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深田倍生

ITと企業経営両方の知識を持ち、企業のIT化を支援するプロ

深田倍生(ふかだますお) / ITコーディネーター

株式会社テクノプロジェクト

コラム

”言語化”スキルを磨く ~マイベストプロコラム執筆で得たノウハウ~

2024年3月20日

テーマ:その他

コラムカテゴリ:ビジネス

 突然ではございますが、今回のコラムが私の最後のコラムになります。2022年の4月からスタートし、このコラムを含め、これまで25個のコラムを公開させていただきました。毎月コラムを公開することを自分に課してスタートしましたが、周囲の方々からは、ネタもさることながら文章にまとめることも大変ではなかと心配していただいていました。確かに大変な作業ではありますが、書くことを生業にされている方々に比べれば気楽なものだと自分に言い聞かせて続けてきました。続けてみると、コラムを作成することが以前と比べて苦にならなくなってることに気づきました。そのあたりのことをまとめてお伝えし、最後のコラムにしたいと思います。

定期的に文章を書くことになった経緯

 実は私は、2009年8月から月刊で文章を社外公開していました。弊社サービスをご利用いただいているお客様向けに当時流行のメールマガジンを発信しており、どのような理由であったかは忘れてしまいましたが、編集後記のようなものを執筆したのが始まりで、本コラムまで数えて175本の文章を発表してきたことになります。毎月欠かさず文章を発表してこられたのは、読んでいただける方々の温かい反応のおかげであり、とても感謝しています。また、ひと月も欠かさなかったことに対して、マラソンの有森さんのように自分で自分を褒めてやりたいと思います。
 さて、毎月文章を書くと言っても、書くためのネタがないと話になりませんし、そのネタに対する自分の考えも整理しなければならない上、それを読んでくださる方に正確に伝わるように書かなければなりません。学校の作文は、苦手意識は無かったにせよ、とても面倒に思っていましたし、宿題の読書感想文にいたっては、ろくにその本を読みもせず、本の最後に書いてある解説をベースにあらすじを追いかけ、たまに「~はすごいと思った。」という感想めいたことを書いていくという不真面目な向き合い方(先生ごめんなさい)でした。そんな人間が毎月文章を発表するのですから、よく引き受けたものだと今でも思います。頼まれたら嫌と言えないお人好しなのかも知れませんね。

私の場合のネタ探し

 私が書いていた文章は仕事の一環と言えなくもないですが、いわゆる本業はちゃんとありますので、文章を書くためには、仕事以外の時間を使うことになります。通勤時間、お風呂、食事やテレビを観ている時間でさえ、”書かねばならない”というプレッシャーを感じていました。まずはネタを探さなければならないので、新聞、雑誌、書籍、テレビやインターネットなど、あらゆる媒体に触れていました。そこで見つけたネタに対して、自分なりの考えをまとめるわけですが、伝えたいことがブレると文章の構成もおかしなことになります。ネタを見つけては構成を考え、挙句の果てにボツにするようなことを繰り返していたように思います。そうしているうちに納期は近づいてきます。1ヶ月などあっという間です。納期前の週末は、家でうんうん唸りながら、文章をひねり出すという日々でした。
 こうした日々を送っていると、ネタにできるものが吸い寄せられてくるような感覚になりました。以前は、あらゆるネタに触れ、使えるか使えないか(考えがまとまるかどうか)を考えていました。これが結構辛い作業でした。そもそもネタになるかどうかは、しっかりと読んだり見たり聞いたりしないと分からないですし、そのために膨大な時間が必要になってきます。挙句の果てにボツにするときは、途方に暮れそうでした。しかし、徐々にネタ同士やその背景を関連付けて理解できるようになり、大袈裟に言うと、社会課題の解決に繋がりそうなネタとか、自分が提案してみたいと思っているようなネタが自然と取捨選択できるようになってきました。これがネタとするものが吸い寄せられてくる感覚です。
 学校では読書をしなさいとか、社会に出ても上司から読書をするように勧められてきました。仕事が忙しいと読書の時間はなかなか取れませんでしたが、移動時間は読書をするようにしていました。ご説明したとおり、普段はあらゆる媒体にも触れないといけませんので、触れられる媒体が限定される移動時間くらいしかなかったというのが実態だったのですが、読む本のジャンルは色々なものでした。新聞で紹介されている本、インターネットで取り上げられている本、書店で目にして心惹かれた本や周囲から勧められた本などです。いろいろな本を読んでみると、小説や偉人の本などは自分の価値観や人生観などを磨くものとなり、ノウハウ本などは自分が持つ手段を磨くものに分かれていたなと感じます。私の場合は、価値観や人生観によって課題を認識し、その解決にどのような手段を用いるかという整理になろうかと思いますが、ネタを吸い寄せてくるのは、価値観や人生観ではないかと思っています。

