【親子問題】子が近所の子どもにつきまとっている、親はどうすればいい?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

この記事は、2026年10月時点の法令(刑法、ストーカー行為等の規制等に関する法律、東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例、軽犯罪法、民法、少年法、児童福祉法)にもとづいて解説しています。2023年7月施行の性犯罪規定の改正(不同意わいせつ罪、16歳未満の者に対する面会要求等の罪の新設)と、2025年6月施行の拘禁刑の導入を反映しています。


「近所の方から、息子が小学生の下校の時間に後をついて歩いていると言われた」「本人は話しかけただけだと言うが、相手の親御さんがとても怒っている」。親子問題のご相談の中には、こうした近所の子どもとの関わりをめぐるものがあります。一方で、近所の側からは「親御さんに止めてほしいが、どこまで伝えてよいか分からない」という声も聞かれます。

 つきまといについての一般的な説明は、ストーカー規制法の仕組みや、子どもを守るための防犯対策が中心です。その説明自体は誤りではありませんが、つきまとっている側の家族、とくに親が何をすればよいのか、どこまでが親の役割なのかは見えにくいところです。

 この記事では、子(成人した子を中心に、未成年の場合にも触れます)が近所の子どもにつきまとっていると分かったとき、親として確かめること、取れる対応、避けたい対応を整理します。子が逮捕された後の手続や、近所トラブル全般の賠償については、それぞれ別の記事に譲ります。

近所の子どもへのつきまといが問題になる法的な枠組み

子どもへのつきまといは、どのような気持ちから、どの程度の行為をしているかによって、当てはまる法律が変わります。親としてまず押さえておきたいのは、「話しかけただけ」「見ていただけ」と本人が受け止めていても、繰り返されれば法的な問題になり得るという点です。

好意の感情がある場合はストーカー規制法の対象になり得る

ストーカー規制法は、特定の人への恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされないことへの恨みから、つきまとい・待ち伏せ・見張り・住居等への押しかけなどをすることを「つきまとい等」として規制しています(ストーカー規制法2条1項)。相手が子どもであっても、好意の感情から通学路で待つ、家の前をうろつくといった行為を繰り返せば対象になり得ます。

 対象になると、警察署長等からの警告や、都道府県公安委員会による禁止命令が出されることがあります(同法4条、5条)。禁止命令に違反した場合や、つきまとい等を反復してストーカー行為に至った場合には、刑事罰の対象になります。

好意とは言えない場合も、条例や軽犯罪法が関わる

東京都の迷惑防止条例は、特定の人へのねたみ・恨みその他の悪意の感情から、つきまといや待ち伏せをすることを禁止しています(東京都迷惑防止条例5条の2)。また、軽犯罪法は、不安や迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとう行為を処罰の対象としています(軽犯罪法1条28号)。

 さらに、自治体によっては、子どもへの不審な声かけやつきまといを独自に規制する条例を設けているところもあります。好意でも悪意でもなく「なんとなく気になって」という動機であっても、行為の態様によっては問題になる点に注意が必要です。

行為が進むと刑法の罪が問題になる

身体に触れる、わいせつな目的で会うことを求める、連れて行こうとするといった段階に進むと、刑法上の罪が問題になります。たとえば、16歳未満の子どもに対するわいせつな行為は、同意の有無にかかわらず不同意わいせつ罪となる場合があり(刑法176条3項)、わいせつの目的で16歳未満の子どもに会うことを求める行為も一定の場合に処罰されます(刑法182条)。つきまといの段階で止めることが、子ども本人にとっても、近所の子どもにとっても最も大切です。性犯罪の罪名と親の関わり方については、【親子問題】子が性犯罪の加害者側になった場合|改正後の罪名と、親が関われる範囲で詳しく解説しています。

近所の方や警察から知らされたとき、親が最初にすること

近所の方からの申入れや、警察からの連絡で事態を知った親は、驚きや動揺から、つい本人をかばったり、逆に強く責めたりしがちです。最初の対応が、その後の近所との関係や、本人の受け止め方を大きく左右します。

本人を責める前に、事実を時系列で確かめる

まずは、いつ、どこで、どの子どもに、どのような行為があったのかを、相手方から聞いた内容と本人の説明とに分けてメモにしておきます。本人の説明と相手方の話が食い違っていても、その場で「うちの子はそんなことはしない」と否定しないことが大切です。

 本人に聞くときは、責める口調を避け、「何があったのかを知りたい」という姿勢で話を聞きます。強く問い詰めると、本人が事実を隠したり、親との会話そのものを避けたりするようになり、行動を止める手がかりを失うことがあります。

