マイベストプロ大阪
西村隆志

中小企業の立場にたった債権回収の専門家

西村隆志(にしむらたかし) / 弁護士

西村隆志法律事務所

コラム

会社の破産・再生・倒産に関する法律相談

2012年5月8日 公開 / 2020年1月21日更新

コラムカテゴリ:法律関連

 会社は日々環境変化にさらされており、企業活動を継続するには、環境の変化に適切に対応して経営戦略を変更し続けなければなりません。
 そして、会社が経営不振となれば、経営戦略の変更し、生産計画や人事制度の変更に加え、不振事業から撤退するなど組織変更をして、会社に活力を与え、企業価値を維持、向上させなければいけないでしょう。
 また、会社の経営不振脱出のためには、収益向上策を検討するともに、私的整理や民事再生法などを利用して、負債の返済計画を変更する必要がある場合もあります。
 さらに、図らずも経営環境の変化により、時代が求める会社の役割を終えたと判断した時には、適切に会社を清算しなければならなくなることもあります。
当事務所では、会社の清算、または、御社の事業の再生にとって、適切な法的ニーズにお応えします。

※昇陽法律事務所は企業倒産に特化したサイトがあります。
http://www.shoyo-kigyosaisei.com/

 会社が不振に陥り、経営状況及び将来性から考えて、もはやこれ以上事業を継続できないという判断となれば、会社の清算を選択することになります。
 会社の清算には、「破産」と「特別清算」という方法があります。

<破産手続>

 破産手続は、債務超過や、支払を継続することが不可能となった債務者(会社、個人)が、財産の処分権を全て裁判所が選任する破産管財人に専属させて、債務者の財産を換価・回収して、債務者に公平に配当することによって、会社を清算する手続です。
 破産の一般的な手続は、次のようになっています。
 破産手続では、
(1)債権者または債務者が申立をし、
(2)裁判所は破産手続開始原因が認めると破産手続開始決定をし、破産管財人を選任します。
 もっとも、個人破産の場合に、換価すべき財産がない場合には破産管財人が選任されず、債権調査等もされない同時廃止という手続きになる場合があります。
(3)破産管財人が選任される場合には、破産者の財産を破産管財人が管理し、換価し、配当に備えることになります。
(4)破産財団がある程度存在し、配当が見込まれる場合には、債権者は債権の有無・金額の届出をし、破産管財人の調査を受けて、確定するという手続きがあります。破産財団が僅少であり配当が見込まれない場合には、債権調査が行われないこともあります。
(5)配当可能な財産がある場合には、各債権者に公平に案分して配当がなされ、破産手続きは終了します。配当可能な財産がない場合には、配当を経ることなく、異時廃止として破産手続きは終了します。

<特別清算>

 特別清算は、株主総会の特別決議等により解散して清算手続にある株式会社が債務超過や清算の進行に著しい支障をきたすべき事業がある場合に、定款の定めや株主総会の決議により選任された清算人(通常は従前の取締役)が、裁判所の監督の下、財産の管理及び清算手続きを行うという手続きです。
 特別清算の一般的な流れは次のようになります。
(1)株主総会の特別決議により清算を決議したのち、選任された清算人(通常は従前の取締役)が、債権申出の公告をしたり、財産目録等を作成するなど、配当に備えます。
(2)しかし、通常の清算手続では、債務超過の疑いがある場合や、清算の進行に著しい支障がきたす場合には、裁判所に対し、特別清算手続の申立をし、特別清算手続開始原因があれば特別清算手続きが開始されます。
(3) 清算人は、債権の調査・確定をする一方で、財産の管理・換価手続きを進め、配当に備えます。
(4)特別清算手続きの配当は、債権者集会において、協定、個別和解、全額弁済といった方法で決められ、裁判所の認可を受けて、現実に配当されます。

(メリット)
●会社の活動を把握している従前の経営陣が清算人として主体的に活動できる。
●債権の調査確定手続がなく、弁済の方法として協定・個別和解など手続きに柔軟性があり、迅速に処理をすることができる。
● 清算会社及び債権者の双方に税法上のメリットがある。

(デメリット)
●株式会社しか利用できない。
●協定案の可決要件が、破産、民事再生、会社更生に比べて厳しい。

◎会社の再生に向けて(事業再編)
 会社が経営不振の場合に、不振事業から撤退など事業の再編を実行して会社の業績が回復させる必要性がある場合があります。
 事業の再編には、事業譲渡、会社分割などの方法をとることがあります。
 事業譲渡とは、一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の譲渡であり、これに伴い、事業活動を承継し、譲渡会社が競業避止義務を負うことをいいます。
 会社分割とは、一つの会社を二つ以上の会社に分割する手続きです。会社分割には、分割によって事業を承継するのが新会社である場合(新設分割)と、既存の別会社である場合(吸収分割)の場合があります。
 会社分割は、多角経営化した企業が一事業を独立させて経営効率を向上させるために利用されたり(分社化)、事業の売却や不採算部門を分離させ処理するために利用されたりします。
 特に不採算部門処理をするには、バッド事業を外部会社に分割し、バッド事業会社を破産させるという方法と、グッド事業を外部会社に分割し、残った旧会社を破産させるという方法があります。

