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【交通事故】交通事故の事案における過失割合の認定方法

2015年10月10日 公開 / 2021年1月12日更新

コラムカテゴリ:法律関連

ご無沙汰しております。
弁護士の荻原です。

10月に入り、大分過ごしやすい気候となって参りました。季節の変わり目でもあり、少し肌寒いこともあるため、体調には気をつけて頑張っていきたいと思います。

 さて、今回は交通事故の損害賠償額の算定に関して、
(1)過失割合の認定方法やその際の資料
(2)過失割合の認定に関して弁護士がどのような活動を行うか
について、お話をさせていただければと思います。

1 はじめに
 法律相談において、よく「保険会社から、過失割合が○割だから、損害賠償はこれだけしか出来ないと言われたが、納得出来ない」というお話を伺います。
 ただ、そもそも「過失割合」という言葉自体が日常生活で用いる言葉ではございませんので、急に保険会社からそのようなことを言われた場合、戸惑われる方も多いと思います。

 そこで、そもそも過失割合とは何なのか、過失割合とはどのように定まるのか、ということについてお話させていただきたく存じます。

2 過失割合とは
 交通事故において被害者にも事故原因がある場合に、公平の見地から被害者の事故原因に応じて、裁判上、加害者が支払う損害賠償額が減額されることがあります。この場合に被害者加害者双方にどれぐらいの事故原因があったのかを割合で示したものが、過失割合と呼ばれるものです。
 「過失」というと、どうしても「落ち度」とか、「悪いところ」とか、そのようなことをイメージしがちです。しかし、実際には、「過失」というよりも「事故原因」に近いものであります。

 一般に、誰かに怪我をさせてしまったり、物を壊したりした場合、加害者は被害者に対し、損害賠償責任を負います。損害を発生させた本人に損害を賠償させることが、公平にかなうためです。

 では、損害発生について、被害者にも原因があった場合はどうでしょうか。たとえば、被害者が徒歩で道路を横断中、車にはねられたという交通事故で、被害者が赤信号を無視して横断していた、というような場合です。

 この場合、事故に遭われた被害者の方は本当にお気の毒ではありますが、信号を無視していた被害者にも、やはり事故原因は存在します。にもかかわらず、発生した損害をすべて、(被害者が青信号で横断していた場合と同様に、)加害者に負わせることも、あまりに酷であるといえます。
 そのため、被害者にも、事故原因に応じた一定の割合(過失割合)を、支払われる損害額から、減額することで公平な結果を実現することになります(これを「過失相殺」といいます)。

 交通事故の被害に遭われた方からすれば、相手方のせいで怪我をし、仕事を休むなど大変な目に遭っているのに、「過失」「落ち度」などと言われることに納得がいかないかもしれません。
 ただ、実は全く被害者に事故原因がない(過失割合が0)と認められるケースは、そこまで多くありません。多くの事件においては、被害者側にも、程度の差はあれ事故原因が存在します。そのため、どうしても、何らかの過失相殺が認められており、過失割合について争われることも少なくないのが実情です。

3 過失割合の認定方法と、弁護士の活動について

(1)概要
 過失割合については、どのような紛争解決を行うかによって、認定方法が変わります。まず、訴訟になった場合には、関係資料や、当事者の主張をもとに、裁判官が過失割合について判断を下します。

 他方、話し合いによる解決(いわゆる「示談」と呼ばれているものです。)の場合には、双方の合意で決まります。すなわち、本件の過失割合(双方にどれくらい事故原因があったか)はこの程度である、ということを、被害者加害者双方が納得して、それを前提に損害賠償額を定める、ということになります。

 以下、過失割合を判断する際の資料についてご紹介した上で、過失割合の認定において弁護士がどのような活動を行うか、について述べたいと思います。

(2)過失割合の判断資料について
 ア 実況見分調書
  交通事故が発生した際に、警察官が事故状況について、現場の地図等を用いて調査・報告した文書です。当事者と利害関係のない警察官が作成したもので、事故態様を判断する上で非常に重要な資料となります。
  ただ、加害者に対する刑事手続が終了してから開示されますので、交通事故から、早くとも数ヶ月の時間がかかってしまいます。
 イ 交通事故状況報告書
  当事者が作成した、交通事故状況に関する報告書です。どのような態様で事故が起こったかについて、報告したものです。
 ウ その他現場の写真等
  その他、事件現場の写真や、被害を示す診断書、被害車両の写真等も、判断資料となります。

(3)過失割合に関する、弁護士の活動について
  例えば、保険会社から、被害者の過失割合が〇〇割である、と言われた場合に、その割合が妥当か否か、判断できる方は少ないと思われます。依頼を受けた弁護士としては、依頼者に代わって関係資料を吟味し、相手方の主張の当否を検討し、必要であれば反論した上で、適正な金額の損害賠償が支払われるよう、尽力します。
  加害者や、保険会社が不当な過失割合を主張していた場合には、交渉ないし訴訟により、その過失割合を是正し、より多額の賠償を得る事ができる可能性があります。
具体的な過失割合については、事件ごとの個別事情により変動しますので、「相手方が過失割合に基づいて損害賠償の額を減らしており、納得出来ない」とお考えの際は、是非一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。
  

この記事を書いたプロ

荻原卓司

借金問題・個人再生のプロ

荻原卓司(オギ法律事務所)

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