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三枝秀行

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三枝秀行(さえぐさひでゆき) / 相続コンサルタント

株式会社三枝エステート

コラム

空き家対策特別措置法改正の背景と改正ポイントについて

2024年1月9日

テーマ:法改正情報

コラムカテゴリ:法律関連

 年頭にあたり本年も株式会社三枝エステートをご愛顧の程、宜しくお願い申し上げます。
本年1月1日の能登半島地震で被災された皆様には心からお見舞い申し上げますとともに
被災地の1日も早い復興をお祈り申し上げます。
この度、空き家対策の推進に関する特別措置法が平成27年に施行されて以来、空き家対策
特別措置法の改正が令和5年12月13日に施行されましたので、改正の背景とポイントにつ
いてお伝えしたいと思います。
日本全国で空き家問題がクローズアップされてから久しいですが、総務省が5年毎に実施する住宅・土地統計によると2018年末の時点で空き家は全国に約839万戸あり、2013年の前回調査時より3.6%増になっています。
これは総住宅数約6246万戸に対する空き家率を計算すると13.6%となり実に7戸に1戸が空き家のため社会問題になっているのが現状です。
このままの状態で何も対策をしないと10年後の2033年には空き家数が2150万戸で空き家率も30%でほぼ3件に1件が空き家になると予測する民間のシンクタンクもあるようです。
 このように空き家が増えることはどのような要因があるのでしょう?
その要因の一つは家余り現象が続いていることがあるかと思います。
国土交通省のデータでは2022年の新築住宅の着工件数が85万4000戸(貸家34.5万戸、分譲住宅25.5万戸、持家25.4万戸)ですが、再建築を差し引いた滅失の届出は10万戸程度なので、これでは空き家のストックが増えるのはやむを得ないことかもしれません。
今後、日本の人口は毎年40万人以上が減少していくので、新築で建てた分以上に減らして
いかないと空き家はますます増えることになります。
二つ目の要因として空き家の約70%が相続に起因する相続空き家です。
子供達は親元を離れて都会に住み、田舎の実家には戻らないために実家を継ぐ者がいないので、必然的に空き家となるケースです。
三つ目の要因は、家屋を解体して更地にすると固定資産税の住宅用地の6分の1の軽減特例が適用されなくなるので、家屋を解体せずそのまま空き家として残しておく相続人が多いことも挙げられます。
このような空き家問題を解消するために法改正がされましたが、今回の改正ポイントを以下の通り纏めてみました。
1 管理不全空き家の新設
今回の改正で管理不全空き家が新設されましたが、行政が早期介入することで空き家所有者に管理を促進し、周囲へ悪影響を及ぼす特定空き家化を未然に防ぐことが目的です。
市区町村長は放置すれば管理不全空き家の所有者に対して管理指針に即した措置を指導でき、指導しても状態が改善しない場合は、勧告ができる仕組みで勧告を受けると当該空き家の敷地に係る固定資産税等の住宅用地特例が解除されるので、所有者は空き家にかかる税金の軽減が受けられなくなります。
2 空き家等活用促進区域制度の創設
令和5年12月13日の法改正で空き家等活用促進区域制度が創設されたことで市街地の中心地域などの地域の拠点に空き家が集積してくると地域本来の機能が低下するおそれがあり、建築基準法等の規制があるために古い家屋の建替えや改築を行うときの障壁になるケースがあり、空き家の活用を進める上での課題でしたが、空き家活用促進区域制度は市区町村が区域と活動方針を定めることができ区域内の空き家を対象に、建築基準法で定められている接道や用途の規制緩和もできるようになり、空き家の建替えや用途変更がし易くなりました。
3 官民連携による空き家等活用支援
改正法により市区町村が、空き家の活用や管理に取り組むNPO法人や社団法人を空き家等管理活用支援法人に指定することが可能になりました。
市区町村が空き家の活用や管理に精通した団体を空き家等管理活用支援法人に指定することで、業務をアウトソーシングする体制を構築しやすくこの制度により第三者団体の協力を得て空き家事業に関連する自治体職員のマンパワーや知識不足を解消する効果も期待されているようです。
4 特定空き家の除却に伴う代執行
改正前の空き家法では、市区村長に特定空き家の所有者から報告徴収を行う権限が認められていないことや自治体から所有者への強制力もないために特定空き家の管理状況を把握することが困難なケースも多かったようです。
今回の改正では特定空き家への勧告・命令等を円滑に行うため、市区町村長に特定空き家の所有者に対する報告徴収権を付与しました。
これにより緊急時に取り壊す必要がある特定空き家に対して命令等の手続きを省略した代執行が可能となり、迅速に周辺地域の安全を確保できる仕組みができるので空き家の解体費用の徴収に関しても対策が講じられて略式代執行時や緊急代執行時においても国税滞納処分の例により所有者の財産から強制的に費用を徴収することができるようになりました。
 以上のように空き家対策特別措置法は改正されましたが、空き家問題では悩みを抱えている方も大変多くいらっしゃるかと思いますので、今回の空き家法の改正がストレスフリーになることを期待しています。
なお、空き家対策で最大の効果を発揮する税制上の特例『空き家の譲渡益にかかる3千万円控除の特例』については、次回のコラムでお伝えしようと思います。
 最後に令和5年12月13日施行の改正空き家法の詳細を知りたい方は下記の国土交通省の
ウェブサイトをご覧下さい。 

空き家対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律 

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