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西川智子

遺言・任意後見など「老い支度」の専門家

西川智子(にしかわともこ) / 行政書士

西川智子法務行政書士事務所

コラム

もし認知症になってしまったら”生活はどうなるの?

2018年9月21日

テーマ:認知症・知的障害のための成年後見制度

コラムカテゴリ:法律関連

「もし、自分自身が認知症になってしまったらどうしよう」…老いの不安と向き合う時は誰にでもやってくるものです。特に、1人で暮らしている高齢者であれば将来への不安感も大きくなりがちなのではないでしょうか。そこで今回は、認知症になった時の備えについてご説明します。

任意後見制度を利用するための準備

「一人暮らしで頼れる人が身近にいない」
「今は元気だけれども、認知症になった時はどうすればよいのか」
「いざ施設に入所することになった場合、必要な手続きや費用の支払いなどを自分でできないかもしれない」
などの不安で頭がいっぱいになる方も少なくないと思います。

そうした不安を和らげるために作られた制度が「任意後見制度」です。認知症になる前に財産の管理や相続について考え、「任意後見制度」を利用して、信頼できる人と任意後見契約を結んでおけば、将来認知症になった場合、自分の希望に沿った支援を受けることができるようになります。

それでは、任意後見契約を結ぶためには、どのような準備が必要か見ていきましょう。

○生活設計を作成する
まず、判断能力が衰えた時、自分がどうしたいかを考えてみましょう。判断能力が衰えても介護保険を活用して自分の家で生活したいのでしょうか?あるいは自宅を処分し、そのお金で施設に入りたいのか?判断能力が衰えた後のことを、亡くなった時のことも含めて、判断能力がある間に自分自身である程度決めておくことが大切です。

○任意後見人を決定する
判断能力が衰えた後の生活設計が決まったら、判断能力が衰えた後の生活をサポートしてもらう任意後見人を決めます。任意後見制度は、本人の意思で結ぶ契約なので、任意後見人の選任や援助の内容は自分で決めることができます。
誰に任意後見人になってもらうか迷っている方は当事務所で受任を承ることも可能です。

任意後見人が決まったらその人と一緒に、判断能力が衰えた後の生活設計や、援助してもらう内容について話し合い、信頼関係を十分に築き上げるようにしましょう。

○任意後見契約書の原案を作成する
当事務所で作成した原案をタタキ台にして、任意後見人に支払う報酬や、代理権(サポートしてもらう範囲)を検討します。ただし、食事をする・掃除をする・洗濯をする・買い物に行く、などを援助の内容に含めることはできません。任意後見人にサポートしてもらえるのは、事務手続き(それらをしてくれるヘルパーとの契約代行等)に関することだけだということを理解しておきましょう。

○手続きに必要な費用
それでは次に、任意後見人と任意後見契約を結ぶ際に必要となる費用について見てみましょう。

1.公正証書の作成と登記にかかる費用:約4~5万円
2.家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てを行う際にかかる費用:約5000円~1万円(*1)
3.医師の鑑定が必要になった場合の費用:約5~10万円(*2)

(*1)(*2)は将来もしも認知症になったときに必要な費用で、契約段階では不要です。

他にも、契約や申し立ての際に提出する印鑑登録証明書、戸籍謄本、住民票などに費用がかかります。

将来、認知症になって、実際に任意後見が開始すると、本人(被後見人)の財産から、任意後見人と任意後見監督人に報酬を支払います。支払う報酬の目安は以下の通りです。

○任意後見人
月額2万円程度
管理する財産の合計額が1000~5000万円以下の場合は月額3~4万円
5000万円を超える場合は5~6万円
契約時に双方話し合いで決めますのでこの限りではありません。

○任意後見監督人
管理する財産の合計額が5000万円以下の場合は、月額1~2万円
管理する財産の合計額が5000万円を超える場合は、月額2万5000円~3万円
   家庭裁判所が本人の財産状況を勘案して決めます。

任意後見のタイプ

任意後見は、本人(被後見人)が必要とする援助の時期に応じて「将来型」「移行型」「即効型」の3つの型があります。

○将来型
現在は判断能力が低下していないのですが、任意後見契約を締結しておき、将来、認知症などになった時に任意後見を開始します。

○移行型
3つのタイプの中で最も利用されているのが、この移行型。現在は、判断能力に問題がないので、任意後見契約とは別に見守り契約を結んでおき、必要に応じて財産の管理などの支援を受けます。将来、判断能力が低下した場合は、任意後見を開始します。

○即効型
これはすでに判断能力が低下した人が対象で、契約後すぐに任意後見を開始します。
※判断能力の低下の程度によっては契約ができないことがあります

任意後見契約の事例

それでは最後に、実際にどのような時に任意後見制度を活用したのか、事例をいくつか見てみましょう。

○将来、認知症になった時にことを考えておきたい
最近物忘れがひどくなり身体の自由もきかなくなった。妻は健康に不安があるので、自分の判断能力が衰えた後は、財産の管理や医療・介護の手続きなどを息子に託したい。

→息子と「任意後見契約」を結びます。

○夫が残してくれた財産を使いたい
判断能力が低下した後に、夫が自分のために残してくれたお金を使いたい。

→この場合も、元気な間に任意後見制度を利用して、お金の使い方や諸々の契約を代行する人を決めておけば安心ですね。

○身体の不調がきっかけで将来に対する不安が高まった
子どもがなく、兄弟も遠方に住んでいる。身体に不調を覚えているが、もし入院となった場合、自宅の管理を任せられる人がいない。また、認知症になった場合に面倒を見てくれる人もいないので不安でたまらない。

→このような場合は、再婚や養子縁組などによって、面倒を見てくれる身内をつくる方法が考えられます。しかし、財産の使い込みなどの心配も拭いきれず、そうした不正が起きた場合、止めてくれる人もいません。

そこで、こうしたケースにおいても任意後見制度を利用することをおすすめします。任意後見制度を利用すると、家庭裁判所が任意後見監督人を選定するので、本人の代理人である任意後見人に不正がないかどうかを監視します。

この記事を書いたプロ

西川智子

遺言・任意後見など「老い支度」の専門家

西川智子(西川智子法務行政書士事務所)

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