【親子問題】子が年下のきょうだいに暴力をふるう、どこに相談する?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

本記事は、2026年10月時点の法令(児童虐待の防止等に関する法律、少年法、刑法など)をもとに、一般的な考え方を整理したものです。実際に取れる手段は、ご家庭ごとの事情によって変わります。


上の子が下の子に手を上げる場面は、多くの家庭で一度は見られるものかもしれません。ただ、同じ子が同じきょうだいに繰り返し暴力をふるい、年下の子が上の子を怖がりながら暮らしている状態になると、「きょうだいげんか」として見守るだけでは足りない段階に入っていることがあります。親としては、どちらも自分の子であるだけに、どこに相談すればよいのか、相談したら上の子はどうなるのかと迷われることも多いのではないでしょうか。

 この記事では、子が年下のきょうだいに暴力をふるっている場合に、どのような視点で状況を見ればよいか、誰が何歳かによって相談先がどう変わるか、そして親が家庭の中でまず取り組めることを順に整理します。

「きょうだいげんか」と分けて考えるための目安

きょうだいの衝突は成長の過程でよく見られるもので、すべてが問題になるわけではありません。一方で、次のような事情が重なっている場合は、家庭の外の力を借りることを考えてよい段階といえます。

  • 体格や年齢の差がはっきりしていて、いつも同じ側が一方的に手を出していること。
  • けがやあざが残るほどの強さになっていること。
  • 叩く・蹴るだけでなく、物を投げつける、体を押さえつけるなど危険な行為が含まれていること。
  • 年下の子が自室にこもる、家に帰りたがらないなど、生活に影響が出ていること。
  • 「親に言ったらまたやる」といった口止めや脅しがあること。
  • 親が止めに入ると、親にも暴力や暴言が向かうこと。


 とくに最後の点がある場合、親が一人で間に入り続けることには限界があります。親や配偶者にも暴力が及んでいるときの考え方は、【親子問題】きょうだいや配偶者にも暴力が及んでいる場合でも取り上げています。

年下のきょうだいが18歳未満のときに押さえておきたいこと

児童虐待の防止等に関する法律は、主に保護者による行為を対象にしています。そのため、きょうだいからの暴力そのものは、同法でいう「児童虐待」の典型例とは位置づけられていません。もっとも、同法2条3号は、保護者以外の同居人による身体的虐待などと同様の行為を保護者が放置することを、保護者としての監護を著しく怠る行為(いわゆるネグレクト)に含めています。これは2004年の法改正で明確にされた点です。

 また、同条4号は、児童に著しい心理的外傷を与える言動も児童虐待にあたるとしています。暴力を受けることだけでなく、家庭内で暴力が続く環境そのものが、年下の子の心に影響することもあります。

 これらの規定は、親を責めるためのものとして読む必要はありません。むしろ、「家庭の中のことだから」と抱え込まず、子ども家庭支援の窓口や児童相談所に相談してよい場面があることを示していると受け止めるのがよいと考えます。年下の子の安全を守るために外部へ相談することは、親としての責任を果たす行動の一つです。

相談先は「誰が何歳か」と「いま何が起きているか」で変わる

相談先は一つに決まっているわけではなく、被害を受けている子と暴力をふるう子の年齢、暴力の程度、背景にある事情によって変わります。主な窓口を整理すると次のとおりです。

状況主な相談先相談できること
いま暴力が起きている、けがをしている110番、救急その場の安全確保と保護
年下の子が18歳未満児童相談所(全国共通ダイヤル189)、区市町村の子ども家庭支援センター子どもの安全確認、家庭への助言、必要に応じた一時保護
暴力をふるう子が18歳未満児童相談所、警察の少年相談窓口問題行動への助言や指導
緊急ではないが警察に相談したい最寄りの警察署、警察相談専用電話(#9110)相談の記録を残すこと、今後の対応の相談
背景に心の不調がうかがえる精神保健福祉センター、保健所、医療機関受診の判断、家族への助言
学校生活にも影響がある担任、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー学校での見守り、関係機関へのつなぎ
家族の方針や法的な整理が必要弁護士手続の見通し、親の代理人としての対応


 東京都内では、児童相談所を都が設置している地域と、区が独自に設置している地域があります。どこに連絡すればよいか分からないときは、189に電話をすれば地域の児童相談所につながります。夜間に子が暴れたときの窓口は、【親子問題】夜間に子が暴れたときの相談先|時間帯別の窓口で時間帯ごとに整理しています。

 警察・行政・弁護士がそれぞれ何を担うのかについては、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担もあわせてご覧ください。

