【親子問題】きょうだいや配偶者にも暴力が及んでいる場合
この記事は、2026年10月時点の法令(刑法、警察官職務執行法、精神保健福祉法、高齢者虐待防止法)と、東京都内の公的な相談窓口の公表情報をもとにしています。受付時間や電話番号は変更されることがありますので、ご利用の際は各機関の公式案内でご確認ください。
夜中に子が暴れ始めたとき、「どこに電話すればよいのか分からなかった」という声を親御さんから伺うことがあります。役所の窓口は閉まっていて、110番をするほどなのか迷っているうちに朝を迎えた、というご相談です。反対に、「110番をしたものの、警察官が帰った後に何をすればよかったのか分からない」と悩まれる方もいます。
家庭内暴力の相談先として、警察、精神保健福祉センター、児童相談所、医療機関などを挙げる解説は多く、それ自体は誤りではありません。ただ、こうした窓口の多くは平日の日中に開いており、暴力が起きやすい夜間や休日にどこが応じているのかは、案内の中で見えにくくなっています。
この記事では、東京都内を例に、時間帯ごとに使える窓口と、それぞれの窓口にできること・できないことを整理します。110番をするかどうかの判断そのものは【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかで、窓口全体の役割分担は【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担で扱っていますので、あわせてご覧ください。
夜間の窓口は「来てくれる」「話を聞く」「つなぐ」に分かれる
自宅まで来てくれるのは、原則として警察
夜間に自宅まで人が来てくれる窓口は、事実上110番に限られます。夜間の電話相談は、相談員が状況を聞き取って助言や案内をする仕組みで、担当者が自宅を訪ねることは通常想定されていません。目の前で暴力が続いている、刃物などを手にしている、けがをした人がいるといった場面では、相談窓口を探すより先に110番をすることが基本です。
親子の間であっても、暴行・傷害・脅迫について、親族であることを理由に刑を免除する規定はありません。家族の間の窃盗などには刑の免除の特例(刑法244条)がありますが、身体への暴力はこれとは別に扱われます。「家族のことだから警察は来ない」と考えて通報をためらう必要はありません。
夜間の電話相談は「助言と案内」が中心
精神科救急の情報センターや夜間のこころの電話相談は、子の様子を聞き取り、受診が必要か、どこに連絡すればよいかを案内する役割を担っています。家族が落ち着いて次の行動を決めるうえで助けになる窓口ですが、その場で暴力を止める力はないという前提で使うことが大切です。
平日の窓口と弁護士は「翌日以降」を組み立てる
警察署の生活安全課、精神保健福祉センター、区市町村の窓口、弁護士は、継続的な相談や手続を担う窓口です。夜間の出来事を記録しておき、翌日以降にこれらの窓口へつなぐことで、同じ夜を繰り返さないための対応を始めることができます。
時間帯別に見る東京都内の相談先
東京都内で夜間・休日に応じている主な窓口と、平日日中に相談できる窓口を時間帯ごとに並べると、次のとおりです。
| 受付の時間帯 | 窓口 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 時刻を問わず | 110番 | 危険が差し迫っているときの通報。警察官が現場に来る |
| 24時間 | 救急相談センター(#7119) | 親御さんのけがについて、救急車を呼ぶべきかの相談 |
| 平日 午後5時〜翌午前9時、土日祝日は終日 | 精神科救急医療情報センター(03-5272-0303) | 精神科の救急受診が必要かの判断と医療機関の案内 |
| 毎日 午後5時〜午後10時(受付は午後9時30分まで) | 東京都夜間こころの電話相談(03-5155-5028) | 心の不調や受診への迷いについての相談 |
| 24時間 | ヤング・テレホン・コーナー(03-3580-4970) | 子が少年である場合の、家族からの相談 |
| 東京都では24時間受付 | 警察相談専用電話(#9110、03-3501-0110) | 緊急ではない警察への相談。窓口の案内 |
| 平日の日中 | 警察署の生活安全課、精神保健福祉センター、保健所・保健センター、地域包括支援センター、弁護士 | 継続的な相談、記録の積み上げ、手続 |
危険が差し迫っているときは、時刻を問わず110番
110番では、住所、誰が誰に何をしているのか、刃物などを持っているか、けがをした人がいるかを短く伝えます。電話をかけるのが難しい状況であれば、別室やトイレ、屋外など、子と離れた場所に移ってからかけることも考えられます。けがの程度によっては、警察とは別に119番も必要になります。
