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小川哲也

借地権・底地の問題や投資物件の評価に強い不動産鑑定士

小川哲也(おがわてつや) / 不動産鑑定士

おがわアセットカウンセル株式会社

コラム

柏市の地価は上昇、下落が混在し、下落率日本一の住宅地も存在します。

2017年4月6日

テーマ:地価の話

コラムカテゴリ:住宅・建物

柏市に下落率日本一の住宅地が存在します


2017年地価公示の公表が3月21日にありました。
既に、色々な媒体で記事になっていますが、全国の住宅地域の中で最大下落地点が千葉県柏市に存在致します。
場所は、柏市大室。柏ビレッジという1980年代に開発された、当時の新興住宅地です。

私が所属する分科会で担当した地点であり、直接の担当ではないものの、その価格水準については分科会内で議論した経緯がございます。

まさか日本で一番下落した地点になるとは思っていなかったのですが、直接担当した不動産鑑定士はかなりの数の取引事例、売募集事例を時間軸で捉え、分析したため、発表した価格は精度の高い適正な価格になっていると思います。

柏ビレッジに限らず他市においても、駅から遠く、生活利便施設が少なく、一つの画地規模が大きめな昔の新興住宅は危ない状況にあると考えます。
区画が整然とし、環境は良好なのですが、やはり不便なところには需要が無くなっています。

柏ビレッジの場合、つくばエクスプレス線の柏の葉キャンパス駅や柏たなか駅徒歩圏の住宅地域が充実したため、その煽りを受けて東急ビレッジ地域一帯が陸の孤島状態になりつつあり、それに加え、柏ビレッジは1980年代に分譲され、購入者の年齢が当時の働き盛りの方が多く、近年は需要があまり無いにも関わらず、高年齢化によって売り物件が増加したのも大きな下落要因の一つとなっています。


上昇、横ばい、下落が混在


一方、柏市の住宅地域は全て下落しているわけではなく、上昇しているポイントもございます。
内訳としては以下の通りになります。



住宅地79ポイント(1ポイントは新規ポイント)のうち、上昇地点が12地点、横這い地点が15地点、下落地点が51地点、新規のためカウントなしが1地点となっています。
割合でいうと、上昇約15%、横ばい約19%、下落約65%、ノーカウント1%となっています。

柏市の住宅地域全体では、一年間の変動率は△0.9%で、下落率は昨年度と同率になっています。

ちなみにお隣の松戸市の住宅地域全体では+0.4%で、昨年度に引き続きやや上昇となっています。

柏市内で上昇した地点の駅距離を見てみますと、最短で徒歩4分、最長で25分という範囲になっており、平均は11.9分という結果となっています。なお、25分で上昇した地点は、人気の住宅地に隣接した地域で、利便施設が比較的多く、道路のアクセスも比較的良好な地点となっています。

私は徒歩10分程度で上昇、横ばいの分岐点が来るかと思っていましたが、やや長く、12分弱程度という結果となりました。

ただし、駅距離が12分以上の地点で上昇している地点の最寄駅は「柏」駅限定となっており、従前から人気の高いエリアだったり、その隣接地域だったりします。

逆に、東武野田線沿線各駅や常磐線「北柏」駅最寄りであると、徒歩10分以内でも上昇していないポイントが存在します。

柏市は、「柏」駅最寄り、東武野田線沿線駅、常磐線「南柏」駅最寄り、「北柏」駅最寄り、TX線沿線各駅等(それぞれ徒歩圏、バス便)で価格推移が変わっておりますので、一口には言えない状況となっているというのが正直なところだと思います。


柏市は上記で述べた通り、エリアによって価格推移が変わってくるのですが、住宅地域79地点のうち、徒歩12分未満が20地点強しかないため、必然的に下落傾向に陥りやすい市域だと言えましょう。これはある意味、政策的に地点を設置していないためで、市内の地価を実態を知るために必要な地点を吟味して設置している結果で致し方ないと考えます。


もう一点付け加えますと、TX沿線の「柏の葉キャンパス」駅、「柏たなか」駅は区画整理事業は施行中で、駅近の地価公示地点が少ないという影響もございます。実際、この2駅の駅近住宅地域はかなり価格が上昇しているのが実態です。


このように柏市は住宅地域だけでも多面的であり、その他、国道16号沿いの大規模倉庫用地等はこの数年でかなり高騰しましたし、路線商業地域も好調です。


なかなか一口で言い表すことが難しい柏市の地価動向ですが、今後も日々、事例を追いながら注視していきたい所存です。

この記事を書いたプロ

小川哲也

借地権・底地の問題や投資物件の評価に強い不動産鑑定士

小川哲也(おがわアセットカウンセル株式会社)

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