警察に相談すると、暴力をふるう子はどうなるのか

親がもっとも気にされるのはこの点かもしれません。暴力をふるう子の年齢によって、その後の流れは大きく異なります。

14歳未満の場合

刑法41条により、14歳未満の子の行為は罰せられません。暴力が問題になった場合でも、警察から児童相談所へ通告されるなど、福祉の枠組みでの対応が中心になります。

14歳以上20歳未満の場合

少年法の対象となり、事件として扱われると家庭裁判所に送られます。少年審判は、処罰よりも立ち直りのためにどのような処遇が適切かを考える手続です。18歳・19歳は「特定少年」として、一部の場面で成人に近い扱いを受けます。流れの詳細は【親子問題】少年事件の流れ|家庭裁判所送致から審判までで解説しています。

20歳以上の場合

成人として刑事手続の対象になります。家族間の窃盗などに適用される特例(刑法244条)は、暴行や傷害には及びません。この点は【親子問題】親子間の暴行・傷害は立件されるのか|特例が及ばない範囲で詳しく取り上げています。

 いずれの年齢でも、警察に相談したことがすぐに逮捕につながるとは限りません。重大な事案でなければ、まず本人から事情を聴くなどしたうえで対応が検討されることが多く、相談した家族の意向も確認されます。一方で、暴力の程度によっては、ためらわずに警察の介入を求めるべき場面もあります。相談した記録が後でどう役立つかは、【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続をご覧ください。

親は「被害を受けた子の親」であり「暴力をふるう子の親」でもある

この問題の難しさは、親が両方の子の立場を同時に抱えている点にあります。上の子の将来を考えて相談をためらう気持ちは自然なものですが、その間も年下の子は同じ家で暮らし続けています。

 年下の子が未成年であれば、被害届を出すかどうか、示談に応じるかどうかといった判断には、法定代理人である親が関わることになります。ところが、その親は暴力をふるう側の子の親でもあるため、どちらの利益を優先するかという難しい立場に置かれます。迷ったときは、まず年下の子の安全を優先し、上の子への対応はその次に考えるという順序を、夫婦や家族の間で共有しておくことが大切です。夫婦で考えが分かれるときの整理は、【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときをご覧ください。

 あわせて、年下の子に「お兄ちゃんにも事情があるから」「外では言わないで」と伝えてしまうと、子どもが「親は守ってくれない」と感じ、被害を打ち明けなくなるおそれがあります。話を聞くときは、子どもの話を否定せず、話してくれたこと自体を受け止める姿勢が望まれます。

家庭の中で、まず取り組めること

相談先につながるまでの間にも、親ができることはあります。

  1. 上の子と年下の子が二人きりになる時間や場所を減らします。
  2. 年下の子が逃げ込める場所(鍵のかかる部屋、祖父母や親戚の家など)を決めておきます。
  3. 暴力があった日時、内容、けがの有無をメモに残し、けがは写真に撮っておきます。
  4. けががあるときは早めに受診し、必要に応じて診断書を取っておきます。
  5. 学校にも事情を伝え、年下の子の様子に変化がないか見守ってもらいます。


 記録や診断書は、後で警察や児童相談所に相談するときに、状況を具体的に伝える助けになります。詳しくは【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録と【親子問題】診断書はいつ取るべきか|傷害の立証で解説しています。

同じ家で暮らし続けるのが難しいとき

暴力が続き、家庭内の工夫だけでは年下の子の安全を保てない場合は、生活の場を分けることも選択肢になります。年下の子を一時的に祖父母の家に預ける、親が年下の子を連れて家を離れるといった方法のほか、年下の子が18歳未満であれば、児童相談所の判断で一時保護が行われることもあります。親が家を出るという選択については、【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択で取り上げています。

 一方、暴力をふるう子が成人している場合は、その子が家を出て自立することを目指す方法もあります。ただし、本人の同意がないまま鍵を替えて締め出すといった方法には法的な問題が生じることがあるため、手順を踏んで進めることが大切です。【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順や【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界もご参照ください。暴力をふるう子が未成年の場合は、親の監護の責任が続くため、生活の場を分けるときも児童相談所などと相談しながら進めることが望まれます。

弁護士に相談するとできること

当事務所では、家庭内暴力やひきこもりなど、親子の問題に悩む親御さんからのご相談をお受けしています。弁護士が親の代理人として暴力をふるう子との窓口を担い、必要に応じてご自宅を訪問して本人と話をします。あわせて、民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、子の生活の立て直しを支えています。暴力のおそれがある事案では、警察と連携を取りながら進めることもあります。

 きょうだい間の暴力では、年下の子の安全確保と、上の子の今後をどう支えるかを同時に考えなければなりません。親が一人で両方を担うのが難しいときに、窓口を分けるという考え方があります。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応で、具体的な介入の進め方は【親子問題】弁護士とカウンセラーはどう介入するのか|4つの事例で見るサービスの実際でご紹介しています。

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一人で抱え込まないために

きょうだい間の暴力は、外から見えにくく、親も「自分の育て方のせいでは」と抱え込みやすい問題です。年下の子の安全を守ることと、上の子が立ち直る道を探ることは、どちらか一方を選ぶものではありません。順序を整理し、適切な窓口に早めにつなぐことが、二人の子の双方にとっての出発点になります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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