【親子問題】子の交際相手が家に居着いている|第三者を家から出す

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

この記事は、2026年10月時点の法令に基づいて作成しています。2025年6月1日施行の改正刑法により懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されており、本文の法定刑はこれを反映しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は専門家にご相談ください。


「娘の交際相手が泊まりに来るようになり、気づけば半年近く家で暮らしている。生活費も出さず、注意すると娘がかばう」。親子問題のご相談では、こうした声をお聞きすることがあります。一方で、子の側からは「親は自分の交際に口を出したいだけだ」という受け止めが聞かれることもあり、家の中で親と子の考えが分かれているケースが少なくありません。

 交際相手が家から出ていかない場面について、インターネット上には「不退去罪が成立し得る」「裁判で明渡しを求められる」といった解説が多くあります。その説明自体は誤りではありません。ただ、多くは「自分が招き入れた交際相手」を前提にしており、家の持ち主である親、そこに住む子、子が招いた交際相手という三者の関係になると、見えにくくなる部分があります。

 この記事では、子の交際相手という「第三者」に家から出てもらうための考え方と手順を、親の立場から整理します。子本人に家を出てもらう場面は【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しで、鍵の交換については【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界で解説していますので、あわせてご覧ください。

子の交際相手は誰の許しで家にいるのか

 退去を求める方法を考える前に、交際相手がどのような立場で家にいるのかを確かめておく必要があります。立場によって、使える手段と注意すべき点が変わるためです。

親・子・交際相手の三者の関係

 家が親の持ち家、または親が借りている賃貸住宅である場合、子は親の許しを得てそこに住んでいるのが通常です。交際相手は、その子に招かれて家にいることになります。

 交際相手は家の持ち主である親と直接の約束をしていないことが多く、親との関係では、家に住み続ける独自の権利を持っていないと考えられる場面が多いといえます。無償で物を使わせる約束(使用貸借)は貸す側と借りる側の合意で成り立つものであり(民法593条)、借りた側は貸主の承諾がなければ第三者に使わせることができないとされているためです(同法594条2項)。

黙認していた期間が長い場合や、お金を受け取っていた場合

 ただし、親が交際相手の同居を長く黙認していた場合や、交際相手から毎月一定額を受け取っていた場合は注意が必要です。親自身が同居を認めていたと評価されたり、受け取っていたお金が家賃に当たると主張されたりすると、交際相手との間に何らかの契約関係があったかどうかが争われることがあります。家賃と評価される支払いがあれば賃貸借の問題となり、退去を求めるハードルが上がる可能性もあります。

 いつから住み始めたか、親がどのように伝えてきたか、お金のやり取りがあったかといった経緯は、早い段階でメモにまとめておくとよいでしょう。

家が賃貸住宅である場合

 親が借りている賃貸住宅では、賃貸借契約で入居者が限定されていることが多くあります。契約内容によっては、契約にない人物が住み続けていることが貸主との関係で問題になることもあるため、契約書の入居者や同居人に関する条項を一度確認しておくと安心です。

「出ていってほしい」を法的に意味のある形で伝える

 退去を求める意思は、伝え方によって後の手続での意味が変わります。口頭のやり取りだけで終わらせないことが大切です。

親から本人に、記録が残る形で伝える

 子を通じて伝えるだけでは、親の意思が交際相手に届いたのか、後から確かめることができません。退去の求めは、家の持ち主である親から交際相手本人に、日付と内容が残る形で伝えることが基本です。書面やメッセージで伝える場合は、次のような内容を盛り込んでおくと、後の話し合いや手続の土台になります。

  • 家から退去してほしいという親の意思。
  • 退去の期限と、その期限を設けた理由。
  • 家に残っている荷物の引取り方法と時期。
  • 合鍵を渡している場合は、その返却の方法。


不退去罪が問題になる場面

 刑法130条後段は、住居から退去するよう求められたにもかかわらず退去しなかった者を、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金に処すると定めています。退去を求められ、退去に必要な時間が経った後も正当な理由なく留まっている場合に問題となります。成立の考え方は退去を求められたのに帰らなかった|不退去罪はいつ成立するかで詳しく解説しています。

警察がすぐに動かないことがある理由

 子の交際相手のケースでは、警察に相談しても、その場で退去させる対応にならないことがあります。家に住む子が交際相手の滞在を望んでいると、住んでいる家族の意思が分かれている状態となり、誰の意思を基準にするかの判断が難しくなるためです。交際相手が長く生活してきた場合には、民事上の争いとして扱われやすい面もあります。

