交際関係解消時のトラブル|別れ話でもめたときの対処法を弁護士が解説

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

 「別れたいのに、相手が応じてくれない」「別れ話をした途端、態度が豹変した」——。交際関係を解消しようとする場面は、二人の感情が最もぶつかりやすく、思わぬトラブルに発展しやすいタイミングです。相手が納得しないまま関係を終わらせようとすると、金銭要求、居座り、脅し、つきまといといった問題に発展し、時には身の危険を伴うこともあります。
 この記事では、交際関係(通常の交際のほか、不倫関係・愛人関係を含みます)の解消にまつわる代表的なトラブルを7つに整理し、それぞれの法的な位置づけと対処法を総合的に解説します。今まさに困っている方も、これから別れ話を切り出そうとしている方も、まずは全体像を押さえてください。

  • 婚約・内縁でない限り、交際はいつでも自由に解消でき、別れること自体が違法になることはありません。
  • 別れを阻む脅し、金銭要求、居座り、画像による脅迫、つきまといは、いずれも犯罪となり得ます。
  • 「その場で払う・書面に署名する・自力で追い出す・直接説得する」は、いずれも事態を悪化させがちです。
  • 相手を刺激せず、証拠を残し、早い段階で弁護士や警察に相談することが、穏便かつ安全な解決につながります。

 身の危険を感じる場合は、迷わず110番を。緊急でない相談は警察相談専用電話「#9110」も利用できます。

交際関係解消時のトラブルの実情

 交際やお付き合いは、婚約や内縁(事実婚)といった法的に保護される関係でない限り、当事者が自由にいつでも解消できます。二股や心変わりが道義的に非難されることはあっても、それ自体が法律上の責任を生むわけではありません。
 問題は、別れを望まない側が関係の解消を受け入れられないときに起こります。「振られたことが許せない」「これまで尽くしたのに」といった怒りや執着が、金銭要求やつきまといといった形で表面化するのです。
 こうしたトラブルは、対応を誤ると深刻な事件へと発展することがあります。警察庁の統計によれば、2024年(令和6年)のストーカー相談等は全国で約1万9,500件にのぼり、その被害者の多くは女性です。過去には、元交際相手によるストーカー殺人事件(1999年の桶川事件、2013年の三鷹事件など)が相次ぎ、ストーカー規制法やリベンジポルノ防止法が整備される契機となりました。2013年の事件では、加害者が被害女性の私的な画像を拡散した事実も社会問題となっています。近年も、報道によれば、禁止命令が出ていた加害者が元交際相手の女性を殺害したとされる事件が起きています。
 だからこそ、「たいしたことない」と自己判断せず、早い段階で正しく動くことが大切です。以下、トラブルの類型ごとに見ていきます。

トラブル①:相手が別れてくれない

 別れを切り出しても応じてもらえず、しつこく連絡や面会を求められるケースです。相手が「別れたくない」と言うだけであれば犯罪ではありませんが、別れを阻止するために害悪を告げれば脅迫罪(刑法222条)、**義務のないことを無理やりさせれば強要罪(刑法223条)**が成立し得ます。
 「別れるなら死ぬ」という発言だけでは、ただちに脅迫にはあたりにくいものの、「自分が死んだらお前のせいにする」「別れるなら家族や会社にバラす」といった発言は、脅迫罪に該当する可能性があります。また、執拗な連絡・待ち伏せ・押し掛けが続けば、ストーカー規制法の問題になります。

トラブル②:交際期間中に払ったお金・プレゼントを「返せ」と言

 「これまでのデート代を返せ」「贈ったプレゼントを返せ」と迫られるケースです。交際期間中のデート代やプレゼントは、基本的に贈与にあたり、返す義務はありません(民法549条・550条)。すでに渡し終えた贈与は、原則として取り消せないためです。
 ただし、「貸したお金」(消費貸借)であれば返済義務が生じますし、その立証責任は請求する側にあります。また、いわゆるパパ活のお手当も、デートの報酬や贈与、あるいは性的関係の対価(不法原因給付)にあたるため、原則として返す必要はありません。
 なお、金銭要求の本当の目的が「お金」ではなく、別れを告げられた怒りや復讐心を満たすことにある場合も少なくありません。「お金で解決するなら」と安易に応じても、要求が止まらないことがあります。
トラブル③:同棲していた家から出て行ってくれない
 同棲を解消したのに、相手が居座って退去してくれないケースです。腹立たしくても、相手の外出中に鍵を交換して締め出したり、荷物を勝手に処分したりしてはいけません。日本では「自力救済の禁止」という原則があり(最高裁昭和40年12月7日判決)、法的手続きを経ない実力行使は原則として認められていません。無理に追い出せば、かえってこちらが損害賠償責任を問われたり、器物損壊罪(刑法261条)や住居侵入罪に問われたりするおそれがあります。
 また、家が自分名義であっても、相手の同居を認めていた場合には使用貸借が成立し、相手にも一定の居住権が認められることがあるため、即座に追い出すことはできません。
 正しい順序は、まず任意の退去を交渉することです。引っ越し費用を一部負担する、退去期限に猶予を持たせるといった柔軟な対応で、円満に退去してもらえることもあります。応じない場合は、建物明渡しを求める訴訟を提起し、勝訴後も居座るなら強制執行の手続きをとることになります。手続きは複雑なため、弁護士への依頼をおすすめします。

トラブル④:交際中の画像・動画で脅されている(リベンジポルノ)

