【風俗トラブル】不同意性交等罪と言われた|風俗の場面で罪名が出たときの整理

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月時点の刑法(令和5年7月13日施行の改正後の176条・177条、令和7年6月1日施行の拘禁刑への一本化を反映)、刑事訴訟法250条(令和5年改正後の公訴時効)、売春防止法、弁護士法72条にもとづいて整理しています。個別の事案での成否や処分の見通しは、事実関係によって変わります。


「プレイの途中でキャストが泣き出し、駆けつけた店員から『これは不同意性交等罪だ』と言われた。挿入したかどうかも自分でははっきりしない」。風俗トラブルのご相談では、このように罪名だけが先に突きつけられ、何が起きているのか整理できないまま連絡をくださる方が少なくありません。ご本人だけでなく、「夫が店から罪名を告げられて動揺している。もう逮捕されるのか」というご家族からのご相談もあります。

 不同意性交等罪の成立要件や法定刑、示談金の相場については、すでに多くの解説があり、その内容自体が誤っているわけではありません。ただ、罪名を「言われた」その瞬間に、誰が、どの段階で、どの行為を指してその言葉を使っているのかを分けて考える視点は、成立要件の解説だけでは見えにくいところがあります。

 この記事では、風俗の場面で不同意性交等罪という罪名が持ち出されたときに、その言葉をどう受け止め、何を確かめ、何を避けるべきかの整理に絞って解説します。成立要件の詳細、取調べへの対応、示談書の条項などは、それぞれの記事で詳しく扱っていますので、本文中でご案内します。

「不同意性交等罪だ」という言葉は、まだ一つの評価にすぎない

罪名は誰かの判断であって、確定した事実ではない

 風俗の場で告げられる罪名は、その時点ではキャストや店の「こう評価している」という主張です。ある行為がどの罪にあたるのかを最終的に判断するのは、捜査を経た検察官と、起訴された場合の裁判所です。

 もちろん、主張にすぎないからといって軽く扱ってよいわけではありません。キャストが実際に同意していなかったのであれば重大な問題ですし、後に被害申告がされる可能性もあります。大切なのは、罪名を聞いた瞬間に「もう犯罪者になった」と受け止めるのでも、「言いがかりだ」と切り捨てるのでもなく、事実の確認と手続の段階を切り分けて考えることです。

誰が言ったのかで、その言葉の重みは変わる

 同じ「不同意性交等罪」という言葉でも、誰が口にしたかによって、その時点で起きていることは大きく異なります。

言った人その時点で起きていることまず確かめたいこと
キャスト本人本人が被害を感じている、または感じていると主張している段階何をされたと言っているのか、警察への申告を考えているのか
店の店員・責任者店が窓口となって金銭の話につなげようとしている段階が多いキャスト本人の意向なのか、店の判断なのか
警察官被害申告を受けて、捜査として事情を聴いている段階参考人としての聴取か、被疑者としての扱いか


 店員が罪名を持ち出す場面では、多くの場合、その後に示談金や「罰金」の話が続きます。一方、警察官が罪名を告げている場合は、すでに刑事手続が動いていることになります。言葉は同じでも、取るべき対応はまったく異なります。

その場なのか、後日の連絡なのか

 罪名が出てくる時点にも違いがあります。利用直後の部屋や店の事務所で告げられる場合、数日たってから電話やメッセージで告げられる場合、数か月から数年たってから連絡が来る場合などです。その場で告げられた場合は、冷静に判断しにくい状況で書面への署名や支払いを求められやすい点に注意が必要です。時間がたってからの連絡については、後の章で公訴時効との関係を含めて触れます。

罪名が指している行為を、事実の側から確かめる

「性交等」の範囲と、不同意わいせつ罪との線引き

 不同意性交等罪(刑法177条1項)は、一定の行為や事由によって、相手が同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態で「性交等」をした場合に成立し、法定刑は5年以上の有期拘禁刑です。ここでいう「性交等」には、性交だけでなく、肛門性交、口腔性交、膣や肛門に身体の一部(陰茎を除く)や物を挿入する行為であってわいせつなものが含まれます。

 そのため、「陰茎の挿入はしていないから不同意性交等罪の話ではない」とは言い切れない場面があります。反対に、挿入にあたる行為がなく、身体への接触にとどまる場合には、不同意わいせつ罪(同法176条1項、6月以上10年以下の拘禁刑)として評価されるかどうかが問題になります。途中でやめた場合には、未遂(同法180条)の問題として扱われることもあります。罪名の線引きの詳細は、挿入がなくても罪になる場面|不同意わいせつ罪との線引きで解説しています。

「同意」と「同意していると思っていた」は別の問題

 料金を支払ってサービスを受けていることと、個別の性交等に同意していることは別のものとして考えられています。料金を払ったから、店のサービスの流れだったから、という理由だけで同意があったことにはなりません。

