【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録
本記事は、2026年9月時点の法令(令和4年4月施行の改正少年法、令和7年6月施行の拘禁刑への一本化を含む)に基づいて解説しています。
子どもが警察に呼ばれた、逮捕されたと連絡が来た。そのとき多くの親御さんが最初に戸惑うのは、「これから何が、どの順番で起きるのか」が分からないことです。20歳未満の子が罪を犯した疑いを持たれた場合、手続は成人の刑事事件とは異なる道筋をたどり、中心となるのは家庭裁判所です。
本記事では、捜査の段階から家庭裁判所への送致、調査、審判、処分までの流れを順に整理し、それぞれの場面で親が関わる余地がどこにあるのかを解説します。子から親への暴力が事件になった場合のように、親が被害者でもある場面についても触れます。
少年事件は成人の刑事事件と何が違うのか
少年法は、20歳に満たない者を「少年」とし、罰を与えることよりも、少年の健全な育成を目的に掲げています(少年法1条・2条1項)。家庭裁判所が扱う少年事件は、次の3つに分けられます。
| 区分 | 内容 | 入口 |
|---|---|---|
| 犯罪少年 | 罪を犯した14歳以上20歳未満の少年 | 警察・検察から家庭裁判所へ送致 |
| 触法少年 | 14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年 | 児童相談所の措置が優先され、送致があった場合に家庭裁判所へ |
| ぐ犯少年 | 18歳未満で、保護者の正当な監督に従わないなどの事情があり、将来罪を犯すおそれがある少年 | 家庭裁判所への送致・通告など |
成人の事件との大きな違いは、「全件送致主義」がとられている点です。成人であれば、検察官の判断で不起訴となり手続が終わることがありますが、少年の場合は、捜査の結果犯罪の嫌疑があれば、原則として全ての事件が家庭裁判所に送られます(少年法41条・42条)。被害者と示談が成立しても、それだけで手続が終わるわけではないという点は、あらかじめ知っておきたいところです。
家庭裁判所に送られるまで|捜査段階の流れ
逮捕された場合
逮捕された場合、警察での取調べを経て検察官に送られ、その後に身体拘束を続けるかどうかが判断されます。ここまでの時間の区切りは成人と同じですが、少年については、勾留は「やむを得ない場合」でなければ認められないとされています(少年法43条3項・48条1項)。勾留に代えて少年鑑別所に収容する「勾留に代わる観護措置」がとられることもあり、その期間は10日です(同法44条3項)。
逮捕直後は、家族であっても自由に面会できない時間帯があります。この段階で子と会い、手続の見通しや取調べへの向き合い方を伝えられるのは弁護士です。初動については家族が逮捕されたと連絡が来た|最初の24時間にやること、弁護士の面会については「接見」で弁護士は何をするのか|依頼から面会までの流れで詳しく解説しています。
逮捕されていない場合(在宅事件)
逮捕されずに、自宅から警察の呼出しに応じる形で捜査が進むこともあります。この場合も、捜査が終われば事件は家庭裁判所に送られます。送致までに数か月かかることもあり、その間は日常生活を続けながら、家庭裁判所からの呼出しを待つことになります。
家庭裁判所に送られた後の流れ
家庭裁判所に送られた後は、おおむね次の順序で手続が進みます。
- 事件の受理と、少年鑑別所に収容するかどうか(観護措置)の判断。
- 家庭裁判所調査官による、少年と保護者への調査。
- 審判を開くかどうかの判断。
- 必要に応じた試験観察。
- 少年審判と、処分の決定。
観護措置|少年鑑別所に入るかどうか
逮捕・勾留されていた少年が送致された場合、家庭裁判所は到着から24時間以内に、少年鑑別所に送るかどうかを判断します(少年法17条2項)。少年鑑別所では、面接や心理検査などを通じて少年の心身の状態が調べられます。収容期間は原則2週間で、更新されて4週間となることが一般的です。事実関係に争いがあり証人尋問などを行う一定の事件では、最長で8週間まで延びることがあります(同条3項・4項・9項)。
観護措置の決定に納得できない場合は、少年本人、親権者などの法定代理人、付添人が異議を申し立てることができます(少年法17条の2)。
家庭裁判所調査官の調査
家庭裁判所調査官は、心理学や社会学などの知見をもとに、非行に至った原因や、再び非行を繰り返さないために何が必要かを調べる職員です。少年だけでなく保護者も家庭裁判所に呼ばれ、事件の内容のほか、家庭での様子、学校や仕事、友人関係、生い立ちなどについて面接を受けます。
この調査は、処分の判断に大きく影響します。家庭の状況を取り繕うよりも、困っていることや親としてできること・できないことを率直に伝える方が、実情に合った判断につながりやすいと考えられます。
審判を開くかどうかの判断
調査の結果、事案が軽微で、調査の過程での指導によって十分と判断された場合には、審判を開かずに手続を終える「審判不開始」となることがあります(少年法19条1項)。ただし、この場合も、裁判官や調査官による訓戒・指導といった教育的な働きかけは行われています。
試験観察
すぐに最終的な処分を決めることが難しい場合には、数か月程度、家庭裁判所調査官が少年の生活を見守る「試験観察」がとられることがあります(少年法25条)。自宅で生活しながら行われるほか、民間の協力者や施設に少年を預ける「補導委託」が併用されることもあります。この期間の生活ぶりを踏まえて、最終的な処分が決められます。
少年審判の当日
少年審判は、家庭裁判所の審判廷で非公開で行われます(少年法22条2項)。出席するのは、裁判官、書記官、家庭裁判所調査官、少年本人、保護者が基本で、付添人がいる場合は付添人も出席します。審判期日には、少年とともに保護者も呼び出されます(少年審判規則25条2項)。
