【風俗トラブル】被害届が受理されたと言われた|その後の流れと呼び出しまでの期間

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月2日時点の刑法、刑事訴訟法、刑事訴訟規則、犯罪捜査規範などの規定をもとに、風俗店の利用客の立場から書いています。令和5年の刑法改正により、旧強制性交等罪・旧強制わいせつ罪はそれぞれ不同意性交等罪・不同意わいせつ罪に改められています。個別の事情によって見通しは変わりますので、具体的な対応はご相談のうえで判断してください。


「店のスタッフから『被害届が受理された。もう警察が動いている』と電話で言われた。いつ警察から連絡が来るのか分からず、仕事が手につかない」。風俗店やメンズエステの利用後、こうした状態でご相談に来られる方は少なくありません。受理されたと聞いた時点から、呼び出しの電話や自宅への訪問がいつ来てもおかしくないと感じ、落ち着かない日々を過ごしている方が多いようです。

 インターネット上では「被害届が受理されると捜査が始まる」「連絡が来るまでの期間は事案による」といった説明がよく見られます。いずれも誤りではありませんが、受理から呼び出しまでの間に警察が何を進めていて、その長さが何によって左右されるのかまでは、あまり具体的に書かれていません。その中身が分かると、待つ時間の受け止め方も、その間にしておくべきことも変わってきます。

 この記事では、「被害届が受理された」と言われた後の時間に場面を絞り、受理という言葉の意味、受理から呼び出しまでの流れ、期間を左右する事情、その間にできることを順に整理します。被害届が出る前の対応は【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間で、聞かされた話が本当かどうかの確かめ方は【風俗トラブル】キャストが警察に相談したと聞かされた|本当かどうか確かめる方法はあるかで扱っていますので、必要に応じてあわせてご覧ください。

「被害届が受理された」という言葉が意味すること

 最初に、「受理された」という言葉が何を意味し、何を意味しないのかを整理しておきます。ここを取り違えると、必要以上に悲観したり、反対に楽観したりすることにつながります。

受理は「届出を受け付けた」という手続

 犯罪による被害の届出があったとき、警察はこれを受理しなければならないとされています(犯罪捜査規範61条1項)。令和6年3月22日付けの警察庁の通達でも、内容が明白な虚偽であるか著しく合理性を欠く場合を除き、即時に受理することが原則とされています。つまり受理は、警察が被害の申告を正式に受け付けたという手続上の出来事です。受理されたことは、警察が犯罪の成立を認めたことや、逮捕や処罰が決まったことを意味するものではありません。受理の後に、事実関係を確かめるための捜査が始まります。

被害届と告訴では、その後の手続が異なる

 被害届は、被害の事実を警察に申告するものです。これに対して告訴は、犯人の処罰を求める意思を示すもので、告訴を受けた司法警察員は、速やかに書類と証拠物を検察官に送付しなければならないとされています(刑事訴訟法242条)。被害届には、これに対応する規定はありません。もっとも、不同意性交等罪(刑法177条)や不同意わいせつ罪(刑法176条)は告訴がなくても起訴できる罪であり、被害届だけでも捜査は進みます。相談・被害届・告訴・立件の違いは、事件は『いつ』始まるのか|相談・被害届・告訴・立件の違いで説明しています。

誰から聞いたのかで、情報の確かさが変わる

 「受理された」と伝えてきたのが、店のスタッフなのか、キャスト本人なのか、相手方の弁護士なのかによって、その情報の確かさは異なります。警察が被害届を受理したことを、届出をされた側に知らせる仕組みはありません。一方で、届け出た側には、受理した警察から担当者の連絡先などを記した書面が渡される運用が先の通達で定められており、身体に対する犯罪などについては、捜査の状況を被害者に伝える「被害者連絡」の仕組みも設けられています。被害者側が受理の事実を知っていること自体は不自然ではありませんが、店が金銭の要求と結び付けて告げている場合には、交渉の材料として使われている可能性もあります。告げ方の問題は、「被害届を出す」と言われた|正当な権利の告知と脅迫の境界で扱っています。

