【親子問題】浪費が止まらない子|保佐・補助を検討する場面
この記事は、2026年10月時点の法令(医師法、配偶者暴力防止法、高齢者虐待防止法、健康保険法、国民健康保険法、個人情報保護法)と、厚生労働省の通知「組合員や世帯主等からの暴力等を受けた者の取扱い等について」(令和3年5月31日。その後一部改正)に基づいて書いています。病院の対応や健康保険の取扱いは、医療機関や加入先によって異なることがあります。
「子に突き飛ばされて手首を痛めたが、病院で何と言えばよいか分からず『家具にぶつけた』と答えてしまった」「本当のことを話すと、病院から警察や子に連絡がいくのではないかと心配で、受診をためらっている」。親子の問題のご相談では、このようなお話を伺うことが少なくありません。
けがをしたら早めに受診し、原因を正直に伝える。一般的に言われるこの説明は、それ自体は誤りではありません。ただ、家族から受けたけがの場合、親の側には「子を加害者にしたくない」「受診したことを子に知られたくない」といった事情があり、病院でどこまで話すかで迷うのは自然なことです。そして、その場での一言が診療録に残り、後で診断書を取るときや警察に相談するとき、子と話し合うときに参照されることになります。
この記事では、子の暴力でけがをした親御さんが、受診の前後と診察室で何をどう伝えるかに絞って説明します。診断書を取る時期や傷害の立証については【親子問題】診断書はいつ取るべきか|傷害の立証で、受診よりも先に確保すべき安全については【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録で詳しく扱っています。
受診の前に整えておくこと
急ぐべきか迷うとき
頭を強く打った、意識がもうろうとしている、呼吸が苦しい、出血が止まらないといった場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。子がまだ興奮していて身の危険がある場合も同じです。その場で何を伝えればよいかは【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかにまとめています。救急車を呼ぶべきか迷うときは、救急相談の電話窓口(#7119。実施していない地域もあります)で受診の目安を聞くこともできます。
急を要しない場合でも、受診はできるだけ早いほうが望ましいといえます。時間が経ってから受診すると、そのけがが子の暴力によるものか、ほかの原因によるものかを医師が判断しにくくなり、後で因果関係が問題になりやすいためです。
子が付き添ってくる場合
子が「一緒に行く」と言って受診に付いてくることがあります。子の前では本当のことを言いにくいのが普通です。受付や看護師に「先生に一人でお話ししたいことがある」と一言伝えておくと、診察の一部を本人だけで受けられるよう配慮してもらえる場合があります。伝えたい内容を書いたメモを渡す方法もあります。
子が同席するかどうかにかかわらず、医師に原因を伝える機会を一度は確保しておくことが、この場面で最も大切な点です。
持っていくもの
マイナ保険証(または資格確認書)とお薬手帳のほか、次のような内容を書いたメモがあると、限られた診察時間でも伝え漏れが減ります。
- けがをした日時と場所。
- どの部位に、何をされたか(殴られた、突き飛ばされた、物を投げられた等)。
- 痛み、しびれ、腫れが出ている部位の一覧。
- 以前にも同じような暴力でけがをしたことがあるか。
- 眠れない、動悸がするといった体調の変化。
診察室で何をどう伝えるか
原因は「誰に・いつ・どこで・どのように」の形で
医師は治療のために、けがをした経緯を尋ねます。このときは「同居している息子に、昨夜10時ごろ、台所で突き飛ばされて床に左手をついた」のように、誰に・いつ・どこで・どのようにされたかを、具体的に短く伝えるのが基本です。「家族と少しもめて」のようなあいまいな言い方をすると、診療録にもあいまいな記載しか残りません。
子を責める言葉や、背景にある長い経緯まで説明する必要はありません。治療に必要な事実を淡々と伝えれば十分です。家庭の事情を詳しく話したい場合は、後で触れる病院の相談窓口を使う方法もあります。
痛む場所はすべて伝える
一番痛む部位だけを伝え、ほかの打撲やすり傷は「たいしたことはない」と言わずにおくことがあります。後から別の部位の痛みが強くなって再び受診すると、最初の受診で記録がないために、そのけがが同じ暴力によるものかが分かりにくくなります。小さなあざでも、見せられるものは医師に見せておくとよいでしょう。
体調や気持ちの変化も伝えてよい
