マイベストプロ京都
矢田倫基

生活再建を支援する任意売却のプロ

矢田倫基(やたともき) / 不動産コンサルタント

烏丸リアルマネジメント株式会社

コラム

債権者(銀行)に黙って所有権移転してはいけない!

2016年3月12日 公開 / 2016年9月1日更新

テーマ:その他

コラムカテゴリ:お金・保険

住宅ローンが終わっていない状況(抵当権がついている状態)で、その不動産を誰かに譲り渡し(所有権の移転)たい、という場合があります。
例えば、「離婚による財産分与の為」、「転勤などによって引っ越しが必要になった為」、はたまた「他の債権者からの差し押さえを逃れる為・・・」など、いろんな状況があります。

法律の定めるところ、住宅ローンが終わっていなくとも(抵当権がついていても)、それをいつ誰に譲ろうとも、不動産所有者の都合で譲り渡すことは可能です。

しかし、住宅ローンを組んだ際、銀行と所有者(債務者)との間で、必ずこんな取り決めをしています。
それは、抵当権設定契約です。


<抵当権設定契約書>
第●●条
乙は,抵当権が設定されている間,甲の承諾を得ずに,本件担保物件の所有権移転し,賃借権設定,その他本件担保物件の現状を変更してはならない。


住宅ローンがまだ残っている場合に不動産の所有権などを誰かに変更する場合は、必ず銀行(担保権者)に承諾をもらわなければなりません。
しかし、余程のことがない限り変更は認めてくれません。

当然、譲り渡すことで住宅ローンの残債務が全て完済するのであれば、所有権の移転は認めらます。
問題は、依然住宅ローンが残るようなケースです。
この場合は上記のとおり変更は認められません。

勝手に所有権移転をしてしまうとどうなるのか・・・

法律では住宅ローンが残っていようとも所有権移転は許されているため、自分で法務局へ行って銀行に黙って変更することができます。
しかし、それを本当に行ってしまうとどうなるのか・・・。
当然、契約違反となり、それまでの契約が解除されてしまう恐れがあるのです。
解除されると、分割して返済する権利が無くなり(期限の利益喪失)、一括弁済請求(ローン残額全て支払う)を受ける事態になってしまいます。
とは言いながらも、実際のところ、そこまでされることはほとんどありません。
それでも契約書にはしっかりと契約違反となることが明記されているので、それだけのリスクを犯してまで、所有権を移転させようと思う方は少ないでしょう。

しかし、それでも、所有権移転をしたいと望む人がいる・・・

しかし、それでも所有権移転をしたいと望まれる人もいます。
それはどんな人か・・・。
冒頭でも言いましたが、「他の債権者から差し押さえなどを逃れるため・・・」といった動機をお持ちになられている人です。
他の債権者とは、抵当権者(担保権者)でない債権者です。
抵当権者は不動産そのものを担保にとっている為、不動産の所有権が誰に移ろうとも関係なく不動産を処分(競売)することができます。
しかし、抵当権者以外の債権者は、債務者の所有する財産にしか差し押さえをすることができません。
どういう事かというと、債務者が所有する不動産の所有権を誰かに移転してしまえば、自分の財産でなくなる為、債権者は差し押さえが出来なくなってしまうということです。

詐害行為

これを知って、所有権移転をしたいと望む訳ですが、これは詐害行為(民法424条)になる可能性が高いのです。
詐害行為になるか否かは「差し押さえを逃れる為」という動機の立証がポイントになるのですが、所有権移転をするタイミング、誰に譲渡したかなどの状況判断によって、裁判所は詐害行為であったかどうかを判断します。
詐害行為であると判断されれば、所有権は強制的に元の所有者に戻されます。
結局、債権者に差し押さえられるということになってしまいます。
ここで注意しなければならないのが、詐害行為は不法行為であるということです。
場合によっては、刑事罰を受けるということもあるのです。
いずれにしても所有権を移転する動機によって、法律上の問題が発生する場合があるということを知っておいてください。

以上、「債権者(銀行)に黙って所有権移転してはいけない!」のお話しでした。

この記事を書いたプロ

矢田倫基

生活再建を支援する任意売却のプロ

矢田倫基(烏丸リアルマネジメント株式会社)

Share

関連するコラム

矢田倫基プロのコンテンツ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ京都
  3. 京都のビジネス
  4. 京都の事業承継
  5. 矢田倫基
  6. コラム一覧
  7. 債権者(銀行)に黙って所有権移転してはいけない!

© My Best Pro