受理から呼び出しまでに警察が進めること

 受理の後、警察がすぐに届出をされた人へ連絡するとは限りません。多くの場合、その前にいくつかの捜査が行われます。主な流れを、客の側から見えるかどうかとあわせて整理すると、次のようになります。

段階主に行われること客の側から見えるか
被害者からの聴取キャスト本人から詳しく事情を聴き、供述調書を作成する。現場での実況見分が行われることもある通常は見えない
物や記録の確保衣類などの鑑定、店やホテルの記録、防犯カメラの映像などを確認する店を通じて一部が伝わることがある
人物の特定予約時の氏名や電話番号などから、利用した客を特定する通常は見えない
方針の決定任意で呼び出すか、逮捕状を請求するかを判断する見えない
最初の接触電話や書面での呼び出し、自宅への訪問、または逮捕ここで初めて分かる


被害者側の聴取が先に進められる

 受理の後、まず行われるのは、被害を届け出た人からの詳しい聴取です。警察が呼出しの記録に用いる呼出簿の様式(犯罪捜査規範102条・別記様式第8号)にも、呼出しの相手として被害者が、呼出しの理由として取調べのほか実況見分の立会いが挙げられています。被害者の話を確かめる作業が先に進むため、この段階では、客の側に動きが伝わらないのが通常です。

裏付けの捜査には外部の協力が要る

 被害者の話を裏付けるため、警察は物の鑑定を専門の機関に依頼したり(刑事訴訟法223条1項)、店や通信事業者などに必要な事項を照会したりします(同法197条2項)。裁判官の令状を得て、物を差し押さえたり場所を捜索したりすることもあります(同法218条1項)。こうした作業には外部からの回答を待つ時間が含まれるため、受理から間が空く理由になります。連絡が来ない期間に起きていることは、捜査が長引く理由と待ち方|連絡が来ない期間に何が起きているかで詳しく説明しています。

任意で呼ぶか、逮捕するか

 客が特定されると、警察は任意で出頭を求めるか(刑事訴訟法198条1項)、逮捕状を請求するか(同法199条1項)を判断します。逮捕状は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があっても、逃亡や証拠隠滅のおそれがないなど明らかに逮捕の必要がないと認められるときは、請求が却下されるとされています(刑事訴訟規則143条の3)。身元がはっきりしていて呼び出しに応じる見込みがある場合には、任意の呼び出しから始まることも少なくありませんが、事案の内容によっては逮捕から始まることもあります。在宅で進む場合と身柄を拘束される場合の違いは、在宅事件と身柄事件の違い|風俗トラブルで逮捕を避けるための弁護活動で扱っています。

呼び出しまでの期間を左右する事情

 受理から呼び出しまでの期間に、一律の目安はありません。数日のうちに連絡が来ることもあれば、数か月たってから連絡が来ることもあります。期間の長さは、主に次のような事情によって変わります。

事情比較的早く進みやすい場合時間がかかりやすい場合
客の特定予約時の本名・電話番号・会員情報が店に残っている偽名での利用などで、手がかりが少ない
裏付けの資料現場の記録や物がすでに確保されている鑑定の結果や照会への回答を待つ必要がある
被害者側の事情届出と同じ時期に詳しい聴取が済んでいる聴取の日程調整に時間を要する、示談の話合いが続いている
争点の内容確認すべき事実が限られている同意の有無などが争点になり、確認事項が多い


長いことは、軽いことも重いことも意味しない

 期間が長いと「もう終わったのではないか」と考えたくなり、短いと「重大な事件として扱われている」と感じやすいものです。しかし期間の長さは、主にどの工程がどれだけ残っているかによって決まり、それ自体が事件の軽重を示すものではありません。担当する警察署がほかの事件を抱えているかどうかといった、事件の中身とは関係のない事情で進み方が変わることもあります。

連絡が来ないまま時間が過ぎた場合

 受理されたと言われてから長く連絡がない場合でも、それだけで捜査が終わったとは限りません。不同意性交等罪の公訴時効は15年、不同意わいせつ罪は12年とされており(刑事訴訟法250条3項)、時間がたってから連絡が来ることもあり得ます。一方で、被害者側の意向の変化などにより、客に連絡がないまま終わる場合もあります。在宅で捜査が進むときの時間の流れ方は、在宅事件になった場合|見えない時間の進み方で説明しています。

