【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

風俗店やメンズエステの利用をめぐって金銭を請求されている方から、「何を記録に残しておけばよいのか」というご質問をいただくことがあります。手元には契約書も領収書もなく、相手の本名も分からない。それでも相手方からは、細かい事実を前提にした話が次々と出てくる。そういう状況です。

 このとき見落とされやすいのが、この種のトラブルでは記録の多くが相手側にしか残らないという点です。入退室の時刻も、料金の内訳も、その場で署名した書面の原本も、たいていは店の側にあります。こちら側に残せるものは、自分で書き起こすほかありません。

 この記事では、相談の前に自分側の記録をどう作っておくかを、書き方の様式ではなく書く中身の面から整理します。記録を作れば結果が変わるという話ではありません。ただ、後から相手の言い分が出てきたときに、それと突き合わせられる材料が手元にあるかどうかで、こちらの説明の通りやすさは変わってきます。

この記事で扱うことと、扱わないこと


  • 扱うこと=自分の記憶から書き起こす記録に、何を、どの程度の細かさで、どう区別して書くか。
  • 扱わないこと①=相談に持って行く物の集め方や、家族に知られない保管の仕方(別の記事で扱っています)。
  • 扱わないこと②=A4一枚の時系列メモという様式や、列の作り方(別の記事で扱っています)。
  • 扱わないこと③=手元にある記録が証拠としてどこまで通用するかの評価(こちらで行います)。
  • 扱わないこと④=請求された金額が妥当かどうか、支払いに応じるかどうかの判断(別の記事で扱っています)。


記録が相手側に偏っているという前提

 最初に、何が手元にないのかを見ておきます。風俗トラブルでは、次のような記録がこちら側に残らないまま話が進むことがあります。

記録の種類主にどちら側にあるかこちらから確かめにくい理由
入退室の時刻と滞在時間店やホテル利用した側に控えが渡されないことが多いため
料金の内訳と支払の記録明細に店名と異なる名称が載ることがあるため
その場で署名した書面相手方原本を持ち帰られ、控えを受け取っていないことがあるため
やり取りをした相手が誰か相手方源氏名しか知らされていないことが多いため


 この偏りがあるために、こちらの説明は「記憶だけを頼りにした話」として扱われやすくなります。自分側の記録は、この偏りを埋めきるものではありません。それでも、こちらの言い分が最初から輪郭のないままにならないようにする土台にはなります。

こちら側にだけ残っているものもある

 一方で、相手方の手元にはなく、こちらにしかない記録もあります。自分が送ったメッセージや通話の履歴、支払に使った決済の記録、その日の移動の履歴などです。相手方は、こちらの氏名や連絡先を把握していても、こちらがその日どのように動いたのかまでは知りません。

 これらは日が経つと確かめにくくなります。書き起こす作業と並行して、いま手元で確かめられるものは早めに見ておくほうがよい、という程度に考えておいてください。

「証拠を作る」ためではなく「突き合わせるため」に作る


相手の言い分は、あとから細かい形で出てくる

 交渉が進むと、相手方からは日時や金額を伴った具体的な主張が示されることがあります。そのときに、こちらが何も書き留めていないと、示された内容が自分の記憶と合っているのかどうかを、その場で判断できません。合っていない部分があっても、指摘できないまま話が進んでしまいます。

 自分側の記録は、この段階で初めて役に立ちます。裏づけのある証拠を作ることが目的なのではなく、相手の主張を一つずつ照らし合わせるための下敷きを用意しておく、という位置づけです。

食い違ったときに、理由を説明できるかどうか

 記憶と相手方の主張が食い違うこと自体は珍しくありません。分かれ目になるのは、食い違いに気づけるかどうかと、なぜ違うのかを説明できるかどうかです。「そこは覚えていない」「その時刻には別の場所にいた」というように、違いの中身を切り分けて示せる形になっていれば、話は前に進みやすくなります。

 逆に、こちらの説明が「そんなことはしていないと思う」という一言にとどまると、どの部分を争っているのかが相手方にも伝わりません。争う場所と、争わない場所を分けて示せることが、記録を作っておく実際の効き目です。

