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深田倍生

ITと企業経営両方の知識を持ち、企業のIT化を支援するプロ

深田倍生(ふかだますお) / ITコーディネーター

株式会社テクノプロジェクト

コラム

春を目の前にして色々と考えてみた

2024年2月27日

テーマ:ひとりブレスト

コラムカテゴリ:ビジネス

 カテゴリー「ひとりブレスト」は、私が想像(妄想の方が正確かも知れません)を巡らせ、もしかしたらイノベーションの種になるかも知れないテーマをひとりでブレーンストーミングし、ご紹介するものです。かなりくだけた話になるかも知れませんが、本人は大真面目に考え続けていることですので、もしご興味があれば、ご一緒に想像を巡らせましょう。今月は個人的に注目しているものを一挙に放出しました。話のネタにご活用いただければ幸いです。

ライドシェアとグリスロ

 ライドシェアは、直訳すると「ライド=乗る」を「シェア=共有」することで、一般的には「相乗り」や「配車サービス」を指します。自家用車の所有者と自動車に乗りたい人を結び付ける移動手段ということです。タクシーと似ていますが、タクシーとは異なるものとして語られています。タクシーは、新型コロナの感染拡大によって利用客が大幅に減って収入が減少したことや車内での感染の懸念から運転手さんが離職されるケースが相次ぎ、この4年で減少が進んだとみられています。最近、タクシーがつかまらないという話をよく耳にします。新型コロナ感染拡大が落ち着いてきたからと言って、離職された運転手さんがすぐに戻られるわけではなく、需給ギャップが一層激しくなり、タクシーがつかまらないという現象が起きているようです。タクシーは、通院や買い物に使うという高齢者の重要な移動手段でもあることから、タクシー不足は地方も含めて日本全体の社会課題になってるといっても過言ではありません。
 こうした中、ライドシェアに関し、菅義偉前首相が2023年8月に解禁に向けた議論の必要性に言及され、話題にもなりました。デジタル行財政改革会議が2023年12月に発表した中間とりまとめでは、現状のタクシー不足を地域の自家用車や一般ドライバーを活用したライドシェアによって補う方針が打ち出されました。タクシー事業者にとっては、ライドシェアによって乗客獲得競争が激化する上、乗客の安全確保の観点からも反対が叫ばれていましたが、需給ギャップを埋めるためにも妥協案が示されました。
 タクシー配車アプリにより、タクシーが不足する地域・時期・時間帯を客観指標化し、それに基づいて交通空白地・時間を特定してタクシー事業者の運行管理の下で一般ドライバーによる配車とタクシー運賃の収受が可能な運送サービスを2024年4月からスタートすることとなりました。この発表に合わせ、ライドシェアのドライバー募集に関する発表も相次いでいます。
 グリスロというのは、グリーンスローモビリティの略で、電動で時速20km未満で公道を走る4人乗り以上のパブリックモビリティのことを指します。国交省が推進しており、乗合バス事業、タクシー事業、自家用有償旅客運送で運行可能としているものです。自動運転も含め、色々な場所で実証事業も進められています。定期バスの路線が縮小する中において、定期バスとグリスロの組み合わせにより、免許を返納した高齢者を中心に利用促進が見込まれています。
 自家用車もグリスロも、自動運転が進んでくれば、通勤で自家用車を使う人が働いている間に車が勝手にライドシェアで稼いでくれ、自動運転のグリスロと組み合わせることで、高齢者がドア・ツー・ドアで移動できるような時代が来るのかも知れませんね。あ、買い物荷物を運んでくれるような自動運転の台車みたいなものも必要になるかも知れません。ネットでポチればいいじゃないかという人もいますが、買い物の目的はモノを購入するだけではないですからね。

