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猪野由紀夫

介護福祉事業の利益拡大を応援する経営コンサルタント

猪野由紀夫(いのゆきお) / 税理士

DCC株式会社

コラム

介護業界を変える介護ロボットの効果

2020年1月22日

テーマ:介護

コラムカテゴリ:ビジネス

(概要)
介護業界の人材不足は大きな問題で、早期離職なども問題になっています。その要因のひとつが、介護者の負担の重さと言えます。ある意味、肉体労働とも言える介護職では、介護が困難になり働けなくなることも珍しくありません。

そこで、介護者をサポートして負担を減らす効果のある移乗介護ロボットの導入を考えていくことも必要になってきました。移乗介護ロボとはどういったものなのかをご説明します。

(本文)
移乗介護ロボットとは?
移乗介護とは、要介護者が食事や着替え、入浴などをする際に、介護者がその動きをサポートすることを言い、身体介護の基本となります。

そしてこの時のベッドから車椅子、車椅子から各場所への移乗介護の負担を軽減してくれるのが移乗介護ロボットです。

移乗介護ロボットには、装着型と非装着型の2種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

移乗介護ロボット 装着型について
【特徴】
介護者が自身の身体に装着して動作をサポートするタイプです。駆動方式には空気圧を利用するものとモーター式があります。

<空気圧式>
空気圧で人工筋肉を伸縮させて、介護者の力の負担を軽減します。
メリットとしては、電気を使わないので浴室などの水に濡れる場所でも安心して使えることと、送り込む空気の量によって補助力を調整できることがあります。
逆に、空気の供給方法によっては行動範囲や使用時間が制限されることもあるのがデメリットです。

<モーター式>
介護者の生体信号を検知して、モーターで力を補助します。
装着者に合わせたサポートをしてくれるのが最大のメリットで、移乗介護だけではなくその他のシーンで活用することで、その効果を発揮してくれます。
デメリットとしては、着脱に時間がかかること、高性能なだけにその分価格が高額になってしまうことです。

移乗介護ロボット 非装着型について
【特徴】
非装着型は、主にベッドと車椅子までの移乗に特化した介護ロボットで、抱え込み式、シート持ち上げ式、ベッド一体型の3種類があります。

<抱え込み式>
人による移乗介護と同じように、要介護者を正面から抱え込む方式で、要介護者自身が介護ロボットにつかまって、動きに必要な力をサポートする方式です。
背中側が空いた状態なので、ズボンなどの脱ぎ履きが容易にできます。ただし、要介護者がベッドから起き上がることが必要なので寝たきりの人には使用できません。

<シート持ち上げ式>
ベッドに装着する介護ロボットで、敷いてあるシーツごと要介護者を抱き上げる方式です。
装着することでベッド自体が介護ロボットになるイメージで操作も簡単、要介護者の状態を問わずに使えるのがメリットです。
デメリットは、シートごと持ち上がるので衣服の脱ぎ着がしにくく、他の場所への移乗ができないことです。

<ベッド一体型>
ベッドと車椅子を合体したような介護ロボットです。他の場所への移動時にはベッドから車椅子の部分を切り離して、マットレスと共に車椅子として使えます。
使用時には、要介護者の状態を問わずに車椅子側にずらすだけなので、介護者への負担はほとんどありません。
この方式は、ベッドから車椅子への移乗に特化した介護ロボットと言えます。


移乗介護ロボットを導入することによる利用者のメリット
要介護者の日常生活を維持するためには、さまざまな行動に対する介護が欠かせません。介護者は、基本的な動作となる「寝返る」「起き上がる」「座る」「立ち上がる」「歩く」などのサポートをするのですが、それに伴う肉体的・精神的負担がかかってきます。

介護者側には抱きかかえて移動する際の過度の疲労や腰痛などの肉体的負担と、安全面を考えた精神的負担、要介護者側には「申し訳ない」「恥ずかしい」などの精神的負担がありますが、移乗介護ロボットを導入することでこれらの負担を軽減する効果が期待できます。

また、介護ロボットの導入で業務効率が向上すれば、人手不足の解消や人件費削減にもつながってきます。

移乗介護ロボットを適材適所で導入することで、より明るい介護の現場作りを実現することができるでしょう。

介護ロボット導入のための介護現場の課題
「平成28年度厚生労働白書」によると、日本の総人口に対する高齢者の比率は年々上昇していて、2035年には約3人に1人、2060年には約2.5人に1人が高齢者になると見込まれています。

そんな中で、今後も要介護認定者の数は大幅に増えていくことが予想され、ますます介護者の不足が深刻になっていくことでしょう。

介護業界の人手不足が続く中で、肉体的・精神的負担に耐えながら介護業務をしている介護者たちと、増え続ける要介護者たちのためにある介護ロボットなのですが、「介護ロボットオンライン」によると、

・介護ロボットを導入している施設 28.6%
・介護ロボットを導入していない施設 71.4%

となっています。

その理由としては、

・価格が高すぎる
・介護ロボットの扱いが難しそう
・介護ロボットを使うスペースがない
・補助制度などが煩雑なので
・人で対応できると思うので

などがあります。

深刻化する介護問題を救うために期待される介護ロボですが、その普及にはまだまだ課題や問題があります。特に考えたいのが、「より実用的な効果のある、安価な介護ロボットの導入」ということです。

現在、厚生労働省は「介護ロボット等導入支援特別事業」を進めていますが、これをベースに介護ロボットを普及させて、いかに介護者と要介護者の負担を減らしていくかを考えて行く必要があるでしょう。

この記事を書いたプロ

猪野由紀夫

介護福祉事業の利益拡大を応援する経営コンサルタント

猪野由紀夫(DCC株式会社)

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