相手の家庭への謝罪は「約束できること」に絞る

相手の家庭に謝罪をしたいと考えるのは自然なことです。ただ、その場の勢いで「二度と近づかせません」「警察には言わないでください」といった言葉を口にすると、守れなかったときにかえって信頼を損ねたり、口止めをしようとしていると受け止められたりするおそれがあります。

 謝罪の場では、事実を受け止めていること、親としてできる範囲の対応を取ることを伝えるにとどめるのが無難です。相手方が警察への相談や被害届を考えている場合、その判断に口を出すことは避けます。直接の話し合いが難しいと感じたら、早い段階で弁護士を窓口にすることも検討してください。

記録や映像を消させない

近所の防犯カメラの映像や、本人のスマートフォンに残った写真・メッセージなどについて、本人に消すよう促したり、親が消したりすることは避けてください。後になって、不利な証拠を隠そうとしたと受け止められ、捜査や相手方との交渉で本人にとってかえって不利に働くことがあります。

 また、本人のスマートフォンに近所の子どもを撮影した画像などが残っていると分かった場合には、扱いを自己判断で決めず、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

子の行動を止めるために、親ができること・できないこと

親として「何としても止めなければ」と考えるのは当然ですが、成人した子に対して親が持っている法的な権限には限りがあります。できることとできないことを分けて考えることで、無理のない対策を組み立てやすくなります。

成人した子への親の権限には限りがある

成人した子に対しては、親権はすでに及んでいません。親が子の外出を禁止したり、行き先を強制的に決めたりする法的な根拠はなく、親にできるのは、話し合いや環境の調整を通じて働きかけることが中心になります。親が介入できる範囲については、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲で整理しています。

閉じ込める・見張るといった対応は避ける

心配のあまり、部屋に外から鍵をかける、外出のたびに後をつける、スマートフォンを取り上げるといった対応を取りたくなることがあります。しかし、成人した子を部屋に閉じ込めれば、親が監禁の罪に問われるおそれがあります(刑法220条)。また、強い監視は本人の反発を招き、親子の対話を難しくすることも少なくありません。本人の行動を力で抑えるのではなく、接点そのものが生じにくい生活に組み替えるという発想が現実的です。鍵や締め出しの扱いについては、【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界もあわせてご覧ください。

生活の組み立てを変えて接点を減らす

たとえば、近所の子どもの登下校の時間帯に本人が家の周りにいることが多いのであれば、その時間帯に仕事や通所先、日中の活動の予定が入るよう生活を組み立て直すことが考えられます。日中にすることがない状態が続いていることが背景にある場合もあるため、就労支援や居場所づくりの支援につなぐことも一つの方法です。

 事情によっては、本人が実家を出て別の地域で暮らすことが、本人にとっても近所にとっても落ち着いた状態をつくる選択肢になる場合もあります。距離を取ることの意味については、【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点で解説しています。

背景にある事情を見極め、専門の支援につなぐ

近所の子どもへのつきまといの背景には、さまざまな事情があり得ます。行動そのものを止めることと並行して、その背景に目を向けることが、繰り返しを防ぐうえで欠かせません。

孤立や発達特性、精神症状が関わっている場合

長い間社会との接点が少なく、話し相手が近所の子どもしかいない、相手が嫌がっていることに気づきにくい、といった事情が背景にあることがあります。また、精神的な不調が影響している場合もあります。こうした場合は、精神保健福祉センターや保健所、医療機関に相談し、本人に合った支援を探ることが大切です。医療につなぐかどうかの判断については、【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断を参考にしてください。

性的な関心が疑われる場合の相談先

子どもへの性的な関心がうかがわれる場合には、性の問題行動を専門に扱う医療機関や、再発防止のプログラムを実施している相談機関があります。家族だけで抱え込まず、早い段階で専門家の意見を聞くことが、本人が行動を変えるきっかけになることがあります。

 本人が相談に行くことを拒むときでも、家族が先に相談機関を訪ねることはできます。家族だけで動ける範囲については、【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲で解説しています。

子が未成年の場合は児童相談所や家庭裁判所の手続も

子が14歳未満の場合、刑事責任は問われませんが、警察から児童相談所に通告されることがあります(児童福祉法25条)。14歳以上20歳未満の場合は、少年事件として家庭裁判所の手続の対象になり、罪を犯すおそれがあると判断された場合にも審判に付されることがあります(少年法3条1項)。未成年の子については親の関わりが手続上も重視されるため、早めに相談することが大切です。手続の流れは【親子問題】少年事件の流れ|家庭裁判所送致から審判までをご覧ください。

