マイベストプロ神戸
坂部智子

介護サービスのプロ

坂部智子(さかべともこ)

神戸・長田の宅配ショップ ともべぇ

コラム

あの情景が

2011年9月7日

テーマ:母の介護

コラムカテゴリ:医療・病院

夕食が終わると、「眠れるように」母に薬を飲ませるので、
そのあと、椅子に座ってTVを見ている間にだんだんぼ~っとしてきて
足元が危なくなる前のタイミングを見計らって、トイレに連れて行き、
布団へといざなう・・・のがここんとこのいつものパターン。

そのタイミングが早すぎても、何度も起きてきてしまうし、
まだまだ・・・と思っていたら、ヨタついて歩けなくなり
二人してこけそうになり、えらいことになる。

「眠れるように」の薬のかげんには苦労するけど、“恩恵”には、ずいぶんあずかっている。
しかし、TVに向けている母の視線は虚ろだし、好きな歌がかかっても反応がないし・・・
いったい何を優先しているのか・・・と思うとまだまだやっぱり、心が痛む。

昨晩。
めっきり涼しくなって、山奥の我が家はかなり冷え込んでいた。
すでにぼ~っとなって、TVの前の椅子に座っている母の横で、
私が突然、大くしゃみをした。
(大分前のコラムでも書いたけど、私のくしゃみはキョーレツです・・・)

「なんちゅう声出すの・・・」
という声が聞こえた。
えっつ???と母のほうを見ると、
「ぅわっ!!!」と、両手のアクション付きで、私の背中を押す動作をしている。

これは、私が小さいころから、しゃっくりをした時に、何十回、何百回と繰り返されてきたあの情景。
しゃっくりは、びっくりさせると止まるということが、フツーに信じられている家族なので、
しゃっくりをすると、止まるまで、ありとあらゆる方法で、びっくりさせようと試みる・・・

いやいや今のは、クシャミやし・・・・
しかも日常的に、しょっちゅう大くしゃみはしている。
そして、いくら「しゃっくり」をしても、もう決して返ってくることはなかった反応。

なにかが、ほんとうに“ポッ”となにかが、灯ったように
母のどっかの扉が開いて、
これはびっくりさせな~~と、
いや、それもなく、一連の動作として、飛び出てきたのだろうか。

びっくりした。
しゃっくりやったら、完璧に止まったハズ。
またまたボーっとしている母の手をとって、笑った。
半泣きで、笑った。

ずっと、こんな風に言ってもらっていたんや・・・ということを改めて、思い出したし、
母のどこかにもちゃんとしまいこまれていた・・・ということが、ただただうれしかった。

こんな風に、たまに、どっかの扉がパカっと開くことがある。
あふれて出てくるモノの、元の姿を、ちゃんと思い出せることが、本当にありがたいと思う。
共有した思い出が、たくさんあることの幸せ。

人は、生まれて、いつか死ぬ。
その間を、どう過ごすか。
家族とだけではなく、出会った人たちと、
つながった瞬間を、積み重ねて、
大切に生きていくこと。

どんなときにも、どんな状態であっても、
そのことが、ちゃんと心の中で生きている。

そう思えることで、
母に、今、そう教えてもらうことで
ちょっとは、心が楽になれる気がする。
ちょっとは、心が強くなれる、
そんな気がしている。

この記事を書いたプロ

坂部智子

介護サービスのプロ

坂部智子(神戸・長田の宅配ショップ ともべぇ)

Share

関連するコラム

坂部智子プロへの
お問い合わせ

マイベストプロを見た
と言うとスムーズです

お電話での
お問い合わせ
078-647-3152

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

坂部智子

神戸・長田の宅配ショップ ともべぇ

担当坂部智子(さかべともこ)

地図・アクセス

坂部智子プロのコンテンツ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ神戸
  3. 兵庫の医療・病院
  4. 兵庫の介護・福祉
  5. 坂部智子
  6. コラム一覧
  7. あの情景が

© My Best Pro