アップサイクルとリフレーミング

 SDGsが叫ばれるようになる前から、リサイクルが社会の中に浸透し、例えば空きペットボトル等は集積され、再度原材料として使っているそうです。PETボトルリサイクル推進協議会の発表によれば、2022年度のリサイクル率は86.9%だそうです。一方、世界に目を向けてみると、欧州のリサイクル率は39.6%(2019年度)、米国では18.0%(2020年度)と非常に低い値となっています。私も水をペットボトルで飲む習慣がつき、毎日空きペットボトルを生み出しているのですが、蓋とボトルを別にして、洗ってしかるべき場所に廃棄しています。私ごときが習慣になっているように、日本では回収率が非常に高く、2020年度の回収率は96.7%だそうです。欧州では57.5%(2019年度)、米国は26.6%(2020年度)に留まっているそうですが、容器包装リサイクル法によて、日本の消費者が積極的に分別に協力していることが大きいようです。
 少し話題が逸れてしまいましたが、アップサイクルはリサイクルと似ている言葉です。リサイクルは、廃棄されるものの中から使えるものを取り出し、原料や材料として再利用することです。一方、アップサイクルは原料や材料に戻すのではなく、元の製品の素材をそのまま活かすという特徴があります。素材をそのまま活かして新たな価値を与えて再生するので「創造的再利用」とも呼ばれています。
 リフレーミングとは、「物事の視点・枠組み」を「組み直す」という意味の心理学用語です。ある出来事の枠組み(フレーム)を変えることで、出来事に別の視点を持たせることを指すそうです。例えば土曜日の夜に「休日はあと1日しかない」と思うか「休日はまだ1日もある」と思うかで、状況の捉え方がまったく異なってくるというものです。コミュニケーション心理学の分野で発展した考え方だそうですが、近年では思い込みや固定概念を見直すことで、自信をつけたり人間関係を円滑にしたりする手法のひとつとして、人材育成やマーケティングなどビジネスシーンでも注目されているのだとか。”リフレーミング=ポジティブシンキング”をイメージされる方もおられるかも知れませんが、リフレーミングとポジティブシンキングは全く同じ考え方というわけではありません。ポジティブシンキングが物事を常に「プラス方向に捉える」のに対して、リフレーミングは、おかれている状況の枠組みを考え直したり、自己の内面に関する感じ方や出来事の解釈を見直したりします。新しい視点に気づき、発想の転換を促すものです。
 現在、世界保健機関(WHO)では65歳以上を高齢者としています。私ももう少しすると仲間入りするのですが、高齢者には、誤解を恐れずに自虐的にいうと”性能劣化”のイメージが付きまといます。運動能力や記憶力等、若い時と比較するとどうしても劣化してはいます。だからといって、社会に貢献できないかというと決してそんなことはありません。人材育成の世界でアップサイクルという言葉は使われていないようですが、同じような文脈でリスキリングという言葉があります。私にはリスキリングよりアップサイクルの方が馴染む感じがします。私は、たとえ高齢になっても、アップサイクルとリフレーミングで自分の新たな付加価値を付け、社会貢献を続けたいという強い思いがあります。

ペロブスカイト太陽電池

 私の家の屋根には、太陽光パネルが鎮座しており、発電所として日々発電を続けています。市場に多く出回っている結晶シリコン系太陽電池です。しかし、太陽電池自体の重さや屋外で耐久性を持たせるためのガラスの重みによる重量がある上、しっかりと太陽を受けないと発電しないというデメリットもあります。また、一般社団法人太陽光発電協会によれば、2020年度国内向けの太陽光パネルの出荷量は512万キロワット分に相当し、このうち8割強が中国など海外で生産されているとしています。そもそも結晶シリコン系太陽光パネルは、シリコン半導体の集積体であり、半導体が光に反応して発電する仕組みになっているので、シリコンが必須となります。そのため、中国製シリコンを使えなくなれば、太陽光パネルの価格高騰は避けられませんし、国内で製造しようと思っても、シリコンが手に入らなければ生産できないという、最近流行りの表現を使えば、経済安全保障の面で懸念があると言えます。
 次世代太陽光パネルとして、注目されているペロブスカイト太陽電池は、「曲げられる(さまざまな形状で使用できる)」「軽い/薄い」「低コスト」という面からも注目されています。結晶シリコン系太陽電池と比較すると、厚さは約100分の1、重さは約25分の1です。さらに弱い光でも発電できます。このような特徴から、身の回りにあるさまざまなものに太陽電池を取り付けることができるため、生活にも大きな変化をもたらすことが期待されています。ペロブスカイト太陽電池は日本で発明された技術であり、さらに主な原料である「ヨウ素」は、日本はチリに次ぐ世界2位の生産国で、世界の29%のシェアを持っており、推定埋蔵量では、日本のシェアは世界の78%のシェアを持っているそうです。原材料を自国で調達できるというのは大きなことであると個人的には思っています。ところが、ペロブスカイト太陽電池の主な原料になる「ヨウ化鉛」や「ヨウ化メチル」は、人体に対して有害性があるため、特に鉛に代わる原料で製造するための研究が国内外の研究所で進められています。
 そのような良いものであれば、早く生産すれば良いと思うんですが、日本で発明されたにもかかわらず、国内特許に留まっています。一方、中国がペロブスカイト太陽電池に関連する特許を取得し続けており、シリコン系太陽太陽光パネルと同じ道筋を辿るのではないかと考える人も多いようですが、2024年01月11日のニュースでは、積水化学が20年の耐久性を持った ペロブスカイト太陽電池を実現する方針を発表し、注目を集めています。
 次世代太陽光パネルを是非実用化し、建物の壁面や車の屋根等、あらゆるところで発電できるようにして、エネルギーを自給自足できるようになることを願っています。今年の元旦の能登半島地震では、大規模な太陽光パネル発電を有するメガソーラーも被災し、多くの課題を突きつけていますが、日本の技術力があれば、こうした自然災害等が発生してても危険が及ばないような技術を開発できると信じています。今回の地震では、多くの方が被災されました。お悔やみとお見舞いを申し上げます。