突き合わせる相手は、店だけとは限らない

 警察から連絡があった場合、聴取の内容は書面にまとめられます。その書面は読み聞かせや閲覧を受けたうえで内容の増減変更を申し立てることができ、署名押印を求められても拒むことができるとされています(刑事訴訟法198条4項・5項)。手元に自分側の記録があると、書面の記載と自分の記憶とのずれに、その場で気づきやすくなります。

書き起こすときに落ちやすい5つ

 あとから読み返したときに足りないと感じられやすいのは、次の項目です。

  1. 時刻。入店・退店・移動・電話の着信など、区切りになる時点をできる範囲で書きます。分単位でなくてもかまいません。
  2. 場所。店舗名のほか、ホテル名、部屋番号、待ち合わせた地点まで書き分けます。
  3. お金の内訳。総額だけでなく、基本料金・指名・オプション・延長・交通費といった名目ごとに分けます。支払方法と、誰に渡したのかも書きます。
  4. 誰が言ったのか。キャストなのか、電話口の男性なのか、あとから合流した人なのか。人数と立場を分けて書きます。
  5. 言われた言葉そのもの。要約せず、覚えている範囲で言い回しのまま書き留めます。


 このうち特に効いてくるのが、お金の内訳と、誰が言ったのかの2つです。金額の争いは名目ごとに分けると論点がはっきりしますし、店舗と当事者本人は別の立場ですから、誰との間の話なのかが曖昧なままだと、後の整理がしにくくなります。

細かさよりも、確かさの区別

 記録を作ろうとすると、できるだけ詳しく書かなければと考えがちです。しかし読み手の側が知りたいのは細かさよりも、どこまでが確かでどこからが推測なのか、という区別です。次のように分けて書くだけで、記録の使いやすさは変わります。

区分書き方の目安
確かなこと自分が見た・聞いた・したことだけを、時刻や場所とともに書く
推測「たぶん」と分かる書き方にし、そう考えた理由を一言添える
受け取り方や評価そう受け取った理由になる具体的なやり取りに置き換えて書く
覚えていないこと空欄にせず「覚えていない」と書く
人から聞いた話聞いた日と、誰から聞いたのかを添える


「していない」と「覚えていない」は別のこと

 飲酒を伴う場面では、記憶が途切れていることがあります。そこを埋めようとして「していない」と書いてしまうと、後で別の記録が出てきたときに、記録全体の見え方が変わってしまいます。覚えていない部分は、覚えていないまま残しておくほうが、あとで扱いやすくなります。

 「覚えていない」と書くことは、相手方の主張を認めることとは違います。どこからどこまでが空白なのかがはっきりしているほうが、その前後で確かに覚えている部分の重みは増します。

受け取り方は、事実に置き換えて書く

 「同意があったと思った」「問題ないと言われたつもりだった」といった書き方は、こちらの評価であって、出来事そのものではありません。そのように受け取った理由になる具体的なやり取り、たとえばどの場面で誰がどう応じたのかを書いておくほうが、後の検討に使えます。

自分に不利に見える部分こそ、書いておく


こちら側で消しても、相手側には残っている

 都合の悪い部分を書かずにおいても、店側には入退室の記録や会計のデータ、担当者の報告が残っていることがあります。こちらの記録だけがきれいに整っている状態は、話が進んだときに支えになりません。

一点の食い違いは、ほかの説明にも及ぶ

 一つの事実について説明が変わると、それ以外の部分についても同じ見方をされやすくなります。不利に見える事実は、そのまま書いたうえで、どう位置づけるかを相談の場で一緒に考えるほうが、結果としてこちらの説明を守ることにつながります。

 なお、ご自身では不利だと感じている事実が、法律上はそれほど重く扱われないこともあります。逆に、気に留めていなかった一言のほうが大きな意味を持つこともあります。どちらに転ぶかを、書く段階で選り分ける必要はありません。

いつ書いたのかを、記録に残す


後から書いたものでも、意味を失うわけではない

 その場でメモを取れる状況はまずありません。ですから、記録の多くは後から書くことになります。問題になるのは、後から書いたことそのものではなく、いつの時点の記憶なのかが分からなくなることです。書いた日付を先頭に入れておくだけで、その点は整理できます。

