証拠を、どう整理して伝えれば警察に動いてもらいやすいかを踏まえ、被害届の提出や警告・禁止命令の申し出をサポートします。一人で警察に行くのが不安な方に付き添うこともできます。
  • 加害者への働きかけを代理する:あなたに代わって、弁護士が相手に接触の中止を求めます。相手を過度に刺激しないよう、伝える内容や方法にも配慮します。
  • 示談・慰謝料請求を進める:今後の接近禁止や連絡禁止、慰謝料の支払いなどについて交渉し、書面で取り決めます。
  • 身元の特定に協力する:無言電話の発信元や、匿名の加害者の特定に向けて、必要な手続きを検討します。

女性のためのご相談を——弁護士法人若井綜合法律事務所

 当事務所は、東京・池袋(東池袋)と新橋に拠点を置き、10名の弁護士が在籍しています。ストーカー被害をはじめとする男女トラブルについて、穏便に、そして周囲に知られることなく解決することを得意としてきました。

  • 女性弁護士による女性専用の相談窓口を設けています。「落ち度があるように責められるのでは」という不安を抱かずに、安心してお話しいただけるよう努めています。
  • 年中無休・24時間の無料相談(電話・メール・LINE)。深夜や休日でも、ためらわずにご連絡ください。
  • 秘密は厳守し、ご相談内容が外部に漏れることはありません。

 「大げさかもしれない」とためらう段階でも、早く動くほど選べる手立ては多くなります。一人で抱え込まず、まずはご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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