最初の接触はどのような形で来るのか

 受理の後、客が捜査の動きを初めて知るのは、警察からの接触があったときです。その形にはいくつかの種類があります。

電話や書面による呼び出し

 多いのは、警察署の担当者からの電話です。先に触れた呼出簿の様式でも、通知の方法として、呼出状のほか電話や直接の口頭による通知が挙げられています。逮捕されていない段階の呼び出しは任意の出頭の求めであり、出頭を拒んだり、出頭後いつでも退去したりできるとされています(刑事訴訟法198条1項ただし書)。ただし、正当な理由なく応じない状態が続くと、逃亡のおそれの判断に影響することがあります。電話を受けたときの考え方は「警察から電話が来た」|折り返す前に確認したい3つのことで、日程の調整については警察からの呼出しの日程は調整できるのか|仕事との両立で扱っています。

参考人として話を聞きたいと言われる場合

 最初の連絡で、「参考人として話を聞きたい」と言われることもあります。参考人として呼ばれた場合でも、話の内容によっては被疑者として扱われるようになることがあります。この点は、【風俗トラブル】参考人として呼ばれた|客が被疑者に切り替わる分岐点で説明しています。

自宅への訪問や捜索から始まる場合

 事案によっては、警察官が自宅を訪れたり、令状に基づく捜索から始まったりすることもあります。同居している家族がいる場合には、その場で事情を知られることにもなり得ます。家族への影響については、捜索で家族に知られる場面|同居家族がいる場合の現実をご覧ください。

呼び出しまでの間にできること

 受理から呼び出しまでの時間は、何もできない時間ではありません。この間に準備を進めておくと、呼び出しを受けたときの対応や、その後の見通しが変わることがあります。

経過を書き出し、記録を残しておく

 利用した日時や店、行為の経過、店やキャストから言われた内容、受理されたと聞かされた日時と相手を、時系列で書き出しておきます。取調べでは当日の行動を細かく尋ねられるため、記憶が新しいうちの記録が役に立ちます。店とのやり取りや予約の記録も、消さずに残しておいてください。取調べで聞かれやすい事項は風俗事件の取調べで聞かれること|供述が争点に直結する項目で、データの保存方法はLINE・メール・録音データの保存と渡し方|消してはいけない理由で紹介しています。

弁護士を窓口にしておく

 被疑者は、いつでも弁護人を選任することができます(刑事訴訟法30条1項)。呼び出しの前に弁護士に依頼しておけば、事件を担当する警察署が分かっている場合に、依頼を受けたことを伝えて、今後の連絡を弁護士経由にしてもらうよう求めるといった対応がとれることがあります。取調べを受ける前に、何をどのように説明するかを整理しておくこともできます。依頼の時期による違いは、弁護人を頼むタイミング|捜査段階で差がつく理由で説明しています。

受理の後でも示談を進めることはできる

 被害届が受理された後でも、被害者との示談を進めることはできます。先に挙げた罪は親告罪ではないため、示談が成立しても捜査が法的に止まるわけではありませんが、示談の成立や、被害者が処罰を求めない意思(宥恕)は、検察官が起訴するかどうかを判断する際に考慮される事情になります(刑事訴訟法248条)。受理された後の示談では、弁護士から捜査機関を通じて、被害者に示談の意向を尋ねてもらう方法がとられることがあります。なお、指摘された事実に心当たりがない場合や、同意があったと考えている場合は、示談の前に、事実関係をどう説明するかの整理が必要になります。時期による違いは示談を始めるタイミング|被害届前・受理後・起訴前で何が違うかで、被害届が出された後に示談に至った当事務所の例は【解決事例】メンズエステで不同意性交等罪の被害届|示談により不送致で解決した事例でご紹介しています。

自分から出頭するという選択

 呼び出しを待たずに、自分から警察に出向くことを考える方もいます。罪を犯した人が捜査機関に発覚する前に自首したときは、刑を減軽することができるとされていますが(刑法42条1項)、被害届によって誰の行為かがすでに警察に分かっている場合には、自首には当たらないと考えられます。それでも、自分から出頭して事情を説明することが、逃亡のおそれがないことを示す事情として意味を持つ場合はあります。何をどう話すかは見通しに直結するため、自分から出頭すべきか|自首の成否と実務上の意味もご覧のうえ、一人で決めずにご相談ください。

