家飲みは意外と飲み過ぎちゃう?漢方的『二日酔い』対策
☆酒は百薬の長?
今回はお酒を飲む機会が多い年末年始、また、無尽という文化が根付いておりお酒を飲む機会が何かと多い山梨県民の皆さんに、漢方の知恵を活用してお酒と上手にお付き合いする方法などをお届けしたいと思います。
お酒と言うと必ず出てくる言葉が
『酒は百薬の長』
という言葉です。お酒好きの方の金看板のような物で『お酒カラダに悪いよ』ということを言われると
『いやいや、酒は百薬の長だから〜』と頻繁に使われていると思います。この『酒は百薬の長』って本当なのでしょうか?
百薬の長、ですから酒はどんな薬にも勝る、という意味です。実はこの言葉には語源があると言われています。
それは『漢書』と言われる中国の書物で漢王朝(いわゆる前漢時代)のことを記した歴史書なのですが、そのなかの『漢書・食貨志』には、当時の人々が法律で禁止されていた酒を密造する人があまりにも多いため厳しく法律を運用したところ、密造は確かに減ったが酒の販売量自体もガタ減りしてしまい、見込んでいた酒税があげられなくて困った政府が
『酒は百薬の長』という宣伝コピーをつくり飲酒量を増やそうとしたことが発端という記載があるそうです。
今考えるとすごい話ですよね。
政府が『おい、税収が足りないから酒税とたばこ税で収入をあげよう!』
と取り組むような物ですよね。
☆お酒のもつ本当の働きとは?
では、百薬の長ではない、というある意味化けの皮が剥がされてしまったお酒ですが、カラダにとってプラスの働きがあることは決して嘘ではありません。
世界の歴史を紐解いてみてもキリスト教ではワインが重要な役割を果たしていますし、古代ギリシャ神話では『酒の神』もいるぐらいです。酒の神といえば日本の神話でも同じですが世界中の神話に出てくる神様はけっこうお酒が好きな神様が多いですよね(笑)
紀元前から世界中でお酒は作られており、薬のように使われていることもわかっているのでタバコとちがい完全にカラダにとってマイナスのものではありません。
☆セントバーナードの首になぜお酒が?薬としてのお酒
お酒には薬的な側面も非常に強いという逸話で有名なのがスイスでの話です。
スイスでは山岳遭難者救助のために救助犬であるセントバーナードの首に小さな木の樽をつけて遭難者の捜索を行っているそうです。
その樽の中に入っているのは『お酒』
遭難して疲れているので『まぁ一杯どうぞ』というわけではもちろんなく、、
ブランデーやラム酒などのアルコール度数の高いお酒を入れて雪山で遭難した人のカラダを素早く温める『薬』として使用していた歴史もあるのです。
また、中医学にもお酒には様々な薬効があると考えられています。
◆お酒の薬膳的働き
・調胃→冷えた胃を温め機能回復する
・散寒→カラダを温め、寒気を取り除く
・通経→血行を促進して生理不順などを解消する
・舒筋(じょきん)活血→血行を促進して筋肉痛をやわらげる
このような働きがあると考えられています。
確かにお酒を飲むと瞬間的にカラダが温まる感じはすごいものがあります。語弊を恐れずに言えばどんな薬を飲むよりも即効性がある薬とも言えると思います。
お酒に弱い人だとお猪口1杯のお酒を飲んだだけで顔が真っ赤になりカラダが熱くなるような経験をしたことがあると思います。
☆酒は薬と一緒・効き目が強いものほど使い方が重要
お酒を薬と考えるとこれほど即効性があり、効き目が強い物はありません。ある意味非常に効き目が強い薬と言えます。
それだけにお酒は使い方、飲み方が非常に重要なのです。
薬も同じで、効き目が強い薬ほど服用量や服用期間など非常に注意深く投与されますよね。
様々な炎症や痛みに使う副腎皮質ホルモン剤・プレドニンという成分を含む薬がありますが、内服で使う場合は服用量の管理や、服用をやめる時は減薬の仕方などきちんと医師の管理下で行わないと副作用などが起こりやすく注意が必要なのですが、これと同じようにお酒というものも効き目が強いからこそ、飲み方、楽しみ方にも注意が必要なのです。
お酒を飲みすぎて肝臓の病気になったり、腎臓を傷めたり、依存症になってしまったりする話はよく耳にすると思います。
『酒で身を滅ぼす』
なんて方が出ないように飲み方、使い方が大切です。
☆お酒が合わない体質とは?
お酒は体質に合わせることが非常に重要です。一般的にはお酒を少し飲んで顔がすくに赤くなるタイプの方はアルコールを分解する酵素がカラダに少ないタイプの人なので、できれば飲まないほうが良いでしょう。
顔がすぐに赤くなり、アルコールが苦手だった人が付き合い等で酒を飲む機会がふえて徐々に飲める量が増えてくると
『鍛えたら飲めるようになった』
という方がいますが、このようなタイプの方が一番危険なので、もともと赤くなる方はできるだけお酒は控えましょう。
中医学的な体質では『肝陽亢盛』と言われるのぼせがちで熱っぽい体質の方は温める作用が強いお酒は全般的に向いていません。また、このようなタイプの方は血圧が高めの方が多いので、酒の作用で血圧が上昇しやすくなるので注意が必要です。
また、もともと食べ過ぎやカラダに余計な物を溜め込みやすい『痰湿』タイプの人はお酒が浮腫みの原因になったり、食欲を増進させすぎて食べすぎの原因となるので控えめにしましょう。
カラダの潤いが不足しやすい『陰虚』タイプの方も注意が必要です。アルコールは利尿作用が強くカラダの潤いを必要以上に失ってしまうので(お酒を1リットル飲むと尿が1.5リットルでるとも言われています)注意が必要です。
また、潤い不足の陰虚の方は粘膜も弱りやすいのでアルコール度数の高いお酒を飲むと胃の刺激となり胃痛や胃粘膜のびらんなどの原因となりやすいので気をつけましょう。
そして何より子供と妊婦さんはアルコール摂取を禁止されているので当然NGです。
先程お酒を『強い薬』と例えましたが、小さな子どもや妊婦さんも作用が強い薬はよほど出ないと使いませんよね。お酒もある意味そういう理由、子供の未発達のカラダや妊婦さんの負担が多いカラダではアルコールをしっかり分解できなくてカラダに大きな負荷になるので注意が必要なのです。
また、ほとんどのお酒がカラダを温める『温性』もしくは『熱性』なので炎症が起きていて患部が熱を持っているときなどはお酒は飲まないようにしましょう。
次回もお酒について、次回はお酒の種類別の薬膳的な働きなどについてお届け致します。
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