暴力を受けた後に、眠れない、物音に過敏になった、食欲が落ちたといった変化が続くことがあります。これらも診察で伝えてかまいません。精神的な不調であっても、医師の診断がある場合には刑法上の「傷害」にあたると判断された例があります(最高裁平成24年7月24日決定)。必要に応じて、心療内科や精神科の受診を勧められることもあります。
「転んだ」と伝えてしまったとき
診療録には受診のときの説明が残る
医師は診療をしたとき、その内容を診療録(カルテ)に記載し、5年間保存することが義務づけられています(医師法24条)。診察で話したけがの経緯も、多くの場合このなかに残ります。
とっさに「転んだ」「ぶつけた」と答えてしまうのは珍しいことではありません。ただ、その記載のまま後で診断書を求めても、暴力によるけがとして書いてもらうことは難しくなります。警察に相談したり子と話し合ったりする場面で、受診時の説明と食い違うことを指摘される可能性もあります。
次の受診で訂正する
すでに事実と違う説明をしていた場合は、次の受診の際に、医師へ「前回は転んだと言いましたが、実際は息子に突き飛ばされたものです」と伝え直すことをお勧めします。訂正したこと自体が日付とともに記録に残り、時間が経ってから初めて説明するよりも、経緯が自然に伝わります。
最初の説明と変わることになっても、訂正は早いほど意味を持ちます。医師に直接言いにくければ、受付や看護師にまず事情を伝え、話す場を作ってもらうのも一つの方法です。
病院から警察や行政に連絡がいくことはあるのか
受診をためらう理由として多いのが、「本当のことを言ったら、病院から警察に通報されるのではないか」という心配です。医療機関の対応を定めた規定は、けがをした人と暴力をふるった人との関係によって異なります。
| けがをした人 | 根拠となる法律 | 医療機関の対応 |
|---|---|---|
| 配偶者から暴力を受けた人 | 配偶者暴力防止法6条2項 | 配偶者暴力相談支援センターや警察に通報することができる。本人の意思を尊重するよう努める |
| 同居の子などから虐待を受けた65歳以上の親 | 高齢者虐待防止法7条 | 生命や身体に重大な危険が生じている場合は市町村への通報義務、それ以外は通報の努力義務 |
| 子から暴力を受けた65歳未満の親 | 個別の通報規定はない | 医師の守秘義務のもと、本人の意向を確かめながら対応するのが一般的 |
65歳以上の親の場合
高齢者虐待防止法は65歳以上の人を対象とし(同法2条1項)、医師などに虐待の早期発見に努めるよう求めています(同法5条1項)。同居の子による暴力は、同法の「養護者による高齢者虐待」として扱われることがあり、病院が市町村に通報する場合、守秘義務の規定はその通報を妨げないとされています(同法7条3項)。
通報があると、市町村の担当者が事実確認のために連絡や訪問をすることになります。突然のことに戸惑うかもしれませんが、行政が関わる入口になるという面もあります。行政がどのように動くかは【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組みで説明しています。
65歳未満の親の場合
65歳未満の親が成人した子から暴力を受けた場合には、配偶者間の暴力や高齢者虐待のような個別の通報規定はありません。医師には刑法上の守秘義務があり(刑法134条1項)、患者の情報を本人の同意なく第三者に提供することも原則として制限されています(個人情報保護法27条1項)。そのため、命に関わるような状況でない限り、本人の意向を確認しながら対応する医療機関が多いといえます。ただし、対応は状況や医療機関によって異なります。心配であれば、診察の際に「警察への相談は自分で考えたい」と伝えておくとよいでしょう。
医療ソーシャルワーカーに相談する
比較的規模の大きい病院には、医療ソーシャルワーカーが在籍する相談室が置かれていることがあります。医療費の支払いや今後の生活、家庭の事情といった、治療以外の困りごとを相談できる窓口です。家に帰るのが不安な場合や、どこに相談すればよいか分からない場合は、受付で相談室の有無を尋ねてみてください。一時的に家を離れることを考える場合は、【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択もご参照ください。
健康保険を使って受診できるか
家族から受けたけがでも保険診療は受けられる
「人にけがをさせられた場合は健康保険が使えない」と説明されることがありますが、正確ではありません。他人の行為によるけが(第三者行為による傷病)であっても、健康保険を使って受診できます。保険者は立て替えた医療費を後で加害者に請求できる仕組みになっており(健康保険法57条1項、国民健康保険法64条1項)、厚生労働省も、暴力等の被害者は加害者から損害賠償を受けるまでは一般の被保険者と同様に保険診療を受けられるとして、誤解のないよう周知を求める通知を出しています。