 それでも、相談した事実は記録として後の手続で意味を持つことがあります。背景は【親子問題】「家庭の問題」と言われて警察が動かないのはなぜか、記録の残し方は【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続をご参照ください。

自力で追い出すことの危うさ

 話し合いが進まないと、「鍵を替えてしまおう」「荷物を外に出してしまおう」と考える方もいらっしゃいます。お気持ちは理解できますが、こうした対応は親の側に法的な責任が生じるおそれがあります。

鍵の交換や締め出し

 法律上、裁判所の手続によらず実力で権利を実現すること(自力救済)は原則として認められていません。交際相手に住み続ける権利がないと考えられる場合でも、外出中に鍵を替えて締め出すと、損害賠償を求められるなど、かえって親の立場が不利になることがあります。

荷物を処分する・外に出す

 交際相手の私物を無断で処分したり壊したりすると、器物損壊罪(刑法261条)が問題になり得ます。荷物は一か所にまとめて保管し、引取りの期限と方法を書面で伝える形が穏当です。

子を強く責めることの影響

 交際相手を家から出すことに気持ちが向くあまり、子を強く責めてしまうと、子が交際相手とともに家を出て連絡が途絶えたり、かえって関係が深まったりすることがあります。交際相手の問題と、子との関係の問題は、分けて考えることが大切です。

話し合いで退去してもらうための段取り

 多くのケースでは、まず話し合いによる退去を目指します。状況ごとに考えられる対応の目安は、次のとおりです。

状況主に考えられる対応
子も交際相手の退去に賛成している親から交際相手に期限を示して退去を求め、合意内容を書面にする
子は反対しているが、交際相手は話し合いに応じる子を交えて期限や条件を協議し、親子の住まい方も見直す
交際相手が話し合いに応じない弁護士名での通知、占有移転禁止の仮処分、明渡請求訴訟を検討する
暴力や金銭の要求が伴っている身の安全を優先し、警察への相談・通報と並行して法的手続を進める


子との話し合いを先に置く

 子が交際相手の退去に納得していれば、手続は比較的シンプルになります。子が反対している場合には、交際相手の退去だけでなく、子自身がこの家でどう暮らすのかという点も含めて話し合う必要が出てきます。

退去期限と費用の援助、合意書

 転居先を探すには一定の時間がかかるため、現実的な猶予期間を示すと話し合いが進みやすくなることがあります。引越し費用の一部を援助する選択肢もありますが、援助をする場合は、支払いと引換えに何を約束してもらうかを合意書にしておくことが大切です。

  • 退去の期日と、期日を過ぎた場合の扱い。
  • 荷物の搬出と合鍵の返却の方法。
  • 援助する金額と支払いの時期。
  • 今後、互いに金銭の請求をしないこと(清算条項)。
  • 退去後に家を訪れないこと。


子が一緒に家を出ると言った場合

 交際相手と一緒に家を出ると子が言い出すこともあります。その場合は、子の住まいや収入の見通しを含めた「自立」の問題として考える必要があります。手順は【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順、距離を置くことの意味は【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点で解説しています。

応じてもらえないときの法的手続

 話し合いで退去に至らない場合は、裁判所の手続を検討します。時間と費用がかかるため、早めに見通しを立てておくことが大切です。

弁護士名での通知

 まずは弁護士が代理人として、退去の求めと期限を記した通知を交際相手に送る方法があります。親の意思が明確に記録として残るとともに、本人同士の直接のやり取りを減らすことができます。通知の段階で退去に応じるケースもあります。交際相手との関係で進めた例として、【解決事例】交際相手が自宅に住み着いて退去しない|弁護士介入の翌日に平穏な生活を取り戻した事例もご参照ください。

建物明渡請求訴訟と強制執行

 交際相手が退去に応じない場合、家の所有者である親は、住み続ける権利を持たない交際相手に対し、建物の明渡しを求める訴訟を起こすことができます。判決を得ても交際相手が退去しないときは、強制執行によって明渡しを実現します(民事執行法168条)。子と交際相手が同じ部屋で暮らしている場合には、誰を相手方にするかも検討が必要です。

占有移転禁止の仮処分

 訴訟の途中で交際相手が別の知人を住まわせるなどして住む人が入れ替わると、判決を得ても明渡しを実現しにくくなることがあります。これに備える手続が占有移転禁止の仮処分です。仮処分の執行後に住み始めた人に対しても、一定の場合には明渡しの強制執行ができるとされています(民事保全法62条)。申立てには担保金の準備が必要になります。