親の賠償責任と、相手方との交渉

相手の家庭から、精神的な苦痛に対する慰謝料や、転居・送迎にかかった費用などを求められることがあります。親自身が責任を負うのかどうかは、子の年齢や状況によって異なります。

成人した子の行為について親が責任を負う場面

成人した子が自分の行為で他人に損害を与えた場合、賠償の責任を負うのは原則として子本人です(民法709条)。親であるという理由だけで、親が支払う義務を負うわけではありません。ただし、子に責任能力がない場合や、親自身の行動に問題があった場合には、親の責任が問われる余地があります。成人した子の近所トラブルと親の責任については、【親子問題】子が近所の人とトラブルを起こした|成人した子の賠償と親の責任で詳しく解説しています。

未成年の子の場合の監督義務

未成年の子に責任能力がない場合(おおむね12歳前後までとされることが多いです)は、親が監督義務者として責任を負うのが原則です(民法714条1項)。責任能力がある年齢の子であっても、親が監督を怠ったことと損害との間に関係が認められれば、親自身の不法行為として責任を問われることがあります。

弁護士を窓口にする意味

相手の家庭とのやり取りを親が直接続けると、感情的な対立が深まったり、言った・言わないの争いになったりしがちです。弁護士が窓口となることで、謝罪や再発防止の約束、金銭の支払いの有無などを、書面で整理しながら進めることができます。子が警察の捜査を受けている場合には、示談の成否が処分にも影響し得るため、相手方との交渉は慎重に進める必要があります。逮捕された場合の初動については、【親子問題】子が逮捕された|親が最初にすべきことをご覧ください。

よくあるご質問


本人は「話しかけただけ」と言っています。それでも問題になりますか?

一度声をかけただけで直ちに法律違反になるとは限りません。ただ、相手の子どもや保護者が不安を感じていると伝えてきた後も同じ行動を続けると、ストーカー規制法や迷惑防止条例、軽犯罪法などの対象になる可能性が高まります。本人の意図よりも、相手がどう受け止めているか、行為が繰り返されているかが重視されると考えておくのがよいでしょう。

相手の家庭に、親だけで謝りに行ってもよいですか?

親が謝罪の気持ちを伝えること自体は差し支えありません。ただし、相手方が強い不安や怒りを抱いている場合には、訪問そのものが負担になることもあります。まずは手紙などで意向を確かめる、弁護士を通じて謝罪の機会を設けるといった方法も検討してください。被害届を出さないよう頼むことは避けましょう。

家族で引っ越せば解決しますか?

転居によって近所の子どもとの接点はなくなりますが、本人の行動の背景にある事情が変わらなければ、転居先で同じことが起きるおそれがあります。転居を考える場合も、医療や支援機関への相談、生活の組み立ての見直しを並行して進めることが大切です。また、すでに警察の捜査が始まっている場合には、転居の時期について弁護士に相談してから決めることをおすすめします。

まとめ


  1. 好意の感情からのつきまといは、相手が子どもであってもストーカー規制法の対象になり得る(ストーカー規制法2条1項、4条、5条)。
  2. 悪意の感情からのつきまといは東京都迷惑防止条例で、それ以外のつきまといも軽犯罪法で問題になり得る(東京都迷惑防止条例5条の2、軽犯罪法1条28号)。
  3. 身体に触れる、わいせつ目的で会うことを求めるといった段階に進むと、刑法上の罪が問題になる(刑法176条、182条)。
  4. 知らされたときは、本人を責める前に事実を時系列で整理し、記録や映像を消させないようにする。
  5. 成人した子を閉じ込めるなどの対応は避け、生活の組み立てを変えて接点を減らす(刑法220条)。
  6. 子が未成年の場合は、児童相談所や家庭裁判所の手続の対象になることがある(児童福祉法25条、少年法3条1項)。
  7. 成人した子の行為の賠償責任は原則として子本人が負い、未成年で責任能力がない場合は親が監督義務者として責任を負う(民法709条、714条1項)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。弁護士が親御さんの代理人として相手方とのやり取りや警察との連携を担い、自立支援カウンセラーとチームを組んで、子の生活の立て直しまで継続して支援します。遠方にお住まいの方からのご相談にも対応しています。
「近所の方から子のことで申入れを受けた」「警察から連絡が来て、どう動けばよいか分からない」といった段階でも、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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