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井上昇哉

子どもたちの思考力を高め、未来の選択肢を広げるプロ

井上昇哉(いのうえしょうや) / 塾講師

学習塾「与一」/合同会社 あたまをたがやす

コラム

『“部活動を頑張る子の方が成績が伸びやすい”って本当?ー高校生編』

2022年6月18日

テーマ:大学受験 高校生活

コラムカテゴリ:出産・子育て・教育

コラムキーワード: 受験勉強 モチベーション大学受験 対策

それでは次に高校生に対してこの言葉の真偽を考えていきます。
高校生は中学生に比べ、現状より自由度が高く、部活動を一生懸命やる子・塾などに行くため活動の少ない部に入る子・その他の活動に熱を入れる子と様々な生徒がいるため、この話についてより現実的に比較しやすいと言えます。

自分に都合良く解釈してはいけない

次のグラフを見て下さい。





“部活を最後まで頑張った子の方がその後伸びる”という言葉を聞いて、多くの方が思い浮かべるのはこのような成績の伸び方ではないでしょうか。
(本当は高校生の成績の伸び方は直線ではなく加速度的な曲線なのですが、ここではイメージしやすく表しています)

これは現実を正しく表しているとは言えません。
実際にはこのような表し方が必要です。




部活動をしている間の勉強の進み具合、これを考慮せずに「部活動をしていても最後に伸びるから大丈夫」と考えるのはあまりにも危険です。
注意すべきポイントを一つずつ見てみましょう。

1.引退後勉強に本腰を入れればすぐに伸びる訳ではない
まず成績が伸びる大前提として、基礎をきちんと固めることが前提である、という最重要な要素を忘れてはいけません。
部活動をしながらもコツコツ勉強をしていた子でも、やはりそうでない子と比べ勉強時間が少なくなってしまうことは間違いなく、その結果固めるべき基礎の部分においては、どうしても一歩劣ってしまいます。
部活動を引退し、勉強を本格的に始めて最初にするべきことはこの劣っている基礎を固めることであり、その分勉強に本腰を入れたとしてもその結果が反映されるまでには暫く時間がかかってしまうことは避けられません。
「勉強をしても成績が伸びない」と焦ってしまうのはこの勉強→結果までのギャップが大きな原因だと言えますね。

2.“伸びが大きい”=追い越せる、ではない
冷静に考えれば至極当然の話ではありますが、“部活を最後まで頑張った子の方がその後伸びる” =部活動をしている子の方がしていない子より有利、では勿論ありません。
そうであれば勉強を優先する為に部活動への参加を抑えたり諦めたりする子がいる筈はありません。
仮に部活動をしている子の方が伸び幅が大いことが事実であったとしても、その幅の大きさでカバーできるだけの差で抑えておくことが必要なのです。
いくら伸び幅が大きかったとしても、その伸びる前の学力・偏差値・点数があまりにも低ければ、取り返すだけの時間が残っていないことは忘れてはいけません。

3.そもそも全ての子に当てはまる訳ではない
“部活を最後まで頑張った子”が全員同じだけその後学力が伸びる訳ではありません。
先に言ったように、学力の伸びには基礎を固めることが欠かせません。
つまりいくら部活動に力を入れるからといって、引退まで勉強をしない、したとしても学校の課題くらい、で基礎固めを行っていない子は、その後勉強にシフトしても全く力が伸びないままであっても何ら不思議はないのです。
それまで何もしなくても後から頑張ったら何とかなる、そんな虫のいい話はどこにも転がっていませんよ。

誰と比較して“方が伸びる”のか

さてもう一つ考えるべきことがあります。この話の真偽を考える時に、その比較対象は“部活をしていた子”と“部活を(あまり)していなかった子”なのでしょうか。
“最後まで”という言葉の意味を考えた場合、もう一つの比較対象として“部活を途中で辞めた子”が浮上します。
実際に与一にも毎年数人いますが、3年生への進級を前にして(多くは前述の2月の模試の結果を受けて)部活動を早期に辞める子が一定数存在します。
「部活なんて最後までやっている場合じゃない。勉強に早く本腰を入れなければ間に合わない」という気持ちなのでしょう。
ではこういった子をグラフに入れるとどうなるでしょうか。





どうでしょうか。残念ながら“部活を途中で辞めた子”が最終的に一番成績は伸びずに終わってしまうことがわかるでしょうか。
これにはちゃんと理由があります。
“部活を途中で辞めた子”は端的に言えば“勉強が上手く進んでいない子/成績が思ったほど伸びていなくて辞めざるを得なかった子”と言えるでしょう。
一方“部活を最後まで頑張った子”は“勉強との両立が上手くいっていて続けられる余裕がある子”と言えるでしょう。
前者は早めに部活を辞めた分、後者の子よりは成績の伸びる時期は確かに早いかもしれません。
ですが実際に両立ができている子が部活を引退し、その時間を全て勉強に回せばすぐに追い抜かれてしまうことは想像に難くないでしょう。

まとめ

さて2つの観点から考えた、“部活動を頑張る子の方が成績が伸びやすい”という話の結論を出してみましょう。
1.事実ではあるが、誰でも当てはまる訳ではなく、部活をしながらも勉強もしておかなければならない。
2.部活動を途中で辞め“なくてもよい”学力を保てていれば、途中で辞めた子よりも伸びる。

つまり“部活を最後まで頑張った子の方がその後伸びる”のからくりは、決して根性論や集中力といった曖昧なものではなく(事実その差もあるとは思いますが)、部活と勉強を両立して来た子が、受験に向けて勉強時間を増やした結果、大幅な成績の伸びを見せる、ということなのです。

“部活をしながらきちんと手を抜かずに勉強をしていれば、最後にそれを取り戻すことは可能である”という表現が一番正しいかもしれません。

当然のことですが、“部活を最後まで頑張った子の方がその後伸びる”というのは「後からどうにかなるから今は勉強しなくてもいい」という免罪符では決してないということです。
その後の伸びを享受できるのは、部活動を頑張りながらもコツコツ勉強し、可能な限り部活動と勉強の両立をしようと努力した人間だけなのです。

「勉強と部活を両立する」口で言うのは簡単ですが、心のどこかで「今は部活が忙しいから仕方ない」「部活を頑張っている分、後からきっと伸びる」なんて自分に言い訳していませんか?
もう一度いいますが、最初からコツコツ頑張っている子よりも、好きな事“だけ”している子の方があとからいい結果が出せるなんてそんな甘い事は起こらないことを決して忘れないで下さい。

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井上昇哉(学習塾「与一」/合同会社 あたまをたがやす)

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