第三者行為の届出
健康保険を使う場合は、加入している保険者に「第三者の行為による傷病届」を出すことが求められています(健康保険法施行規則65条、国民健康保険法施行規則32条の6)。届出をすると、保険者が加害者である子に医療費を請求することもありえます。
加害者が同居の家族である場合の扱いや、子に請求が届くことで状況が悪化するおそれがある場合の配慮は、保険者によって異なります。届出の前に加入先の窓口へ事情を伝えて相談し、判断に迷う場合は弁護士にもご相談ください。
受診の後に手元に残しておくもの
受診を終えたら、次のものを一か所にまとめて保管しておきます。
- 領収書と診療明細書。治療費を後で整理する際の基礎になります。
- けがの写真。日付が分かる形で、全体と患部の拡大の両方を撮っておきます。
- 受診した病院名、診療科、医師に伝えた内容のメモ。
- 診断書を受け取った場合はその原本。
診断書を受け取っていなくても、後から医療機関に診療録の開示を求めることができます(個人情報保護法33条1項)。警察に相談した記録も、受診の記録と組み合わせることで経緯を示す材料になります。相談の記録が持つ意味は【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続で説明しています。
受診の記録は、被害届を出すかどうかを決めていない段階でも残しておく価値があります。被害届を出す前に考えておきたいことは【親子問題】被害届を出すと家族関係はどうなるのか|出す前に考えることで、親子間の暴力がどのような場合に立件されるかは【親子問題】親子間の暴行・傷害は立件されるのか|特例が及ばない範囲で扱っています。
よくあるご質問
病院から子に受診のことが伝わることはありますか
医療機関が本人の同意なく家族に診療内容を伝えることは、原則としてありません(個人情報保護法27条1項)。ただし、子が国民健康保険の世帯主になっている場合や、親が子の健康保険の扶養に入っている場合などには、保険者から届く医療費の通知に受診の情報が載ることがあります。気になる場合は、加入先の窓口に事情を伝えて相談してください。
数日たってから受診しても意味はありますか
意味はあります。時間が経つと医師がけがの原因を判断しにくくなるのは確かですが、受診しなければ記録そのものが残りません。いつ、どのようにけがをしたかを伝えたうえで、受診が遅れた理由も医師に説明しておくとよいでしょう。
病院で「警察に届けますか」と聞かれました。その場で決めなければなりませんか
その場で決める必要はありません。「まだ決めていない」「家族と相談してから決めたい」と答えてかまいません。ただし、身の危険が続いている場合は、警察への相談を先送りにしないことをお勧めします。
まとめ
- 命に関わるけがや身の危険がある場合は救急車や110番を優先し、急を要しない場合もできるだけ早く受診する。
- 子が付き添ってくる場合でも、受付や看護師への一言、メモなどで、医師に原因を伝える機会を一度は確保する。
- 原因は「誰に・いつ・どこで・どのように」を具体的に伝え、痛む部位はすべて見せる。精神面の不調も伝えてよい(最高裁平成24年7月24日決定)。
- 診療録は5年間保存され(医師法24条)、受診時の説明が後で参照される。事実と違う説明をした場合は、次の受診で早めに訂正する。
- 医療機関の通報規定は配偶者間の暴力(配偶者暴力防止法6条2項)と65歳以上の高齢者虐待(高齢者虐待防止法7条)にあり、65歳未満の親子間には個別の規定がない。
- 家族から受けたけがでも健康保険は使える(健康保険法57条1項、国民健康保険法64条1項)。第三者行為の届出(健康保険法施行規則65条等)は、事情を伝えて加入先に相談する。
- 領収書、明細書、写真、メモを保管し、必要に応じて診療録の開示を求める(個人情報保護法33条1項)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、子の家庭内暴力やひきこもり、お金の無心に悩む親御さんからのご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。弁護士が親御さんの代理人として子と向き合い、自立支援カウンセラーが子の生活の立て直しを支えるという形で、親と子それぞれの自立を目指します。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応で、ご相談から自立までの流れと費用は【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問でご案内しています。
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