歩くことについて語るときに僕が語ること〜漢方的ご自愛小説〜
連休が明けたその朝、僕は3回もアラームを止めた。猫が2回あくびをして、1回だけ僕の腹の上に乗ってきた。
つまり、僕の寝起きはあまり良くなかった、ということだ。
それほど空腹ではなかったが、冷蔵庫を覗き込むと山芋とかぼちゃが残っていた。僕はそれを見て「スープを作ろう」と思った。
それは後になってわかることなのだが、僕はその時にそうすべきだったのだ。たぶん連休中に外で食べ過ぎたせいで、内臓がひそかに抗議していたのだと思う。内臓というのはけっこう繊細なやつなんだ。
僕は山芋の皮をむき、かぼちゃを適当に切り、粉末の鶏ガラスープの素と一緒に鍋に放り込んだ。(不思議なもので、これを使うと「中華風〇〇」になんでもなってしまう)コンロに火をつけてから、朝の光が部屋のカーテンをすり抜けていることに気がついた。
「朝の日差しは無料のビタミンDのサプリメントだ」と誰かが言っていた。
朝日に当たることは悪い気がしないので、スープができるまでの時間、時間にしたらほんの数分かもしれないが僕はそのサプリメントを取ることにした。僕はコーヒーのマグを片手にベランダに出て、深呼吸をした。風はすでに夏の手前ぐらいの感じだった。
連休というのは、人間の生活リズムをじわじわと壊す魔法のようなものだ。夜更かし、暴飲暴食、無意味なNetflixと次々と襲いかかるSNSのリール動画。
唐突な遠出、そして意味のない渋滞。その魔法が解けたあとには、少し疲れた「本来の自分」が、ソファのすき間に落っこちている。僕はGW明け最初の日曜日、その落し物を、スープを煮ながらゆっくり拾い集めることにした。
仕事の予定も、今週は“軽め”にしておいた。本気を出すのは来週でもいい。というより、この時期に全力でアクセルを踏むと、たいてい後でパンクする。最初の1週間は、7割でいい。7割で走れるように作られてる時期って、あるんだ。それを知ってる人が、意外と少ないだけで。
午後、近所の公園を少し歩いた。歩道の影にタンポポが揺れていて、小学生がその上をジャンプして飛び越えていた。「おじさんの靴、古いね」と言われたけど、僕は「君より長く生きてるからね」と笑って返した。
夕方、パソコンを明けたが早めに閉じてしまった。本来なら、あと2本メールを返すべきだったかもしれないけど、そのかわりにスーパーでレモンを1個買った。夜の湯船に浮かべると、思った以上に香りがよく、湯気の中で、今日1日がすこしずつ溶けていく。いいお風呂って、そういう時間なんだと思う。
夜はスマホの通知を切って、ハーブティーを淹れた。
LINEの返信をしないとうるさい彼女には「今夜は早く休むから」といつもより2じかんほど早くLINEを入れておいた。準備は万端だ。カモミールの香りが、使い古した脳のしわのあいだをそっと撫でていく。眠りの準備を始めた体は、いつもより静かだった。
連休明けの1週間は、無理をせず、予定を軽くして、早く帰って、よく眠る。そして、スープを作る。それで、たいていのことはどうにかなる。
その夜、猫はもう僕の腹には乗ってこなかったけど、足の先で僕のくるぶしにそっと触れていた。猫なりのご自愛、なのかもしれない。
【解説】連休明けは何かと「あれしなくちゃ」「これしなくちゃ」と気忙しくなり、ストレスフルになりやすくなります。
人間の乱れた自律神経のリズムが戻るには一説には1週間はかかると言われていますので、今回ご消化したい漢方的な「気を巡らす」「気を緩める」ご自愛法をぜひ少しでも取り入れて、GW明け最初の週末を過ごしてみてください。
GW以外でも連休明けはいつでも当てはまるし、毎週月曜日は「ちょっと緩めの予定」にしておくと1週間を楽に過ごせると思います。
いきなりフルスロットルは故障の元。無理せずゆっくりスタートしましょうね。
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