 交際中に撮影された性的な画像・動画をもとに、「別れるなら拡散する」「戻ってこないとネットにばらまく」などと脅されるケースです。こうした画像を不特定多数に公開する行為は、**リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)**で処罰されます。
 同法の公表罪は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、拡散目的で第三者に提供する公表目的提供罪は1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(2025年6月の刑法改正により、法定刑は「懲役」から「拘禁刑」に一本化されました)。この法律は、2013年の三鷹ストーカー殺人事件を契機に2014年に施行されました。
 公開前であっても、画像を示して脅す行為は脅迫罪、金銭や復縁を要求すれば強要罪や恐喝罪にあたり得ます。すでに撮影自体が同意のないものだった場合は、2023年施行の撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)の問題にもなります。すでに公開されてしまった場合は、プラットフォームへの削除申請や発信者情報開示など、拡散を止める手段があります。

トラブル⑤:「職場や家族に話す」と言われている

 「別れるなら交際していたことを職場にバラす」「不倫を家族に暴露する」などと言われるケースです。こうした暴露をちらつかせて金銭を要求したり、別れを思いとどまらせようとしたりする行為は、脅迫罪・強要罪にあたり得ます。金銭を要求すれば恐喝罪の問題にもなります。
 「秘密を守ってほしければ金を払え」という構図は、典型的な恐喝です。怖くてもその場で支払いを約束せず、やり取りの証拠を残したうえで対応を検討してください。

トラブル⑥:高額な手切れ金を要求されている

 別れ話に際して「誠意を見せろ」「手切れ金を払え」と高額を求められるケースです。「手切れ金」は法律上の制度ではなく、単に別れるというだけで支払う法的義務は原則としてありません。要求されても、拒否することができます。
 もっとも、独身と偽って交際していた場合の貞操権侵害、婚約破棄、内縁の不当な解消、妊娠・中絶をめぐる責任、すでに署名した合意書がある場合などは、別の法的根拠によって支払義務が問題になることがあります。「手切れ金だから払わなくてよい」と決めつけず、相手が主張する中身を確認することが大切です。
 また、支払いを拒んでいるのに執拗に要求が続き、危害をほのめかす言動を伴う場合には、恐喝罪や強要罪が成立し得ます。もし話し合いで一定額を支払うと決めた場合でも、その場で高額を約束せず、「この支払いで全て解決する」という清算条項や、口外を禁じる守秘義務条項を盛り込んだ合意書を作成してから支払うようにしてください。

トラブル⑦:相手がストーカー化している

 別れた後、復縁を求めて昼夜を問わず連絡が来る、職場や自宅の前で待ち伏せされる、居場所を突き止められる——こうした行為はストーカー規制法の対象です。相手が元交際相手であっても、恋愛感情やその裏返しの怨恨からつきまといを反復すれば、ストーカー行為として処罰され得ます。
 近年は、GPS機器や紛失防止タグ(AirTagなど)を使った位置情報の無断取得も規制対象に加わりました。警察の対応としては、警告や禁止命令があり、2025年の改正で被害者の申告がなくても警察の職権で警告を出せるようになっています。
 つきまといや待ち伏せが始まったら、様子見をせず、早めに警察へ相談してください。

不倫・愛人関係を解消する場合の注意点

 不倫や愛人関係の解消には、通常の交際とは異なる注意点があります。
 まず、不倫の当事者同士は「共同不法行為者」の関係にあるため、別れること自体をめぐって互いに慰謝料を請求する権利は、原則としてありません。したがって、不倫相手から「別れるなら慰謝料を払え」と言われても、当然に応じる義務があるわけではありません。ただし、相手が独身と偽っていた場合などは、だまされた側が貞操権侵害を理由に慰謝料を請求できることがあります。
 一方で、別れ話がこじれると、相手が腹いせに配偶者や職場へ不倫を暴露するリスクがあります。暴露されれば、配偶者から慰謝料を請求されたり、離婚を求められたりしかねません。だからこそ、相手を無下に扱って逆恨みを招かないよう、段階を踏んで穏便に解消することが重要です。

共通する対処法——安全に、穏便に解決するために

 トラブルの種類は違っても、対処の基本は共通しています。
 第一に、身の安全を最優先にしてください。危険を感じたら迷わず110番、緊急でなければ#9110へ。
 第二に、証拠を残すこと。LINE・メール・SNSのやり取り、着信履歴、脅迫的な発言、送金の記録などは、削除せずスクリーンショット等で保全します。
 第三に、相手を直接刺激せず、自力で解決しようとしないこと。直接の説得や「それは犯罪だ」という指摘、力ずくの追い出しは、かえって相手を逆上させることがあります。
 第四に、その場で支払いを約束したり、書面に署名したりしないこと。
 そして、弁護士を代理人に立てることが、多くの場面で有効です。
 弁護士が窓口になれば、相手と直接やり取りせずに済み、それ自体が抑止力になります。不当な金銭要求は法的根拠を示して退け、必要に応じて接近禁止や画像の削除、損害賠償請求、清算条項・口外禁止条項付きの合意書作成まで、状況に応じた対応が可能です。

若井綜合法律事務所の解決実績とご案内

 当事務所は、DV・ストーカー被害、金銭トラブル、不当要求対策など、男女間のトラブルを中心に個人の相談者に寄り添ってきた法律事務所です。たとえば、パパ活の返金請求を受けていた女性について、弁護士が介入して支払額をゼロとして解決した事例もあります。
 「相手を刺激したくない」「家族や勤務先、学校に知られたくない」「別れたいのに、どう動けばいいのかわからない」。そう感じて一人で抱え込む必要はありません。周囲に知られることなく、穏便に解決することを大切にしています。
 全国どこからでもご利用いただける無料相談を、メール・電話・LINEで年中無休・24時間受け付けております。
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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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