『夏の貧血と不思議な老人』―前編―
【前回のあらすじ】春とはいえまだ夜の風が冷たく感じるある夜、僕はいきつけのバーに立ち寄った。いつもなら物思いにふけるはずの時間だが、その日はあることが頭にひっかかり、僕はため息をついた・・・・
僕は5月病なのかもしれない、そうマスターに指摘されて僕はその対策をマスターに尋ねた・・・・
「5月病か……それを防ぐためには、まずはゴールデンウィークの過ごし方が大事だよ」
マスターの声に耳を傾けながら、僕はグラスを少しだけ傾ける。
春の風が、外の街並みを通り抜けて店内にひんやりとした空気を運んできた。
「新しい環境に慣れようと頑張りすぎて、ゴールデンウィークに一息ついた瞬間に自律神経が乱れる。気を抜くタイミングが肝心なんだ」とマスターは言う。
「休むことが大切、というわけだね」と僕は返す。
「でも、ただ休むだけでは足りないんだよ。
休養のときに大事なのは、生活リズムを崩さないことさ。
普段の寝る時間や起きる時間をできるだけ保つことが、体内時計を狂わせないためには必要なんだよね。」
僕はそれを聞きながら、つい最近の自分の過ごし方を思い返す。
ゴールデンウィーク中、夜更かしをしたり、昼まで寝てしまったりしたことが何度もあった。
「なるほど。休みだからってリズムを崩すのはよくないってことなんだね」
「そう。朝はできるだけいつも通りの時間に起きて、昼間に日光を浴びることが大切なんだよ。
体内時計を整えるためには、朝の光を浴びて、夜にはリラックスして寝るのが理想的なんだ」
「確かに、普段はなかなか朝日を浴びる時間なんてないから、休みの日ぐらいは少し早めに起きて、外に出てみるのもいいかもしれないよね。」
「うん、それがいい。あと、朝食も重要だ。特に朝の7時から9時は胃腸に気血が巡る時間だから、軽い食事をゆっくりと食べるのが体に優しいんだよ」
僕はグラスを置き、少し考える。
普段は朝食を急いで食べがちだけれど、休みの日にはゆっくりと食事を取ることが重要だと気づく。胃腸に優しい食事を心がけるのも、健康的な過ごし方の一つだ。
「それともう一つ、休み明けにうまく仕事モードに切り替えるためのテクニックもあるんだよ」
とマスターが続ける。
「それは？」
「簡単さ。休み明けの初日は、なるべく軽めの仕事にしておくことさ。無理に忙しい仕事を詰め込むと、ストレスが溜まって、また体調が崩れやすくなるからね」
「なるほど、休み明けに余裕を持たせるってわけか」
「そうそう。余裕を持ってリラックスして仕事を始めるだけで、気持ちがだいぶ楽になるよ」
その言葉に、僕はうなずきながらもう一口飲み干した。確かに、無理をせず余裕を持つことが、精神的にも体調的にも重要だと感じる。
「やっぱり、生活リズムを保ちながら、心身を休めることが、5月病を防ぐ一番の方法なんだな」
「その通りさ。あと、少しだけでも良いから趣味や好きなことを楽しんで、自分のペースを大切にすることが、心の回復を早めるんだよ」
僕は再びマスターの言葉を噛みしめながら、穏やかな春の夜の空気に包まれて、しばし思索にふけった。日々の疲れやストレスを軽減し、心と体のバランスを保つためには、休養の仕方ひとつでも大きく変わる。
「よし、今年のゴールデンウィークは、ちゃんと生活リズムを守って過ごしてみるよ」
マスターがにっこりと微笑んだ。
「それが一番だね、無理せず、でも気をつけて過ごしてごらん。次に会うときは、元気な顔を見せてくれることを楽しみにしているよ」
僕はうなずきながら、もう一度グラスを手に取った。少しずつ春の空気が、心を解きほぐしていくようだった。
次回へ続く。
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