暴力や金銭の問題が伴う場合

 交際相手との同居が長くなると、暴力や金銭をめぐる問題が重なっていることもあります。その場合は、退去の手続よりも身の安全の確保を優先してください。

交際相手から親への暴力や持ち出し

 配偶者や直系血族、同居の親族の間で起きた窃盗などには刑を免除する特例があります(刑法244条)。しかし、交際相手は同居していても親族ではないため、この特例の対象にはなりません。暴行や脅迫を受けた場合はもちろん、家の金品を持ち出された場合も、警察への相談を検討してよい場面です。その場で危険を感じたときの判断は【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかをご覧ください。

子が交際相手から暴力を受けている場合

 生活の本拠を共にする交際相手からの暴力にも、DV防止法の保護命令の規定が準用されます(同法28条の2)。接近禁止命令や住居からの退去等命令を含む保護命令は、被害を受けている子本人が申し立てる手続です。親としては、子が相談窓口につながれるよう支えることが中心になります。詳しくは交際相手からのDV(デートDV)|保護命令は使える?同棲の有無で変わる対応をご参照ください。

子が未成年の場合

 子が未成年であれば、親は親権者として子の居所を指定する立場にあります(民法822条)。成人の交際相手が未成年の子の住まいに入り込んでいる場合は、子の保護の観点から警察や児童相談所への相談も選択肢になります。性的な被害が疑われる場合の窓口は【親子問題】18歳未満の子が性的搾取の被害に遭っている場合の窓口で解説しています。

弁護士とカウンセラーが関わる意味

 子の交際相手の問題は、家の明渡しという法律問題であると同時に、子の暮らし方や親子の距離の問題でもあります。

窓口を親から弁護士に代える

 弁護士が親の代理人として交際相手との窓口になることで、親が直接対峙する負担を減らし、感情的な衝突を避けやすくなります。退去の条件の交渉、合意書の作成、応じない場合の訴訟や仮処分まで、一貫して対応できる点も特徴です。依頼によって何が変わるかは【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択をご覧ください。

子の暮らしの立て直しまで視野に入れる

 交際相手が家に居着く背景に、子の収入や生活の不安定さがあることも少なくありません。当事務所では、弁護士が親側の代理人を務め、自立支援カウンセラーが子の住まい探しや仕事探しなど日常生活の支援を担う形で対応しています。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応で紹介しています。

よくあるご質問

 子の交際相手が家に居着いているご相談で、よくいただくご質問にお答えします。

交際相手の親に連絡して、引き取ってもらうよう頼んでもよいですか

 交際相手が成人であれば、その親に法的な責任はありません。連絡すること自体は一つの方法ですが、交際相手や子の反発を招くこともあります。連絡する場合は、責める調子を避け、退去への協力をお願いする形にとどめるのが穏当です。

これまでの食費や光熱費を交際相手に請求できますか

 負担について事前の取り決めがない場合、過去の分をさかのぼって請求するのは難しいことが多いと考えられます。退去までの期間の負担について取り決めるのであれば、家賃と受け取られない形に配慮しつつ、合意書の中で整理しておくのがよいでしょう。

子が「交際相手を出すなら自分も出ていく」と言っています

 子が成人であれば、家を出るかどうかは子自身が決めることになります。無理に引き留めるよりも、家を出た後の住まいや収入の見通し、連絡の取り方を一緒に確認しておくことが、その後の関係を保つうえで役立ちます。

まとめ


  1. 子の交際相手は、親との関係では家に住み続ける独自の権利を持たないことが多い(民法593条、594条2項)。
  2. 同居の黙認が長い場合や、家賃と評価され得るお金を受け取っていた場合は、契約関係の有無が争われることがある。
  3. 退去の求めは親から交際相手本人に、期限を示して記録が残る形で伝える(刑法130条後段)。
  4. 鍵の交換や荷物の処分は自力救済として問題になり得るため避ける(刑法261条)。
  5. 話し合いで退去に合意したら、期日・荷物・合鍵・清算条項を合意書にまとめる。
  6. 応じない場合は、占有移転禁止の仮処分と明渡請求訴訟を検討する(民事保全法62条、民事執行法168条)。
  7. 交際相手は親族ではないため刑法244条の特例は及ばず、暴力や持ち出しは警察への相談を検討できる。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。遠方にお住まいの方からのご相談にも対応しています。
子の交際相手が家に居着いて困っている親御さん、子の暮らしも含めて家庭の今後を考えたいご家族は、一度ご相談ください。弁護士が親御さんの代理人として交際相手との窓口を担い、必要に応じて自立支援カウンセラーと連携しながら、ご家庭の事情に合わせた対応を一緒に考えます。ご相談から自立までの流れは【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問でご確認いただけます。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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