 他方で、犯罪が成立するには故意が必要です(刑法38条1項)。相手が同意していないこと、またはその可能性があることを認識しないまま行為に及んだ場合には、故意が否定される余地があります。ただし、密室での出来事について「同意があると思っていた」という主張が認められるかどうかは、行為前後のやり取りや状況から判断されるため、ご本人の記憶だけで結論を出すのは難しいところです。不同意の状態とされる類型の読み方はどの類型で立件されているのか|不同意性交等罪の8つの要因の読み方、争点になりやすい事情は「同意があったと思っていた」|不同意性交等罪で争点になる事情で詳しく扱っています。

本番そのものの違法性と、罪名を混同しない

 「本番をしたのだから犯罪だ」という言い方がされることがありますが、ここには二つの問題が混ざっています。売春防止法は売春やその相手方となることを禁じていますが、対価を払って性交をした客そのものを処罰する規定は置いていません。店の禁止事項に反したことは、店との間の民事上の問題として扱われるのが基本です。

 これに対して、不同意性交等罪は、相手の同意がない状態での性交等を処罰するものです。本番があったかどうかと、同意がなかったかどうかは別の問いであり、罪名が持ち出されたときには、後者の事実関係が問われていることを意識しておく必要があります。客の位置づけについては対価を払って本番に至った場合|売春防止法上、客はどう位置づけられるかもあわせてご覧ください。

罪名が交渉の場で持ち出される理由

法定刑の重さが、金額の根拠として使われる

 不同意性交等罪の法定刑には罰金刑がなく、起訴されれば正式な裁判となります。この重さが、交渉の場で「警察に行けば大ごとになる」「だからこの金額で」という形で、請求額の根拠として使われることがあります。

 罪名や法定刑を告げること自体は、それだけで直ちに違法になるものではありません。被害を受けたと考える側が、刑事手続を利用する可能性に触れるのは正当な権利の告知でもありえます。ただし、金額や支払方法との結びつけ方によっては、恐喝(刑法249条)の問題が生じる場合もあります。その線引きは店の請求が恐喝に変わる線引き|正当な権利行使との境界で解説しています。

非親告罪であることの意味

 かつての強姦罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪でしたが、平成29年の刑法改正で非親告罪となり、現在の不同意性交等罪も告訴がなくても起訴できる罪です。

 この点は、交渉の場で語られる二つの言い方の前提に関わります。一つは「告訴しないでおくから払え」という言い方で、告訴の有無だけで刑事手続が止まる仕組みではありません。もう一つは「店で示談すれば刑事事件にはならない」という言い方で、店の約束には捜査機関を拘束する力はありません。もっとも、実務上はキャスト本人の被害申告の有無や、示談の中で示された処罰を求めない意思(宥恕)が、捜査や処分の判断に大きく影響します。示談が持つ意味は、宥恕文言の意味|「許す」と書かれると刑事処分はどう変わるかと被害届が出る場合と出ない場合|キャスト・店の判断で何が変わるかで整理しています。

時間がたってから罪名が出てくる場合

 令和5年の刑事訴訟法改正により、性犯罪の公訴時効は延長され、不同意性交等罪は15年、不同意わいせつ罪は12年、これらの罪で相手にけがを負わせた場合(致傷)は20年となっています(刑事訴訟法250条3項)。

 そのため、数年前の利用について連絡が来た場合でも、時効を理由にただちに問題が終わったとはいえない場面があります。他方で、時間がたつほど当時の客観的な記録は残りにくくなり、相手方の主張の裏付けも難しくなります。期間の全体像は風俗トラブルの時効早見表|公訴時効と民事の消滅時効はいつ終わるのかをご覧ください。

罪名を告げられた直後に避けたいこと

罪名を前提にした発言や書面

 動揺した状態で「すみません、入ってしまったかもしれません」と口にしたり、店が用意した「不同意性交をしたことを認めます」といった文言の入った誓約書に署名したりすると、その発言や書面が後の交渉や捜査で事実を認めた資料として扱われるおそれがあります。

 謝罪の気持ちを伝えることと、罪名にあたる事実を認めることは別のものです。事実関係が整理できていない段階では、行為の評価に踏み込んだ発言や署名は控え、持ち帰って確認したいと伝えるにとどめるのが無難です。すでに認める発言をしてしまった場合については本番を認める発言をしてしまった後にできること|自認の撤回と限界、誓約書の読み方は店が示す誓約書の条項別チェック|どこが効き、どこが効かないかで解説しています。

身分証の提示やその場での支払い

 罪名を告げられた後、身分証の撮影や勤務先の申告、その場でのATMでの支払いを求められることがあります。これらに応じると、後から交渉の主導権を取り戻すのが難しくなることがあります。応じる義務の有無については身分証の提示・撮影を求められた場合|応じる義務と拒否の帰結をご覧ください。

店員が「代わりに話をつける」と言うとき

 弁護士でない者が、報酬を得る目的で他人の法律事件について示談交渉などを業として行うことは、弁護士法72条で禁じられています。店員がキャストに代わって示談の条件を決め、金銭を受け取る形には、この点で問題が指摘されることがあり、店の関係者が同条違反の疑いで検挙されたとの報道例もあります。相手が誰の立場で話しているのかを確かめることは、示談の効力を考えるうえでも重要です。詳しくは店がキャストに代わって示談交渉をしてよいのか|非弁行為という視点で扱っています。