午後5時から翌朝までの窓口
平日の夕方以降に使える窓口は、主に医療と警察の系統に分かれます。子に精神的な不調がうかがえる場合は精神科救急医療情報センター、家族が受診や対応に迷っている段階であれば東京都夜間こころの電話相談が目安になります。親御さんがけがをして、救急車を呼ぶべきか判断がつかない場合は#7119に相談できます。
緊急ではないものの、警察に相談しておきたいという場合は#9110があります。夜間は当直の職員が対応する形となることが一般的で、継続的な相談は後日、最寄りの警察署で行うことになります。子が未成年であれば、24時間受け付けているヤング・テレホン・コーナーも選択肢の一つです。
土日・祝日の窓口
精神科救急医療情報センターは、土日祝日は終日応じています。東京都夜間こころの電話相談も毎日開設されています。区市町村の窓口は休日に閉まっていることが多いものの、高齢者虐待などの通報については、夜間・休日の連絡先を設けている区市町村もあります。
親御さんが65歳以上の場合は、高齢者虐待防止法に基づき、区市町村や地域包括支援センターが相談・通報の窓口となります。行政が動く仕組みについては【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組みで解説しています。
平日の日中に動ける窓口
平日の日中は、窓口の選択肢が大きく広がります。最寄りの警察署の生活安全課に相談しておくと、相談した事実が記録として残り、後に被害届や警告を検討する際の材料になります。この点は【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続で詳しく扱っています。
子の心の状態について継続的に相談したい場合は、精神保健福祉センターや保健所・保健センターが窓口です。ひきこもりの状態が続いている場合は、ひきこもり地域支援センターも利用できます(【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないこと)。
子に精神的な不調がうかがえる夜の対応
精神科救急医療情報センターに伝えること
相談の際は、通院歴や服薬の有無、診断を受けたことがあるか、今の様子、以前にも同じようなことがあったかを伝えると、受診の要否を判断してもらいやすくなります。受診が必要と判断されても、本人を医療機関まで連れて行くのは原則として家族の役割となる場合が多く、家族だけでは難しいときは、その事情を相談員に率直に伝えることが大切です。
警察官が来た後に起こり得ること
110番で駆けつけた警察官は、精神錯乱などのため自分や他人の生命・身体に危害を及ぼすおそれがある人を保護することができます(警察官職務執行法3条)。また、精神障害のために自分を傷つけたり他人に害を及ぼしたりするおそれがあると認めたときは、都道府県知事に通報することとされています(精神保健福祉法23条)。この通報をきっかけに、精神保健指定医の診察につながることがあります。
もっとも、警察官が来ても診察や入院につながらず、その場で引き揚げることも少なくありません。暴力と精神疾患の関係をどう見るか、医療にどうつなぐかについては【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断もご覧ください。
受診につながらなかった夜の後で
その夜に受診につながらなかった場合でも、翌日以降に保健所・保健センターや精神保健福祉センターへ相談することができます。子に主治医がいる場合は、家族から主治医に夜間の様子を伝えておくことも、次の受診や治療方針を考えるうえで意味があります。
夜間に電話をかける前に整えておきたいこと
手元に置いておくもの
夜間は気持ちが動揺し、必要な情報をすぐに思い出せないことがあります。落ち着いている時間帯に、次のようなものを一か所にまとめておくと、いざというときに慌てずに済みます。
- 自宅の住所と、最寄りの警察署の電話番号を書いたメモ。
- 子の通院先、服薬中の薬、診断名が分かるもの。
- 過去に警察や相談窓口へ連絡した日付と、対応した担当者の名前。
- 一時的に身を寄せられる避難先の候補と、その連絡先。
- 身分証、保険証、常備薬、携帯電話の充電器をまとめた袋。
夜のうちに残しておく記録
暴力があった時刻、子の言動、壊れた物、けがの状態は、できる範囲で写真やメモに残しておきます。けがをした場合は、翌日以降に医療機関を受診して診断書を取ることも検討します。記録の付け方は【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録、診断書を取る時期は【親子問題】診断書はいつ取るべきか|傷害の立証で解説しています。