この期間に控えたいこと

 受理されたと聞くと、少しでも早く事態を動かそうとして、後から取り消しにくい行動をとってしまうことがあります。次のような行動は、相談のうえで判断するまで控えるのが無難です。

  • キャスト本人の連絡先を探して直接連絡し、取下げを頼んだり謝罪を申し入れたりする。
  • 店から求められた金額を、書面を作らないまま「取下げの条件」として支払う。
  • やり取りの記録や写真を削除する、端末を初期化する。
  • 警察署に自分から電話をかけ、整理しないまま事情を話してしまう。
  • 急な転居や長期の不在など、連絡がつきにくくなる行動をとる。


 キャスト本人に面会を強く求めたり、強い言葉で迫ったりすると、証人等威迫罪(刑法105条の2)が問題になることがあります。本人が連絡してはいけない理由は、性犯罪の示談交渉を弁護人に任せる意味|本人が連絡してはいけない理由で説明しています。また、逮捕の必要性は逃亡や証拠隠滅のおそれの観点から判断されるため、記録の削除や急な転居は、意図とは異なる受け止め方をされるおそれがあります。

よくあるご質問


受理されたと聞いてから1か月たちますが、警察から連絡がありません。もう心配しなくてよいのでしょうか

 連絡がないことだけで、捜査が終わったとはいえません。被害者の聴取や裏付けの捜査が続いていることもあれば、被害者側の事情で進んでいないこともあります。安心も悲観もせず、記録の整理と、連絡が来たときの対応を決めておくことをおすすめします。

被害届を取り下げてもらえば、呼び出しは来なくなりますか

 被害届の取下げには、法律上の手続の定めがありません。取下げは、被害者が処罰を求めない意思を示すものとして扱われますが、不同意性交等罪などは告訴がなくても捜査や起訴ができるため、取下げによって呼び出しがなくなるとは限りません。取下げと示談の関係は、本番で被害届を出されたら?取り下げの可否と示談交渉の進め方で扱っています。

呼び出しの電話が来たら、その日のうちに行かなければなりませんか

 任意の呼び出しであれば、日程を調整してもらうことは可能です。ただし、理由を告げずに先延ばしを続けると、出頭の意思を疑われることがあります。都合のつく日を具体的に伝え、できれば事前に弁護士に相談してから出頭するのが望ましいでしょう。呼び出しへの対応は、警察から呼び出しの電話が来た|任意同行・出頭要請への対応で説明しています。

まとめ


  1. 被害届の受理は、届出を正式に受け付けたという手続であり(犯罪捜査規範61条1項)、犯罪の成立や逮捕が決まったことを意味しない。
  2. 被害届には告訴のような検察官への送付の規定はないが(刑事訴訟法242条参照)、不同意性交等罪(刑法177条)や不同意わいせつ罪(刑法176条)は告訴がなくても捜査や起訴ができる。
  3. 受理の後は、被害者の聴取、鑑定や照会(刑事訴訟法223条1項・197条2項)、客の特定を経て、任意の呼び出しか逮捕かが判断される。
  4. 逮捕状は、逃亡や証拠隠滅のおそれがないなど明らかに逮捕の必要がないときは請求が却下される(刑事訴訟規則143条の3)。
  5. 呼び出しまでの期間に一律の目安はなく、長短は残っている工程によって決まり、事件の軽重を示すものではない。
  6. 受理の後でも示談は進められ、示談の成立や宥恕は起訴するかどうかの判断で考慮される(刑事訴訟法248条)。
  7. キャスト本人への直接の連絡は控える。面会を強く求めたり強い言葉で迫ったりすると、証人等威迫罪(刑法105条の2)が問題になり得る。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。「被害届が受理された」と聞かされ、警察からの連絡を待っている段階でも、ご相談いただけます。

すでに警察から連絡があった方や、店から金額を示されている方も、それまでの経過をうかがったうえで、刑事手続と交渉の両面から対応を検討いたします。お一人で判断される前に、まずは状況をお聞かせください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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