 罪名を告げられた場面では、次のような情報をできるだけ早く書き留めておくと、後の整理に役立ちます。

  • 利用した日時、店名、利用場所(店舗かホテルか自宅か)。
  • キャストの源氏名、対応した店員の名前や役職。
  • 罪名を告げられた時刻と、誰がどのような言葉で告げたか。
  • 求められた金額、支払った金額、渡した書類や身分証の情報。
  • 署名した書面や受け取った書面の写し、やり取りの画面の保存。


 記録の作り方は【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料で詳しく紹介しています。

罪名が出た後の分かれ道|民事の請求と刑事手続を分けて見る

金銭の請求として進んでいる場合

 店やキャストから罪名とともに金銭を求められている段階では、刑事手続はまだ動いていないことも少なくありません。この段階では、請求額が事実関係に見合っているか、誰と合意すれば問題が終わるのか、合意書に何を書くべきかといった点が中心になります。金額の考え方は風俗トラブルの示談金相場は?本番・盗撮・お触り別に弁護士が解説で整理しています。

警察から連絡が来た場合

 警察から連絡があった場合は、刑事手続の中で事情を聴かれる段階に入っています。参考人として呼ばれているのか、被疑者として扱われているのかによって、心構えも変わります。【風俗トラブル】参考人として呼ばれた|客が被疑者に切り替わる分岐点や「認める調書」を作られないために|風俗トラブルの取調べ対応の注意点もあわせてご覧ください。

事実を争う場合と、示談を検討する場合

 同意があった、または挿入にあたる行為はなかったと考える場合でも、争うことと示談を検討することは必ずしも二者択一ではありません。当事務所でも、不同意性交等罪を否認しつつ請求額の減額と不起訴を得た事例があります(【解決事例】デリヘル(自宅利用)での本番トラブル|不同意性交等罪を否認し300万円請求を40万円に減額、不起訴も獲得した事例)。反対に、身に覚えのない主張に対して事実関係を正面から争う場面については、やっていないのに本番・わいせつを疑われた|冤罪事件の戦い方で解説しています。どちらの方針をとるかは、残っている記録や相手方の主張の具体性によって変わります。

よくあるご質問

店から「警察には言わないので、示談で済ませよう」と言われました。示談すれば刑事事件にはならないのですか。

 不同意性交等罪は非親告罪であり、店の約束によって捜査機関の判断が拘束されるわけではありません。ただ、キャスト本人との間で、処罰を求めない意思を含む示談が成立していれば、被害申告や処分の判断に大きく影響します。誰と合意しているのか、キャスト本人の意思が書面に反映されているのかを確かめることが重要です。

挿入はしていないのに、不同意性交等罪だと言われました。

 不同意性交等罪の「性交等」には、口腔性交や、指などの身体の一部を挿入する行為も含まれるため、陰茎の挿入がないことだけで判断できない場合があります。一方、そうした行為にあたらない接触であれば、不同意わいせつ罪として評価されるかどうかが問題になります。告げられた罪名が、どの行為を指しているのかをまず確認することが出発点になります。

何年も前の利用について、今になって罪名を告げられました。

 不同意性交等罪の公訴時効は15年とされているため、時間がたっていることだけで問題が終わったとはいえない場合があります。他方で、連絡してきた相手が本当にキャスト本人やその代理人なのか、当時の事実をどの程度具体的に示しているのかは、慎重に確かめる必要があります。その場で支払いや署名に応じず、記録を残したうえでご相談ください。

まとめ


  1. 風俗の場で告げられる罪名は、その時点ではキャストや店の評価であり、成否を最終的に判断するのは検察官と裁判所です。
  2. 不同意性交等罪(刑法177条1項)の「性交等」には、口腔性交や身体の一部の挿入も含まれ、挿入にあたらない接触は不同意わいせつ罪(同法176条1項)の問題になります。
  3. 料金を払ったことと個別の同意は別であり、他方で犯罪の成立には故意が必要です(刑法38条1項)。
  4. 売春防止法は客を処罰する規定を置いておらず、本番の有無と同意の有無は別の問いです。
  5. 不同意性交等罪は非親告罪であり、店の「警察には言わない」という約束に捜査を止める力はありませんが、キャスト本人の宥恕は処分の判断に影響します。
  6. 公訴時効は不同意性交等罪15年、不同意わいせつ罪12年、致傷20年です(刑事訴訟法250条3項)。
  7. 罪名を告げられた直後は、認める発言や署名、身分証の提示、その場での支払いを控え、記録を残すことが大切です(店員による示談交渉には弁護士法72条の問題もあります)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。罪名を告げられて何が起きているのか分からない段階でも、言われた言葉や求められた内容を一緒に整理することから始められます。

店や相手方から金銭を求められている方、警察から連絡があった方、ご家族の対応に悩まれている方は、署名や支払いに応じる前にご相談ください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【風俗トラブル】不同意性交等罪と言われた|風俗の場面で罪名が出たときの整理

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