家を離れるという選択肢
危険が続くと感じる夜は、親御さんが一時的に家を離れることも身を守る方法の一つです。行き先や持ち出す物をあらかじめ決めておくと、判断がしやすくなります。詳しくは【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択をご覧ください。
夜の対応を翌日以降につなげるために
同じ夜が繰り返される家庭で起きていること
夜間の窓口は、その夜を乗り切るための窓口です。夜が来るたびに110番や電話相談を繰り返していても、親子の関係や子の生活そのものが変わらなければ、同じ状況が続くことがあります。夜間の対応で得た記録を、平日の窓口や弁護士への相談に持ち込み、「次の夜」を減らすための対応に切り替えていくことが重要です。
当事務所がこれまで取り組んできたご家庭では、親子の距離が近すぎることや、互いに依存し合う関係が問題の背景にあると見受けられる場面が少なくありませんでした。物理的な距離を取ることで、親子双方に変化が見られることもあります。
弁護士とカウンセラーが担える部分
弁護士は親御さんの代理人として子との窓口を引き受け、暴力や金銭の要求に親御さんが直接さらされない形を整えます。あわせて、提携する自立支援カウンセラーが、子の住まい探しや仕事探し、日々の生活の相談を支え、子が自分の力で生活を立て直せるよう関わります。ご相談から支援までの流れは【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問にまとめています。
よくあるご質問
夜中に110番をすると、子はその場で逮捕されるのでしょうか
逮捕されるかどうかは、けがの程度、凶器の有無、暴力が繰り返されているか、被害を受けた親御さんの意向などを踏まえて警察が判断します。警察官が双方から事情を聞き、その場は注意にとどめて引き揚げることもあります。逮捕に至らなかった場合でも、通報した事実は記録として残り、その後の相談の材料になります。
夜間の相談窓口に相談したことは、子に伝わりますか
電話相談の窓口から子に直接連絡が行くことは、通常は想定されていません。ただし、110番で警察官が自宅に来た場合は、子も通報があったことを知ることになります。通報の後に子がどのような反応を示しそうかも考えたうえで、避難先などの準備をしておくと安心です。
夜間や休日に弁護士へ連絡してもよいのでしょうか
当事務所では、夜間や休日のお問い合わせも受け付けています(夜間・土日・即日の相談は可能か|急ぎの場合の伝え方)。ただし、弁護士が夜間の現場に駆けつけて暴力を止めることはできませんので、危険があるときは110番を優先してください。その夜が落ち着いた後に、今後の対応をご一緒に考えることができます。
まとめ
- 危険が差し迫っているときは、時刻を問わず110番が基本。夜間に自宅まで来てくれる窓口は事実上警察に限られる。
- 親子間の暴行・傷害・脅迫には親族を理由とする刑の免除の規定はない(刑法244条は窃盗などの財産犯に関する特例)。
- 夜間の電話相談は助言と案内が中心。東京都内では精神科救急医療情報センター、夜間こころの電話相談、#7119、#9110などが夜間・休日に応じている。
- 警察官は精神錯乱などで危害のおそれがある人を保護でき(警察官職務執行法3条)、精神障害による危害のおそれがあるときは知事へ通報する(精神保健福祉法23条)。
- 親御さんが65歳以上の場合は、区市町村や地域包括支援センターが高齢者虐待防止法に基づく相談・通報の窓口となる。
- 住所、通院先、過去の相談記録、避難先などを平時に一か所へまとめておくと、夜間の連絡が円滑になる。
- 夜間の対応で得た記録を平日の窓口や弁護士への相談につなげ、同じ夜を繰り返さないための対応に切り替えていく。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、子の家庭内暴力やひきこもり、お金の無心などに悩む親御さんからのご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。弁護士が親御さんの代理人として子との窓口を担い、提携する自立支援カウンセラーが子の生活の立て直しを支える形で、北海道から沖縄まで全国のご家庭に対応してきました。
夜が来るたびに同じことが繰り返されている方、どこに相談しても状況が変わらなかったという方は、一度ご相談ください。ご家庭の事情を伺ったうえで、対応の方針を一緒に考えます。