当日は、本人確認と、言いたくないことは言わなくてよいという告知から始まり、送致された事実に間違いがないかが確認されます。その後、非行に至った経緯や反省の程度、今後の生活について、裁判官が少年に質問します。保護者にも、家庭での監督の方法や今後の見通しについて質問がされるのが通常です。事実関係に争いのない事件では、その日のうちに処分が言い渡されることが多いとされています。
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、保護者に対して訓戒や指導を行うこともできます(少年法25条の2)。
審判で決まる処分の種類
審判の結果として言い渡される主な決定は、次のとおりです。このうち保護観察・児童自立支援施設等送致・少年院送致の3つが、少年法上の「保護処分」です(少年法24条1項)。
| 決定 | 内容 |
|---|---|
| 不処分 | 保護処分に付す必要がないと判断される場合。調査・審判での指導を受けて手続を終える |
| 保護観察 | 家庭などで生活しながら、保護観察官や保護司の指導・監督を受ける |
| 児童自立支援施設・児童養護施設送致 | 開放的な福祉施設で、職員とともに生活しながら指導を受ける |
| 少年院送致 | 少年院に収容され、矯正教育を受ける |
| 検察官送致(逆送) | 刑事処分が相当とされた場合。成人と同様の刑事裁判に移る |
| 知事・児童相談所長送致 | 児童福祉法上の措置が相当とされた場合 |
処分に不服がある場合は、決定の告知を受けた日から2週間以内に高等裁判所へ抗告することができます(少年法32条)。
18歳・19歳(特定少年)の場合
令和4年4月施行の改正少年法により、18歳・19歳は「特定少年」として、引き続き少年法の対象でありながら、17歳以下とは異なる扱いを受けます。保護処分は、6月の保護観察、2年の保護観察、少年院送致(収容期間は3年以下)の中から、犯した罪の責任を超えない範囲で選ばれます。原則として検察官送致とされる事件の範囲が広がり、ぐ犯を理由とする保護処分の対象からは外れました。また、起訴された場合には実名報道の禁止が解除されます。
特定少年は民法上の成年であり、親権は及びません。親が手続にどう関われるかは、同居や生活の支援の状況によって変わります。成人した子の問題に親がどこまで関われるかについては、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲もご参照ください。
手続の中で親が関わる場面
少年事件では、親は単なる付き添いではなく、処分の判断材料の一部として見られます。親が関わる主な場面は次のとおりです。
- 弁護士を付添人として選任すること(少年法10条1項。弁護士であれば家庭裁判所の許可は不要)。
- 少年鑑別所での面会や差し入れを通じて、子と向き合う時間をつくること。
- 家庭裁判所調査官の面接に応じ、家庭の実情を伝えること。
- 子が戻ってきた後の生活環境(家庭・学校・職場・交友関係)を整えること。
- 被害者がいる事件で、弁護士を通じて謝罪や被害弁償の準備を進めること。
- 審判に出席し、今後の監督について自分の言葉で述べること。
全件送致主義のもとでは、示談が成立しても家庭裁判所の手続は続きます。それでも、被害への向き合い方は、少年の反省の深まりや今後の見通しを判断する材料として考慮されます。
家庭内暴力が少年事件になった場合|親が被害者でもあるとき
子から親への暴力がきっかけで警察が介入し、少年事件として手続が進むことがあります。この場合、親は被害者であると同時に、少年法上の「保護者」として手続に関わる立場にもなります。家庭裁判所が見るのは、子をこのまま家庭に戻してよいかという点であり、親自身の受け入れの意思や、家庭で安全が確保できるかどうかも判断に影響します。
身の危険を感じている状態で、無理に「家で引き取ります」と伝える必要はありません。家庭でできることとできないことを調査官に率直に伝え、施設や補導委託などの選択肢も含めて検討してもらうことが、親子双方にとって現実的な道につながる場合があります。親子間の暴力がどう扱われるかは【親子問題】親子間の暴行・傷害は立件されるのか|特例が及ばない範囲、被害届を出すかどうか迷っている場合は【親子問題】被害届を出すと家族関係はどうなるのか|出す前に考えることもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
保護処分を受けると前科になりますか
保護処分は刑罰ではないため、前科にはあたりません。ただし、捜査を受けた記録は捜査機関に「前歴」として残ります。違いについては前科と前歴はどう違い、どこに残るのか|期間と照会される場面で解説しています。
学校や勤務先に知られることはありますか
地域によっては警察と学校の間に連絡の仕組みが設けられており、事件の内容によっては学校に連絡が入ることがあります。家庭裁判所の調査で学校に照会がされることもあります。詳しくは逮捕されたら会社・学校に連絡はいく?勾留と身分への影響をご参照ください。
弁護士費用を用意できない場合はどうなりますか
一定の重大な事件で少年鑑別所に収容された場合などには、家庭裁判所が弁護士の付添人を選任する国選付添人の制度があります(少年法22条の3)。対象とならない事件でも、日本弁護士連合会の援助制度を利用できる場合があります。
少年事件の手続は、捜査、観護措置、調査、審判と段階ごとに期間が区切られており、親が動ける時間は限られています。一方で、家庭裁判所は処分を決めるにあたって家庭の状況を丁寧に見るため、親が現状を整理し、できることを具体的に示すことには意味があります。家庭内の問題が背景にある場合は、事件の手続と並行して、事件後の親子の距離の取り方も考えておく必要があるでしょう。当事務所では、少年事件の弁護人・付添人としてのご依頼もお受けしており、事件後の親子の関係についてもあわせてご相談いただけます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


