風俗嬢に貸したお金が返ってこない|個人間の債権回収の進め方

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 親しくなった風俗嬢に「お金を貸してほしい」と頼まれて渡したものの、いつまでも返ってこない、あるいは連絡が取れなくなってしまった——。「借用書もないし、源氏名しか知らない。そもそも風俗で知り合ったことを人に知られたくない」と、回収を諦めかけていませんか。

 結論から言えば、借用書がなくても、それが「貸したお金」だと証明できれば、回収できる可能性があります。ただし、この種のケースには特有の難しさもあります。

 この記事では、風俗嬢に貸したお金を取り戻すための考え方と、個人間の債権回収の進め方を整理します。

大前提:借用書がなくても、貸金なら請求できる

 お金の貸し借りは、法律上「金銭消費貸借契約」と呼ばれ、借用書がなくても、実際にお金を渡した時点で成立します(民法587条)。借用書は、あくまで証拠のひとつにすぎません。

 ただし、実際に返してもらうには、次の2つを証明できる必要があります。

  • お金を渡したという事実
  • 返してもらう約束(返還の合意)があったという事実

 相手は「借りたのではなく、もらったものだ」「そんな約束はしていない」などと反論してくることがあります。だからこそ、この2点を裏づける証拠が重要になります。

この種のケース特有の、2つの難しさ

「貸した」のか「貢いだ(贈与)」のか

 風俗嬢との金銭のやり取りで最も問題になりやすいのが、この点です。好意や恋愛感情から渡したお金は、後になって「プレゼントとしてもらった(贈与)」と主張されやすく、「返す約束があった」ことを示せるかどうかが、回収の成否を大きく分けます。

 裏を返せば、もし本当に見返りを求めない贈与として渡したものであれば、原則として返還を求めることはできません。まずは、そのお金が「返してもらう前提の貸金」だったといえるかを、冷静に整理することが出発点です。

相手が源氏名しか分からない・音信不通

 もう一つの難しさが、相手の特定です。本名や住所を知らず、源氏名と連絡先しか分からない、というケースは少なくありません。連絡先をブロックされ、音信不通になってしまうこともあります。

 もっとも、こうした場合でも諦める必要はありません。振込先口座の名義や、勤務していた店の情報、弁護士会を通じた照会などから、相手を特定できる場合があります。

まずは証拠を整理・保全する

 回収の第一歩は、証拠を集めて保全することです。借用書がなくても、次のようなものが有力な証拠になります。

  • LINE・メールのやり取り:「貸してほしい」「必ず返す」といった依頼や約束、とりわけ「返すから待ってほしい」など、相手が借りたことや返す意思を認めているやり取り(債務承認)は、強力な証拠になります。スクリーンショットに加え、トーク履歴のバックアップも取っておきましょう。ブロックされてもデータは残ります。
  • 振込明細・ATMの記録:振込先と金額が客観的に残ります。現金で手渡した場合も、その直前のATM引き出し履歴などが間接的な証拠になり得ます。
  • 会話の録音、受領書、事情を知る第三者の証言。

 なお、まだ相手と連絡が取れるのであれば、今からでも「〇月に貸した〇万円、いつ返してもらえますか」と尋ね、「わかった」「もう少し待って」といった返信をもらうだけでも、借金を認めた証拠(債務承認)として機能します。

時効に注意する

 貸金を返してもらう権利にも、時効があります。現在の民法では、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年で、時効によって消滅するとされています(民法166条)。

 放置していると、相手から「時効だ」と主張されて回収できなくなるおそれがあります。内容証明郵便で請求(催告)すれば、6か月間は時効の完成が猶予され、その間に訴訟などを起こせば時効を止める(更新する)ことができます。

回収の進め方(段階)

 一般的には、次のような段階で進めていきます。

  1. 証拠の整理と、相手の特定。
  2. 本人への請求。とくに内容証明郵便による催告は、請求したことを客観的に記録でき、相手へのプレッシャーにも、時効の完成猶予にもなります。
  3. 応じない場合の法的手続き。話し合いによる民事調停、書面審査で進む支払督促、請求額が60万円以下なら原則1回で判決が出る少額訴訟、そして通常訴訟、という選択肢があります。金額や相手の状況によって適した手続きが異なります。
  4. 勝訴しても任意に支払われない場合の強制執行(預金や給与の差押えなど)。これには相手の勤務先や口座といった財産の特定が必要で、財産開示手続や、第三者から情報を取得する手続を利用することもあります。

やってはいけないこと

 取り戻したい気持ちが強いあまり、自力で強引に取り立てようとするのは禁物です。

 勤務先の店に乗り込む、店に繰り返し連絡する、自宅や店の前で待ち伏せする、執拗に連絡する、「返さないなら周囲にバラす」などと迫る——こうした行為は、威力業務妨害罪・脅迫罪・恐喝罪・名誉毀損・ストーカー規制法違反などにあたるおそれがあり、かえって自分が加害者として責任を問われかねません。

 また、単に「返してくれない」というだけでは、警察は基本的に動きません(民事不介入)。最初から返す意思がないのにだまして借りた、という事情を証明できれば詐欺の問題になり得ますが、相手の内心の立証は容易ではありません。

弁護士に依頼するメリット

 こうしたケースでは、弁護士に依頼することで、相手の特定(弁護士会照会など)から、内容証明の作成、交渉、訴訟、強制執行までを一貫して任せられます。相手が「もらったものだ(贈与だ)」と反論してきても、やり取りの記録などから返還の合意を立証していきます。

 そして、風俗で知り合ったという経緯や相手との関係を、家族や職場に知られることなく進められる点も、弁護士に任せる大きな利点です。あわせて、相手に返済できる資力があるか、費用倒れにならないか、といった見通しについても相談できます。

 なお、当事務所でも、借用書がないケースで、やり取りの記録などから貸金であることを立証し、回収に至った事案を扱っています。

まとめ

  • 借用書がなくても、金銭消費貸借契約は成立する。「渡した事実」と「返す約束」を証明できれば回収の可能性がある。
  • 風俗嬢へのケースでは、「貸した」のか「貢いだ(贈与)」のかが最大の争点になりやすい。相手が源氏名しか分からなくても、特定できる場合がある。
  • LINE・振込記録などの証拠を保全し、まだ連絡が取れるなら債務承認のやり取りを残す。時効にも注意。
  • 内容証明での請求から、調停・支払督促・少額訴訟・通常訴訟、強制執行へと段階的に進める。
  • 店に乗り込む・執拗に迫るといった自力の取り立ては、逆に自分が罪に問われかねない。一人で抱え込まず、早めに弁護士へ相談を。

 若井綜合法律事務所は、風俗にまつわる金銭トラブルを含む男女間のトラブルを、お客様側の立場で、家族や職場に知られることなく解決することを大切にしている法律事務所です。まずはお気軽にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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