追記は、上書きではなく追記の形で

 思い出したことがあれば足していってかまいませんが、前に書いた記述を書き換えてしまうと、どこがいつの記憶なのかが分からなくなります。日付を添えて末尾に足していく形にしておくと、後から読み返すときにも順序をたどれます。

作らないほうがよい記録

 次のような作り方は、後の交渉でこちらの負担になることがあります。

  • 日付を実際より前にさかのぼらせて書く。
  • 相手方の言い分に合わせて、書いた内容を整え直す。
  • 作った記録を、相手方や店に送って確認を求める。
  • SNSや掲示板に経緯を書き込む。
  • その場にいなかった人に、代わりに文章を作ってもらう。


 いずれも、記録の中身そのものより作られ方が問題になります。手を入れた形跡があると、正しく書かれている部分まで同じ目で見られてしまうためです。

 とくに、作った記録を相手方に送って内容の確認を求めることは避けてください。こちらが何をどこまで把握しているかを先に知らせることになりますし、送った文面自体が、後の交渉でこちらの言い分として扱われます。記録は、まず自分の手元に置いておくもの、とお考えください。

作ったあとの置き場所

 記録を作ること自体が、同居のご家族に知られるきっかけになることがあります。共有のクラウドや家族と共通のアルバムに保存しない、通知の表示を見直す、紙に出したものを長く手元に置かないといった点は、あらかじめ考えておいたほうがよいところです。持ち物の保管や持ち運びについては、別の記事で扱っています。

どこまで整えてから相談すればよいか

 整えきってから相談しようとすると、その間に回答期限が来てしまうことがあります。記録は、相談のために完成させておくものではなく、相談しながら埋めていけるものです。

 現に請求を受けていて期限が示されている場合、相手方から連絡が続いている場合、警察から連絡があった場合は、記録づくりよりも先にご相談ください。断片的なメモしかなくても、そこから確認すべき点を一緒に洗い出していくことはできます。

一度に全部を思い出そうとしなくてよい

 順を追って書こうとすると、最初の場面で手が止まってしまうことがあります。覚えている場面から先に書き、時間の順に並べ替えるのは後回しでかまいません。金額や書面に関する部分は思い出しやすいことが多いので、そこから始めていただくと進みやすいはずです。

よくあるご質問


日付や時刻がはっきりしません。それでも書く意味はありますか

 あります。「◯月の後半」「終電より前」といった幅のある書き方でかまいません。決済の履歴や交通系ICカードの利用記録、写真の撮影日時など、後から手がかりが見つかって時点が絞れることもあります。

手書きのメモでもよいのでしょうか

 形式は問いません。読み返せる形であれば、手書きでも入力でも差し支えありません。整った文章にする必要もなく、箇条書きで足りることがほとんどです。

すでに相手方へ送ってしまった文面があります。どう扱えばよいですか

 送った内容も、自分側の記録の一部として残しておいてください。送信日時が分かる形で保存し、削除しないようにしていただくと、後の説明がしやすくなります。

まとめ


  1. 風俗トラブルでは、時刻・料金・書面といった記録の多くが相手側に残り、こちら側には残りにくい。
  2. 自分側の記録は、証拠を作るためではなく、後から出てくる相手の主張と突き合わせるために作る。
  3. 落ちやすいのは、時刻・場所・お金の内訳・誰が言ったのか・言われた言葉そのものの5点。
  4. 細かさよりも、確かなこと・推測・受け取り方・覚えていないことの区別を残すほうが役に立つ。
  5. 「していない」と「覚えていない」は分けて書き、埋めようとしない。
  6. 不利に見える事実も書いたうえで、位置づけを相談の場で検討する。
  7. 書いた日付を残し、修正ではなく追記の形で足していく。
  8. 整えきる前でも相談はできる。期限がある場合は記録づくりより先にご連絡ください。


ご相談について

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店やメンズエステの利用をめぐる金銭の請求について、ご相談をお受けしています。手元にある材料が断片的でも、いま何を確かめるべきかを整理するところからお手伝いできます。ご連絡の方法についてご希望があれば、あらかじめお申し付けください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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