エフェクチュエーションとコーゼーション

 好きか嫌いかは別にして、イーロン・マスクは、スペースXで民間企業として初めて有人宇宙船を国際宇宙ステーション(ISS)に到達させ、世界で初めて商用ロケットの再使用を成し遂げました。人類を地球以外でも生活できるようにして、人類生存のリスク分散を実現するためのステップの一つだそうです。火星に人類が住めるようにすることを目指しているそうです。また、テスラでは電気自動車をはじめ、家庭用からグリッドスケールまでのバッテリー電動輸送機器、ソーラーパネル、ソーラールーフタイルやその他の関連製品とサービスを提供しています。イーロン・マスクは、いわゆる”くせの強い”人物のようで、強いこだわりを持って製品を生み出しています。技術もさることながら生産工程にもこだわり、部品も自社で生産するなど、製品のみならず、生産工程についても革新的な考え方を実現するアントレプレナーです。
 エフェクチュエーション(effectuation)とは、成功した起業家の思考や行動の共通点を体系化したものです。英語で「(期待する結果をえるために)有効な、効果のある」を意味する形容詞「effectual」と、変化をもたらす働きかけを意味する接尾語「-ation」を組み合わせた言葉だそうです。エフェクチュエーションでは、目標を最初に設定するのではなく、現在の手段や状況を活用しながら新たな可能性を見出していくことを重視します。そのため起業家だけでなく、さまざまなビジネスの場面で注目されています。流動的で変化が激しい現代のビジネス環境においては、従来のアプローチが通用しない場面が増えており、変化に対応しやすいエフェクチュエーションの思考やプロセスが注目されています。冒頭のイーロン・マスクの例は、エフェクチュエーションとは真逆ではないかと思われるかも知れませんが、スペースXでロケットを開発する際、これまでの宇宙開発用部品ではなく、住宅用品等の身の回りにあるものを応用・改善して使うことでコストを圧縮したようです。
 「コーゼーション(Causation)」とは、目標を設定してから達成の手段を検討する逆算的な方法のことで、最初に目標を設定しないエフェクチュエーションとは対極に位置しているそうです。コーゼーションは未来を予測可能だというスタンスを取っているため、未来予測が外れた際に事業全体に大きなダメージを与える可能性があるそうです。
 人事考課で目標管理制度を活用されている中で活動していた私は、コーゼーションの方が馴染み深いのですが、世の中が激変し続けている現代では、エフェクチュエーションの考え方を活かす必要があるかも知れません。ソフトウェア開発の場面では、アジャイル開発というものがあります。アジャイル開発とは、ユーザーニーズとのミスマッチの防止や開発工数・コストのズレを最小限に留めることを目的としたシステムやソフトウェア開発におけるプロジェクト開発手法の1つで、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていく手法を指します。エフェクチュエーションはアジャイルに近いのかも知れませんね。上手にエフェクチュエーションとコーゼーションの両者を使い分ければ良いと思います。

Sora

 2024年2月15日、ChatGPTを運営しているOpenAIから動画生成AIモデル「Sora」(ソラ)が発表されました。動画生成AIとは、指示を入力するだけで動画作成できるものです。生成AIの中でも動画分野のツール開発は難しいとされていましたが、2023年3月にアメリカのRunway社が「Gen-2」という高品質動画生成AIを発表したことで注目が集まりました。個人的な印象ですが、Runway社のツールと比較すると、最新のSoraが一枚上手だと感じます。
 私が小説を読むとき、作者から与えられる文章で情景などを思い浮かべて解釈していますが、もっと具体的に言うと、”動画の断片”のようなものを頭の中で構成しているように思います。作者から次々と与えられる情報で、頭の中の”動画の断片”は次第に具体的になります。同じ作品を読んでも、私の年齢や読んでいる時の環境によって”動画の断片”は変わってくるように思います。以前ご紹介したクールメディアの特徴だと言えるでしょう。
 話をSoraに戻しましょう。評論家がSoraを紹介する際、「小説を動画にできる日が来るかも知れない」と興奮して言っていました。全てがそうであるとは言いませんが、小説や漫画を映画化された時に”これじゃない感”を感じる方がおられると思います。受け取る側が十人十色である以上、映画化した作品が全ての人に受け容れられることは難しいと思います。同じことがSoraにも言えるような気がしますが、動画を検索する際には使えそうな気がします。私の場合は、動画を探す時に探したいものの全てを覚えているわけではないので、なかなか目的の動画が見つからず、気がついたら、まんまと別の動画を観ていることがありますが、Soraが私の言葉で探してくれたら、きっと良い結果が得られそうです。探してくれている間に、やはり別の動画を観ているかも知れませんけど。
 Soraに次のような読書環境を提供されたらハッピーかも知れません。まず私が小説のどこを読んでいるかをウェラブルデバイスでSoraさんに検知していただき、読んでいる箇所に合った効果音やBGMを流してくれませんかね。没入感が増すように思います。よろしくお願いします。

まとめ

 今回は、オムニバス形式でまとめてみました。妄想の世界なので、勝手に好きなことを考えているわけですが、そこから新しい技術やサービスが生まれることだってあります。私はそう信じています。その妄想が信念に変わったら、妄想を具体化するために色々とやってみたいです。行動すれば仲間が増えると思いますので、その仲間と一緒に妄想を具体化したものを世の中に提供するために一生懸命頑張ります。

この記事を書いたプロ

深田倍生

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