<会社分割の手続>

(1)吸収分割契約締結(吸収分割)、新設分割計画作成(新設分割)
(2)株主総会の特別決議
(3) 反対株主の買取請求
(4)債権者保護手続 ←旧会社に債務を請求することができないものに限定
  ※グッド事業を外部に出す場合には、債権者保護 手続きが不要である点がメリットとなる。
(5)吸収分割=契約で定めた効力発生日に成立  新設分割=設立登記の日に効力発生。

 会社の経営不振脱出のためには、収益向上策を検討するともに、負債を減縮したり、返済計画を変更する必要がある場合もあります。
 企業の再生・再建手続きとしては、大きく分けて(1)私的整理、(2)民事再生、(3)会社更生の方法があります。

<私的整理>

 私的整理とは、法的整理手続を利用せずに、債務者が債権者と交渉して、債務の減縮したり、リスケジュールをしたりして、債務を整理する方法です。
 債務者が各債権者と個別に交渉することもありますが、中小企業再生支援協議会による事業再生支援などを利用して私的整理を実施することもあります。

(メリット)
●民事再生、会社更生といった法的手段を執ったことによる事業価値の既存を防ぐことができる。
●仕入先など一般商取引先を手続きが意図することで、信用棄損や連鎖倒産を防ぐことができる。
●支払方法や減免額について、柔軟な解決が可能である。

(デメリット)
●債権者との個別の合意が必要であり、債権者が反対すれば成立しない

<民事再生>

 民事再生は、破産状態に陥る可能性のある者(会社、個人)が、従来の代表者が会社の財産の管理処分権や経営権を維持したまま、債権者の多数の同意を及び裁判所の認可を受けた再生計画を定めることで、債務を減縮したり、リスケジュールを行う法的手続です。
 もっとも、再生計画認可という自主再建を目指すもの以外にも、民事再生手続きで営業活動を継続して企業価値を維持したまま、スポンサーの協力を得て、事業を譲渡するなどした後、破産に移行するという事業再生パターンに利用されることもあります。

(メリット)
●民事再生は、会社の状態をよく知る従前の経営陣が経営権を維持したまま、再生を果たすことが
 できることが特徴であり、最大のメリットです。

(デメリット)
●経営不振が経営者の行動に問題がある場合には、経営陣の責任追及が
 おろそかになりやすいというデメリットをもはらむことにもなり注意が必要です。

 民事再生は、会社更生に比べて、簡易迅速な手続きであり、担保権者や手続開始前の租税債権、労働債権等の一般優先債権は原則手続の拘束を受けないことから、担保権の実行や強制執行を受ける危険があり、これらの債権者の協力が必要となります。

<会社更生>

 会社更生は、破産状態に陥る可能性のある株式会社について、裁判所が選任する保全管理人、管財人が経営権を把握して、債権者の多数の同意及び裁判所の認可を受けた更生計画を定めることで、株式会社の債権を目指す法的手続です。
 もっとも、更生計画認可という自主再建を目指すもの以外にも、会社更生手続きで営業活動を継続して企業価値を維持したまま、スポンサーの協力を得て、事業を譲渡するなどした後、破産に移行するという事業再生パターンに利用されることもあります。

(メリット)
●担保権や租税債権も手続拘束され、手続きにより変更可能である。
●計画案により、株主総会や取締役会の決議なく、合併、会社分割などの組織変更行為が可能となる。

(デメリット)
●従前の経営陣は経営権を失う。
●民事再生に比べて、手続きが厳格で時間やコストがかかる。

<個人(事業主)の皆様の破産手続・事業再生>

 個人(事業主)の皆様の事業再生を図る場合には、任意整理(私的整理)手続、民事再生手続、個人再生手続があります。
 個人(事業主)の皆様が清算・破産を行う場合には、破産手続があります。
 任意整理(私的整理)手続とは、裁判所の手続を利用せず、残債務を確認し、残債務総額、債務者の資力などを元に、債権者との間で新たな分割返済の合意等を成立させる手続です。
 民事再生手続は、裁判所の手続を利用し、債務を圧縮し、返済計画に従って返済をしていく手続です。
 小規模事業者や給与所得者(サラリーマン)など、継続的な収入が見込める債務者が利用できる個人債務者再生手続と、中小企業規模の事業者を予定している通常再生手続があります。
 個人債務者再生手続は、小規模事業者や給与所得者等、継続的な収入を見込める債務者が、原則として3年間(例外的に5年)に、債務総額の5分の1(最低弁済額は100万円)に圧縮して返済していくという手続です。
 個人債務者再生手続では、住宅ローンを抱えた債務者が、一定の条件をみたせば、住宅を残すことも可能になります。

この記事を書いたプロ

西村隆志

中小企業の立場にたった債権回収の専門家

西村隆志(西村隆志法律事務所)

Share

コラムのテーマ一覧

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ大阪
  3. 大阪の法律関連
  4. 大阪の借金・債務整理
  5. 西村隆志
  6. コラム一覧
  7. 会社の破産・再生・倒産に関する法律相談

© My Best Pro