私の場合の文章作成方法

 私は、さぁ書こうと思って机に向かうのは苦手です。そういう訳ですので、机に向かうときは概ね文章の構成が出来上がっていて、吐き出すだけという状態になっています。では、構成はいつどのようにして構築するかという話になります。私は例えば階段を登り降りする時を含めた移動時間などのスキマ時間を活用しています。要するに頭の中でぼーっとと考えているということです。スキマ時間なのでノイズも入ってきますは、これが気づきの契機になったりしますので、集中せずにぼーっと考えているというのが良いのかも知れません。私にはありがたいことに、私の妄想に付き合ってくれる人々が周囲にいます。その人々に対して、内緒で雑談レベルの概略を聞いてもらいます。そこで注意するのは構成と表現です。伝えたいことが正しく伝わるかを重視して雑談として話をするのですが、雑談の良いところは、すぐにフィードバックが得られるということです。そこそこ構成が熟成すると、お客様との雑談に使うこともあります。このようにして、文章の構成と表現を練り上げた上で、作り上げた構成に従って、机に向かってただただ吐き出すということになります。

言語化スキル

 言語化スキルとは、自分の考えや意見を相手が分かりやすいように噛み砕き、伝える能力のことだそうです。言語化スキルと言うと具体的に何なのかがよく分からないのですが、準備力、決断力と語彙力の3つのスキルに分解されるようです。一つずつ確認してみましょう。
 準備スキル
 準備スキルとは言葉で伝える内容や意見を準備するスキルです。言語化に至る最初の過程「意見(相手に伝えたい内容)を整理する」際に必要なスキルを指します。
 決断スキル
 決断スキルとは言語化の過程において自分が伝える内容を絞ったり、賛成反対をはじめとした選択肢から意見を選んだりするスキルです。
 語彙スキル
 語彙スキルとは意見や情報を伝えるために、記憶の中から最適な語彙を選択し、使うスキルです。

 なるほどと思いますね。私がネタ探しをしているプロセスで磨かれたスキルのような気がします。しかし、ただ言語にすれば良いというわけではありませんよね。相手にも依るしタイミングもあるしなどと考えるとコミュニケーションスキルと混同してしまいそうですが、私としては、次の2つのスキルを追加したいと思います。
 洞察スキル
 物事の本質を見るスキルとされていますが、伝える相手の状況を理解することと考えたいです。同じ話でも相手によっては、伝える順番や表現を変更する場合もあります。コラムの場合は、読んでくださる方々の顔を想像しながら書いていました。
 表現スキル
 言語化することは伝わることが目的であると考えれば、伝える相手によって表現を変える必要があると思っています。おじいちゃんやおばあちゃんに「タスクフォース」のようなカタカナ言葉を使うと「頭良さそう」と思われるかも知れませんが、伝わらない(失礼)ですよね。政治家の先生方がカタカナ言葉を使っているのをよく耳にしますが、例えば同僚と話をするときに隠語のように用いる意味が通じ合っている同士であればよいのですが、広く国民に対して説明する際に用いられると、逆に格好悪いなと感じてしまいます。

磨くことができた言語化スキル

 冒頭にご説明したとおり、定期的に文章を生み出すことで、情報を仕入れて、自分の中で付加価値を付けることを結果的に自分に課すこととなり、このような機会に恵まれたことは、本当に幸せなことだと思っています。若かりし頃は、格好良いプレゼンに憧れ、必死に”伝える技術”を身に付けようとしていました。しかし、コラムを書かせていただくことで磨かれた言語化スキルは、結局”伝わる技術”なのだと思います。
 私は音楽に触れることも多いのですが、好きな楽曲は、映像が見えるような気持ちになるものです。詩が映像化を促す場合もあれば、その楽曲を聴いていた頃の情景が浮かぶような場合もあります。以前、ベトナムで仕事をしていた際、同時通訳をこなす人と出会いました。逐次翻訳していたら、話し手の話はどんどん先に行ってしまい、同時通訳なんて無理だと思っていたので、その人になぜ同時通訳なんてできるのかと率直に聞いてみました。その人曰く「聞こえてくる言葉で絵を作って、それを別の言語で説明しているんですよ。」オーマイゴッド(チョイオイ・・・ベトナム語のオーマイゴッド)。聞きながら絵を逐次作っているのか(ここでは絵と言っているのですが、もしかしたら小学校で習うような文章構成図かも知れません)。それにしても凄い能力だと思いますけどね(通訳されている内容が本当に合っているかわかりませんけどね笑)。
 好きな楽曲や同時通訳のレベルまで到達するのは難しいかも知れませんが、読んだり聞いたりしてくれている方々に絵が見えるような文章だったり話だったりができたら良いなと思いますし、これからもそうなることを目指して頑張りたいと思っています。

最後に

 とうとう最後になりました。これまで飽きもせずにコラムを心待ちにして読んでくださっていた方々にとても感謝しています。読んでくださる方々がおられることで私も頑張れました。ここでのコラムはこれで最後になります。「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」またきっとどこかで妄想を発表していることでしょう。見つけたらまた応援してください。これまでありがとうございました。

この記事を書いたプロ

深田倍生

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深田倍生(株式会社テクノプロジェクト)

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